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腐食の典型6パターン|化学プラントでの重要課題

腐食6パターン 材料
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化学プラントで安全安定操業の大敵となるのが、腐食(corrosion)。

腐食性の高い薬液を扱う化学プラントでは、あらゆる設備が腐食の問題に悩まされます。

基本的な知識を知って適切な材質を選ぶことが、化学プラントの機械系エンジニアとして超大事。

腐食の基礎としての腐食パターン6つ紹介します。

トラブルがあった時に6パターンのどれかを特定できるだけでも、恒久対策が取りやすくなるでしょう。

溶ける雪だるまのイラスト

全面腐食(corrosion)

全面腐食とは、言葉どおり物質が全体的・全面的に腐食する現象です。

全面腐食以外の腐食の形態は全て不均一な腐食として起こります。

現場でトラブルが起こるのは不均一な腐食がほとんどです。

だからこそ、全面腐食という概念を忘れてしまう人もいるくらいです。

腐食の基本としての全面腐食は最初に理解しておきたいですね。

全面腐食は下記の環境で起こりやすいです。

  • 水中の炭素鋼
  • 強酸中のステンレス鋼

水中の炭素鋼

水中の炭素鋼の腐食は、腐食の基本です。

が腐食するときに重要な要素は何でしょうか?

溶存酸素温度ですね

溶存酸素が多い環境とはどういう環境でしょうか?

  • 温度が低い
  • 空気の補給がされる(大気開放)

