化学プラントの土建エンジニア(civil engineer)について解説します。
建設業界で土建というと主力中の主力ですが、化学プラントでは割と目立たない存在です。
その割に重要度が高いのが土建です。
一般には「土木」と「建築」に分けますが、「土建」というとかなり雑に見えてしまうでしょう。
化学プラントでも規模の小さな会社だと土建という部門すらなく、機械とセットになっている場合もあります。
土建だから機械エンジニアは知らなくていい。土建任せでいい
こんな感じで興味を持っていないと、建設プロジェクトでとても痛い目を見ます。
土建エンジニアと上手く接することは、建設プロジェクトの成否に大きく関わります。
化学プラントで目立たない土建エンジニアの背景について解説しましょう。
土建エンジニアと上手く付き合いましょう!
さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
化学プラントの建設プロジェクトと土建エンジニア(civil engineer)
化学プラントの設備プロジェクトは以下の流れで行います。
- 1土建
- 2機械
- 3電気
- 4計装
職種の分け方は会社の規模や業界によって変わりますが、かなり狭めた範囲でもこの4つに分かれるでしょう。
ここでのポイントは、土建が1番目に位置しているということ。
プロジェクトにおいて優先度や重要度が高いことを意味します。
外部委託が多い土建エンジニア(civil engineer)
化学プラントのオーナーエンジニアとして、土建部を保有している会社はそこまで多くは無いでしょう。
アウトソーシングしていることが多いはずです。
というのも化学プラントとして応募しようという気もなければ、募集しても人が来ないから。
エンジニアの立場からすると、化学プラントに特化するよりも一般の建築物の方が遥かにやりやすいです。
土建の裁量範囲内で決めれる要素が多いですから。
化学プラントの場合は機械装置・配管や化学薬品などの制約を強く受けてしまい、デザイン的な部分はほぼない強度計算に特化した土建設計になります。
そこに「やりがい」と感じるかどうか、という世界でしょう。
アウトソーシングをするということは、自社のエンジニアリングにとって障害になりえる部分も存在します。
土建エンジニア(civil engineer)を優先しなければいけない理由
土建エンジニアリングは建設プロジェクトを良くも悪くも左右します。
プロジェクトを失敗に陥らないようにするためにも、土建エンジニアリングは優先させましょう。
優先させなければいけない理由を言語化します。
工事期間が長い
土建工事は工事期間が非常に長いです。
ランクの低いプロジェクトなら土建が関わることはありませんが、一定規模以上のプロジェクトになると土建が介在します。
機械設備を新たに増やす必要があるからですね。
例えば3か月くらいの工事期間を取った場合、1か月半~2か月くらいは土建が占めます。
全体の50%程度は土建工事って感じですね。
一般の建築なら80~90%はあるかもしれませんが、化学プラントは違います。
化学プラントでは配管工事が相当のボリュームを占めます。
全体工期が予め決まっていて、土建工事が大半のボリュームを占める割に努力代がなく、配管・配線工事が泣く。
こんなことが横行するのが化学プラントの建設。
生産開始日が決まっているから工期を遅らせることはできず、かといって土建工事期間を決めるのは工事直前。
土建工事はどうやっても調整できないから、後は機械・電気・計装がなんとかしてください。
こんな感じなのが土建エンジニアリングの一般的な姿。
土建工事が最初にプランを練らないといけないのに、後手後手に回りがちです。
とにかく土建エンジニアに早く動いてもらうのが大事です。
ちゃんと抑えましょう。
社外の設計調整期間が必要
土建のエンジニアリングでは、社外の設計調整が意外と時間を要します。
構造計算や建築確認申請などでかなりの時間が掛かります。
設計を自社で完結できず外部に委託するとなると、それだけでも設計期間を増やす要因になります。
資材など長納期化している現在では、設計期間の長期化も非常にリスクの高い要因ですね。
リソースが弱い
外部委託しがちな土建エンジニアは自ずとリソースが弱くなります。
プロジェクトに割り当てられる人数が徹底して最低限。
残業も多くなりがちで犠牲にするために質を落としていかざるを得ません。
そんな中で設計変更を数多く依頼していると対応できなくなります。
一度依頼したら大きな変更はしない。
日本のあちこちで行われるプロジェクトで当たり前のように行っている設計変更を徹底して削減しなければ、土建は対応できないと考えないといけないでしょう。
そのためにも機械設備の荷重データは大事です。
もっとさかのぼって機器の仕様、その手前のプロセスデータが重要となります。
土建エンジニア(civil engineer)が外出しされないためには
土建エンジニアリングはアウトソーシングされがちです。
プロジェクトとしては重要度が高いわりに、化学プラントにとっては常時必要というわけでは無いからですね。
それでもオーナーエンジニアとして土建を抱えておこうとするには、土建エンジニア自身が付加価値をもっていなければいけません。
オーナーエンジに固執しようとする場合に、土建エンジニアが保有しておくべきスキル・価値をまとめてみました。
化学プラントを知る
土建のオーナーエンジニアは化学プラントを知っておくべきです。
化学プラントの建物そのものは知っていても、工場でどんなことをしているのか知らない土建エンジニアはとても多いです。
建物の強度を担保することだけが自分の仕事、ととらえる人もいるくらいです。
製造部の運転・安全管理体制・生産計画・投資計画・・・
社内のことをいっぱい知っておいた方が、土建設計にとって有利に働くことは多いです。
受け身にならない
土建エンジニアは受け身の仕事をしがちです。
- 社内のことを知らない → 受け身
- 受け身 → 社内のことを知らない
卵が先か鶏が先か。
受け身の姿勢を継続していると、外出しされるのはどこの部門でも同じです。
設備診断をする
土建オーナーエンジニアは設備診断をすべきです。
機械・電気・計装における保全と全く同じ発想です。
地震のときだけ設備診断をするのではなく、長期間使っている設備について寿命診断をすることも大事なこと。
プラントのライフサイクルに直結する要素です。
- 壁や柱がひび割れしていないか
- 鉄板の床が朽ち果てていないか
- 屋根から雨漏りしそうになっていないか
劣化状況を見ながら必要なタイミングで必要な資金を投入して補修できるように、会社に提言することは重要です。
劣化しそうになって慌てて会社に申請するというパターンが多いので・・・。
家やマンションの補修計画を立てないのと同じことなのですが。
最後に
化学プラントの土建設備設計エンジニアの立ち位置について解説しました。
主にランクの高い建設プロジェクトで登場し、設計の序盤から登場して工事の大半を占める重要な要素です。
化学プラントの土建はリソースが弱い傾向なので、優先度を上げて仕事をしましょう。
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