化学プラントの機械設備は日々過酷な条件下で稼働しています。そんな中、設備の耐久性や性能を高めるために欠かせないのが「熱処理」と「表面硬化」です。これらの処理を理解することで、設備の寿命延長や故障リスクの低減につながり、効率的なプラント運営に役立ちます。
本記事では、化学プラントでよく使われる熱処理と表面硬化の基本知識をわかりやすく解説します。熱処理と表面硬化の化学プラントで一般的な部分に絞って解説しますが、本来は個別の単元として扱える内容です。

熱処理
熱処理は鋼に対して行う処理として一般的です。
鋼をパワーアップするための処理と考えれば良いでしょう。今風に言うと鋼+1の状態。
鋼自体はそれなりに硬いのですが、より硬く・強く・粘り強くするなどの要求事項に対応するために、熱処理を行います。
熱処理によって機械的性質は一般に改善されます。
強度、硬度、引張強さ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐熱性、耐食性、冷間加工性、低温脆性、ばね性、磁気特性、非切削性
いろいろありますが、熱処理をすると鋼はとにかく強くなるんだ!という理解をしていれば十分です。
細かい議論は鉄鋼メーカーさんの範囲内でしょう。
化学プラントの機械屋としては以下の熱処理の単語は周辺知識として知っておきましょう。
- 焼入れ
- 焼戻し
- 焼ならし
- 焼なまし
溶接関係の知識で登場します。
表面硬化
表面硬化とは言葉どおり表面を硬くする処理のこと。
鉄の一部だけに「硬い」という特性を持たせます。
実はこの表面硬化はユーザー側が意識することはほとんどないでしょう。
メーカーが対応してくれるからですね。
浸炭焼入れ
浸炭焼入れは、鋼の表面に炭素を浸透させる方法です。
1mm程度の厚みに炭素が付加されます。
炭素は鉄を硬くする作用があります。
これを利用して、表面の耐摩耗性を上げる効果が期待できます。
窒化
窒化は鋼の表面に窒素を浸透させます。
浸炭が炭素なら、窒化は窒素です。
0.3mm程度の厚みに窒素が付加されます。
浸炭と同じく、表面の耐摩耗性を上げる効果が期待できます。
高周波焼入れ
高周波焼入れは焼入れと発想が同じです。
焼入れが炉で行うのに対して、高周波焼入れはコイルを使います。
コイルに電流を流す → 鋼に誘導電流が流れる → 鋼が熱を持つ → 焼入れ
炉のような大型の設備が必要ではないことが、メリットでしょう。
表面被覆
表面被覆は表面にカバーを付けること。
表面硬化に近いですが、微妙に違います。
化学プラントでは表面被覆を目にする機会が圧倒的に多いです。
溶射
溶射とは溶けた金属を発射させて鋼にくっつける方法です。
溶接に近いですよね。
厚みは1mm程度。
溶射する物質がいろいろあって、金属でも高級な金属が溶射可能でセラミックなども可能です。
応用の幅の広さがポイントです。
耐熱性・耐食性・耐摩耗性など機械的性質をいろいろと向上させることが可能です。
粉体と直接接触する撹拌翼やインペラなどに、硬化目的で使うことが化学プラントでは多いです。
この考え方自体は機械設備の補修でも使います。
ステライト盛り
ステライト盛りは肉盛溶接の1つです。
溶射ではなく溶接。
クロム・タングステンを含むステライトが溶接できます。
耐食性・耐摩耗性などを上げることが可能です。
ステライト盛りはバルブなどの弁体などに使いますよ。
硬質クロムメッキ
硬質クロムメッキは鋼表面にメッキをします。
厚みは0.1~0.2mm。薄いですね。
硬度が高く、耐摩耗性に優れます。
ポンプの軸や攪拌機の摺動部に大活躍です。
クロムが強度アップに使うことやSUSに関係が深いことは知っておきましょう。
参考
最後に
熱処理と表面硬化について紹介しました。
熱処理として「焼入れ・焼戻し・焼ならし・焼なまし」を、表面硬化として「浸炭焼入れ・窒化・高周波焼入れ」を、表面被覆として「溶射・ステライト盛・硬質クロムメッキ」を紹介いました。
メーカーで対応してもらうことが多いですが、ユーザーも知識としては知っておきましょう。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。
化学プラントの設備に使う熱処理や表面硬化について解説します。
熱処理や表面硬化って聞いたことありますか?