溶存酸素が多い例としてよくあるのが、冷却水貯留タンクがあります。

冷凍機で7~12℃程度の範囲の冷水を作り、工場内を循環させるユーティリティとして使います。

冷水は温度が低い水なので溶存酸素が多く、鉄を腐食させやすい環境にあります。

大気開放を防ぐためにタンク内に窒素を入れてたり、腐食防止剤を入れたりと対策をしなければ、工場内の多くの設備に影響がでます。

腐食速度温度に依存します。当たり前すぎて忘れがち。

水という視点では温水が該当します。

温水も冷水と同じく工場内のユーティリティとして使います。

水は簡単に考えがちですが腐食という点では結構大きな問題になります。

鉄で補修を続ける場所と、ステンレスで長期的に使用する場所とは、使い分けをしたいですね。

強酸中のステンレス

強酸中には水素イオンH+が多いので、ステンレス配管といえども腐食は起こりえます。

ステンレス鋼の場合は時間を掛けて腐食するので、全面腐食と言えます。

とはいえ、ステンレス鋼で全面腐食を意識することは少ないでしょう。

全面腐食(corrosion)はメンテナンスの思想

全面腐食はメンテナンスの面で意識的に狙うことが多いです。

塩濃度が高く温度が高い液体なら、ステンレス鋼よりも炭素鋼の方が良いという場合もあります。

ステンレス鋼では応力腐食割れが起きる可能性があり、いつ壊れるかも分かりません。

より高級な耐食金属材を使うにはコストがかかりすぎます。

こんな場合は全面腐食を狙って炭素鋼にしておき、定期交換をするという選択肢があります。

メンテナンスの思想によりますので、会社によって意見が分かれるでしょう。

孔食

孔食は虫歯のようなものです。

装置や配管内に異物がある状態を考えましょう。

この異物が配管壁面に付きます。

異物と配管壁面で覆われた部分は、酸素が低い状態です。

そのほかの圧倒的多数の部分は酸素が多いです。

酸素の多い液体から酸素の少ない液体に向かって、酸素が供給されようとします。

ここで、金属がイオン化して電子が発生します

酸素はこの電子を食べてOHイオンになり酸素濃度が下がるため、周囲から酸素が供給されていきます。

こうして、異物のある部分から徐々に腐食が進行していくことが孔食です。

  • 異物
  • 酸素濃度差
  • 金属のイオン化

異物があると孔食が起きやすいので、プロセス液中の異物は極力少なくしたいですね。

ステンレス鋼と塩

孔食ステンレス鋼と塩の関係でよく登場します。

塩自体は化学反応で頻繁に出てきますし、ステンレス鋼も化学設備でよく登場します。

ステンレス鋼と塩の組み合わせは結構頻度が高いですね。

ステンレス鋼は不働態皮膜を形成して錆びないことが特徴ですが、Clがあると不働態皮膜が破壊されます。

不導体被膜が破壊された部分が虫歯の進行と同じように進行が進んでいき、母材が溶ける反応が起こります。

不導体被膜が破壊されるための反応でできた物質が異物として、孔食を進行させます。

虫歯の除去や表面のコーティングをしないと、虫歯がどんどん進行していくのと同じです。

孔食電位

孔食電位とは腐食電池でも出てくる「電圧」と考えれば十分です。

腐食電池反応そのもの。

電池では電圧という概念と直結します。

電圧は電位差とほぼ同じ扱いで使います。電位差が高いと電圧も高い。

電池反応で発生する電位差はプロセス液と電極の組み合わせで決まります。

マンガン電池やニッケル電池と種類が分かれているのも、プロセス液と電極の違いです。

孔食に特化して孔食電位というデータでまとめたものがあります。

80℃の0.5M塩化ナトリウム水に対する孔食電位のデータを見ましょう。

SUS3040V
SUS316L0.1V
SUS329J10.3V
SUS329J2L0.6V

SUS304の方が腐食可能性は高いので、孔食電位が高い方が腐食しにくいと言えます。

SUS304とSUS316Lについて温度の依存性を見てみましょう。

10℃ 25℃ 40℃ 60℃ 80℃
SUS3040.5V0.4V0.2V0.1V0V
SUS316L0.9V0.6V0.3V0.2V0.1V

温度が高い方が孔食電位が低いので、温度が高い方が腐食しにくいと言えます。

隙間腐食(corrosion)

隙間腐食孔食と同じ酸素濃淡電池が原理です。

孔食異物や隙間の無い平坦な個所で起こる場合を考えているのに対して、隙間腐食隙間がある場所で起こる場合を考えています。

化学装置の中で隙間が発生しやすい場所として以下のようなものがあります。

フランジや溶接部は配管を製作するときに配管内面に必ず発生します。

最小化することは可能ですが、ゼロにすることはできません。

配管サポートで隙間腐食というと配管外面の話。

配管外面でも隙間腐食は起き得ます。

雨水と鉄やステンレスの配管との間で隙間腐食が起きます。

雨水だけかと思っていたらも腐食の原因になります。

油断できませんね・・・

対策として防食テープなどを巻きますが、寿命の延命はできてもゼロにはできません。

全面腐食と同じで長い間付き合っていかないといけない腐食が隙間腐食です。

応力腐食割れ

応力腐食割れはステンレス鋼に対して頻繁に起こる現象です。

孔食(それと隙間腐食)と同じような条件なので混同しがちです。

  • ハロゲンイオン
  • 温度
  • 応力

この辺りがキーワードになります。

ハロゲンイオンとはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)のイオンのこと。

化学反応ではフッ素、塩素、臭素辺りを使うことが多く、要注意。

プロセス反応に使う物質 = 腐食反応に使う物質

という目線で見れば良いでしょう。

孔食でも塩素イオンの話が少し出ましたね。

温度70℃くらいからが危険領域。

バッチ系では常時70℃以上の領域で使うことはあまり多くはないですが、連続系では結構ありえます。

応力腐食割れは応力が掛かっている場所に典型的に起こります。

腐食が化学反応だから化学にだけ着目しがちですが、機械的な要素もあるということ。

メカニズムは以下の2パターンが考えられますが、どちらが先かを考えることはあまり意味がありません。

  • 応力によって腐食が誘発される(機械→化学)
  • 腐食によって脆性破壊が誘発される(化学→機械)

