ドラム缶(drum)について解説します。
街中でも見かけないことはありませんが、化学プラントなどの工場では非常によく見かけます。
事務系などの間接部門や機電系エンジニアはその背景を意外と知らなくて、風景と認識してしまっているかもしれませんね。
ドラム缶がどういう用途で使われているかを解説します。
原料
化学プラントで製造に使うための原料。
原料が液体の場合で、ドラム缶を使う場合があります。
使用量が多い場合には船・ローリーなどの方法を取りますが、使用量が少ない場合にはドラム缶で運搬します。
これをダイアフラムポンプなどを使って、プラント内のフィードタンクに移送、反応槽に滴下。
というパターンは多いです。
タンク容量が小さい場合には、ドラム缶として一定量をまとめて購入して徐々に使っていく関係上で、大量のドラム缶を貯めておく場所が必要となります。
原料のドラム缶は中身が危険だったりするなので、倉庫に保管することでしょう。屋外に保管していると漏洩したときが超大変です。
問題は使い終わったドラム缶。
倉庫に保管するだけの余裕がなくて、処分にも時間が掛かる。
そうしたドラム缶は、工場内の空き地に整然と並べられることでしょう。
工場内にやたらドラム缶が多いな?って思った場合には、このパターンを疑いましょう。
製品
化学プラントで製造活動をした最終結果の製品。
これがドラム缶に収まるケースも当然あります。
液体・粉体どちらもありえます。
充填された製品入りのドラム缶は、倉庫に格納するでしょう。
もちろん充填する前の空ドラムが一定量必要になります。原料の逆バージョンです。
この空ドラムも屋外に置いておくとあまり良いことではないので、倉庫に保管します。
倉庫内には製品ドラム・空ドラム・原料ドラムを優先していれるため、倉庫キャパによっては屋外に置かざるを得ない状況になりそうですね。
失敗品
屋外に並んでいるドラム缶のうち、最も疑わしいのは失敗品。
製造トラブルや設備トラブルなどで、プロセス液を処分するためにドラム缶に充填します。
特定の製造課でドラム缶がいっぱい並んでいる姿を見たら、他の製造課の人は
あぁ、何かトラブルがあったのだろうなぁ……
と察します。
失敗品は危険な内容物が入っている可能性が極めて高いです。
できるだけ倉庫内に置きたいでしょうが、そうも言ってられない場合もあるかも知れませんね。
倉庫内に入れておきたい空ドラムと入れ替えたり、屋外に置くにしても流出防止策を取る必要があったりします。
工場内をパトロールして屋外に保管されているドラム缶の大小から、工場内の状況を推測しようとする間接部門の人は昔はそれなりにいましたが、今では減っているでしょう。
風景と化していて、危険であるかどうかもイメージしていない気がします。
荷姿は変わる
ドラム缶での運搬を前提としたプラントであっても、ドラム缶以外の荷姿に変わることはあり得ます。
運搬量が多くなる増産の場合にありがちです。
この場合は、原料や製品と接するプラント部分の増改築の話が出てきます。
最初からドラム缶だけの取り扱いしか想定していないと、後で拡張余裕がなくなって苦労します。
イニシャルコストを削減して建設した結果が、後々で大きな苦労に。
その頃には当時の設計者は居なくなっていて、責任は取らないでしょう。
それでも裏口は叩かれるので、設計者は気を付けたいところです。
タンク容量の設計
ドラム缶から製造施設内タンクに移送することを考えると、タンク容量はできるだけ大きい方が好ましいです。
屋外タンクなら一定量は確保しているので気にならないかも知れませんが、プラント内は慎重に考えましょう。
- タンク容量を上げたいけど、建屋耐荷重が持たない
- タンク容量を上げたいけど、配管や操作のためのスペースがない
配管設計で課題となりやすいのが、実はこういうタンクです。
反応槽のように容量制限が厳しいわけでないため、逆に設計の選択肢が多くて悩むことでしょう。
設計者としての技術力が問われるところですね。
プラント建設にも影響
屋外にドラム缶を置くという背景は、機電系エンジニアは知っておかないといけません。
実はプラント建設に直結します。
- プラントや屋外タンクをギリギリの敷地に詰めてしまっていたら、ドラム缶を運搬するスペースが少なかった。
- ドラム缶に充填するスペースがそもそも用意されていなかった
- プラントを拡張しようとしたら、ドラム缶を置くスペースであったため、工事調整がとても大変になった
こういう問題を抱えがちです。
建設時だけの一過性のものなら我慢してほしいと設計側に依頼しがちですが、無い場所を無理矢理探さないといけない設計も大変になるでしょう。
運転と設計のどちらを優先するか、という展開にもなりそうです。大抵は運転重視になりますけど。
参考
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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
化学プラントでドラム缶を使う背景をまとめました。
原料を運搬するため、製品を運搬するため、失敗品を一時保管するため。
使用量や設備容量を適切に選ばないと、ドラム缶の保管量が増えて工場を圧迫させます。
プラント建設のレイアウトとしても影響してきますね。
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