機械設備としてはごく一般的な知識ですが、化学プラントの機械エンジニアなら詳しくない人もいるでしょう。
設備メーカーの中で完結することが多いですからね。
熱処理と表面硬化の化学プラントで一般的な部分に絞って解説しますが、本来は個別の単元として扱える内容です。

熱処理
熱処理は鋼に対して行う処理として一般的です。
鋼をパワーアップするための処理と考えれば良いでしょう。今風に言うと鋼+1の状態。
鋼自体はそれなりに硬いのですが、より硬く・強く・粘り強くするなどの要求事項に対応するために、熱処理を行います。
熱処理によって機械的性質は一般に改善されます。
強度、硬度、引張強さ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐熱性、耐食性、冷間加工性、低温脆性、ばね性、磁気特性、非切削性
いろいろありますが、熱処理をすると鋼はとにかく強くなるんだ!という理解をしていれば十分です。
細かい議論は鉄鋼メーカーさんの範囲内でしょう。
化学プラントの機械屋としては以下の熱処理の単語は周辺知識として知っておきましょう。
- 焼入れ
- 焼戻し
- 焼ならし
- 焼なまし
溶接関係の知識で登場します。
表面硬化
表面硬化とは言葉どおり表面を硬くする処理のこと。
鉄の一部だけに「硬い」という特性を持たせます。
実はこの表面硬化はユーザー側が意識することはほとんどないでしょう。
メーカーが対応してくれるからですね。
浸炭焼入れ
浸炭焼入れは、鋼の表面に炭素を浸透させる方法です。
1mm程度の厚みに炭素が付加されます。
炭素は鉄を硬くする作用があります。
これを利用して、表面の耐摩耗性を上げる効果が期待できます。
窒化
窒化は鋼の表面に窒素を浸透させます。
浸炭が炭素なら、窒化は窒素です。
0.3mm程度の厚みに窒素が付加されます。
浸炭と同じく、表面の耐摩耗性を上げる効果が期待できます。
高周波焼入れ
高周波焼入れは焼入れと発想が同じです。
焼入れが炉で行うのに対して、高周波焼入れはコイルを使います。
コイルに電流を流す → 鋼に誘導電流が流れる → 鋼が熱を持つ → 焼入れ
炉のような大型の設備が必要ではないことが、メリットでしょう。
表面被覆
表面被覆は表面にカバーを付けること。
表面硬化に近いですが、微妙に違います。
化学プラントでは表面被覆を目にする機会が圧倒的に多いです。
溶射
溶射とは溶けた金属を発射させて鋼にくっつける方法です。
溶接に近いですよね。
厚みは1mm程度。
溶射する物質がいろいろあって、金属でも高級な金属が溶射可能でセラミックなども可能です。
応用の幅の広さがポイントです。
耐熱性・耐食性・耐摩耗性など機械的性質をいろいろと向上させることが可能です。
粉体と直接接触する撹拌翼やインペラなどに、硬化目的で使うことが化学プラントでは多いです。
この考え方自体は機械設備の補修でも使います。
ステライト盛り
ステライト盛りは肉盛溶接の1つです。
溶射ではなく溶接。
クロム・タングステンを含むステライトが溶接できます。
耐食性・耐摩耗性などを上げることが可能です。
ステライト盛りはバルブなどの弁体などに使いますよ。
硬質クロムメッキ
硬質クロムメッキは鋼表面にメッキをします。
厚みは0.1~0.2mm。薄いですね。
硬度が高く、耐摩耗性に優れます。
ポンプの軸や攪拌機の摺動部に大活躍です。
クロムが強度アップに使うことやSUSに関係が深いことは知っておきましょう。
参考
最後に
熱処理や表面硬化は、化学プラント設備の強度や耐久性を高める重要な技術です。
- 熱処理では「焼入れ」「焼戻し」「焼ならし」「焼なまし」などで鋼の性質を変えます。
- 表面硬化では「浸炭焼入れ」「窒化」「高周波焼入れ」で表面のみを強化。
- 表面被覆は「溶射」「ステライト盛り」「硬質クロムメッキ」で耐摩耗・耐食性を向上させます。
メーカー任せになりがちですが、機械エンジニアとして基礎知識を持つことで、設備の仕様検討やトラブル対応に役立つでしょう。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。
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