ところでこの応力ですが、化学装置ではほぼ発生していると思った方が良いです。

ボルトで締め付けている部分には何らかの応力が掛かります。

応力腐食割れは対策が取りにくく、材料でカバーするくらいでしょう。

粒界腐食(corrosion)

粒界腐食とは、材料のミクロの粒界部から起こる腐食です。

材料組織のミクロ部の話なので、肉眼では見えません。

腐食が起こった後で、材料を切り出して専門機関で分析しないと分からないでしょう。

粒界腐食の典型例は、オーステナイト系ステンレス鋼の鋭敏化です。

鋭敏化と応力腐食割れはかなり関連性が高いです。私はほぼ同一とみなしています。

応力腐食割れのキーワードは以下の2つ。

  • クロムCr
  • 温度

オーステナイト系ステンレスには18%以上のCrを含みます。

このCr炭素Cが高温で反応してCr23C6という炭化物ができます。これを鋭敏化と呼びます。

鋭敏化はオーステナイト系ステンレス鋼の粒界部で起こります。

鋭敏化が起こった粒界部近辺ではCr分が少なくなり、耐食性が低くなります。

オーステナイト系ステンレスで鋭敏化が起きやすい環境は、溶接の熱影響部

溶接で700~800℃を越える温度に到達するからですね。

対策として有名なのがL材です。SUS316Lが有名です。

LとはLow Carbonの略で炭素量を下げています。

炭素量が少ないとCr23C6の生成量は当然少なくなるので、対策と言えば対策

炭素量が少ない分だけ、引張強度が若干落ちますが、腐食性が下がるよりも良いという判断です。

異種金属接触腐食(corrosion)

異種金属接触腐食は理科の世界でいう電池そのものです。

ボルタ電池・ダニエル電池などの電池の原理を勉強した記憶もあると思います。

CuとZnの板を電線で繋ぎ、板の一部だけをH2SO4の液に浸すと電流が流れます。

このときZnがZn2+イオンとなります。

電池反応なので、イオン化傾向に従います。

異種金属接触腐食はガルバニック腐食とも言います。

  • 異なる材料
  • イオン化傾向

この2つがキーワードです。

フランジのボルト

異種金属接触の典型例はフランジのボルトです。

フランジ : SUS304
ボルト  : 亜鉛(Zn)メッキ

こういう組み合わせは結構多いです。

フランジよりもボルトの方が材質を落とすことで、ボルトの方を優先的に腐食させようとしています。

異種金属接触腐食はプロセス液中である配管内面で起こると考えがちですが、配管外面でも起きます。

雨や水などです。油断大敵。

常時接触しているわけではありませんが、雨や水に触れている間は腐食が起きます。

なお、ボルトの亜鉛メッキは、イオン化傾向の面で見てボルトの寿命を延ばそうとした発想です。

Fe < Zn

亜鉛Znの方が鉄Feよりもイオン化傾向が高いので腐食しやすいです。

Feよりもメッキ側を先に腐食させて、Feを長持ちさせるという考えです。

面積

異種金属接触腐食で意外と見落としがちな制御要素が面積です。

材料やプロセス液などに着目しがちですが、面積という機械的な面も要因になります。

接触面積が小さいほど異種金属接触腐食による影響も少なくなります。

防食テープやワッシャーなどはこの効果を狙っています。

地味ですがシンプルな発想だけに、対策としては効果的ですよ。

参考

腐食に関する知識は化学プラントの機械系ではとても大事です。

一般的な本でも知識吸収も積極的に行いましょう。

関連記事

腐食についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

化学プラントの機電系エンジニアが知っておくべき腐食の種類について解説しました。

全面腐食・孔食・隙間腐食・応力腐食割れ・粒界腐食・異種金属接触腐食

いろいろな腐食パターンがありますが、この5つは身近に発生しやすいものです。

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