機電系エンジニアが化学プラントの現場(Plant site)に入る時の注意点をまとめました。
設備についてある程度知っているエンジニアは、現場のことも熟知していると勘違いしてしまい、運転中に何も考えずに現場に行ってしまう場合があります。
特に転職組は現在の会社のことを良く知らないはずなのに、わがままな行動をとりがちです。
こう考える私は純粋なプロパー。何となく僻みもありそうですね。
それはそうと、化学プラントの現場に立ち入るというのはいろいろな危険性があります。
物の動きが見えないプラントだから怖くないと思っていると大間違い。
どんな危険があるのか確認していきましょう。
薬傷
化学プラントの現場に入ったときに常に起こる可能性がある危険性は薬傷です。
設備の外でも薬傷は起こる
薬傷に関して意識していないエンジニアは結構多いと思います。
普通の人の発想は「設備の中には危険な薬液が入っているが、設備の外は綺麗」と思っているでしょう。
無理もありません。
というのも設備の外は汚れていないから。
設備から液こぼれがあって、明らかに変な色(例えば黄色とか茶色)をしていたら誰も近寄らないでしょう。
でもそうではない普通の色(例えば灰色)だとその設備は綺麗だ思い込んでしまいます。
手すり・床・配管どこでも綺麗なように見えて、実は汚れています。
薬傷のリスクはいくらでもあります。
設備が目に見えないけど汚れる理由
設備の外が汚れる理由って何でしょうか?
答えは作業員の保護具。
現場の液をサンプリングしたり充填したりするときに、作業員は保護具を付けます。
手に対する保護具として手袋があります。
この手袋は作業時に汚れます。
その手袋を付けながら手すりを持ったりドアノブを持ったりすれば、当然汚れます。
いつ汚染されるか分からない
設備の外面はいつ汚染されるか分かりません。
運転員自体も分かっていません。
だからこそパトロールをします。
それでも完全には綺麗にできません。
SDMなど多くの工事会社が立ち入ることが分かっている場合は、ちゃんとした会社なら手すりの拭き取りをするでしょう。
でもこれでも気休めの世界。
水で濡らしたウエスで手すりを拭くくらいで、薬液が完全に除去できるわけではないですからね。
雑な運転員ばかりの工場だと、こんな清掃すらしないでしょう。
外部の人は安全サイドで考えて、製造部がそんなケアをしていないと思っているくらいで、ちょうどいいと思います。
逆に製造部の人は、問題が起きないようにできる限り洗浄して残っているリスクの説明をできるようにしておきましょう。
いつ被害にあうか分からない
設備に付着した薬液に対して、現場に立ち入った人がいつ被害に会うか分かりません。
設備に付着している薬液なんて、少量だから・・・雨で流れ落ちるから・・・
と甘えていると痛い目を見る可能性があります。
酸やアルカリなど分かりやすい液体ならすぐに判明するのでまだマシです。
ちょっと遅くても1日~2日後に判明します。
原因が特定しやすいです。
でも、物によっては年単位で影響がでてくるものもあります。
アスベストと同じで特定が困難です。
だからこそ、リスクをできるだけ抑えようとする対策が必要です。
ちゃんとした会社なら現場に立ち入る時に手袋を貸与してくれます。
そうではない会社なら自己防衛に努めましょう。
被害に会って損をするのは自分です。
やけど
化学プラントで目に見えやすい危険性として熱傷があります。
スチームトラップからスチームがモクモク上がっているのを見ると、熱そうだなって感じます。
そういう場所には近寄らないでしょう。冬場を除けば・・・。
分かりやすい部分以外にも落とし穴が結構あります。
典型例が配管。
先のスチーム配管も含めて、40℃よりもちょっと温度が高い内容物を流す配管っていくらでもあります。
断熱を付けていない裸配管だから温度も低いだろう・・・
こう思って何気なく休憩気分で配管に手を当てた瞬間、
あちちっ
となることがあります。
ゲームの世界ならそれでもいいのですが、現実世界で起こると二次災害の危険性もあります。
これと真逆で、氷点下以下のブライン配管では霜(とは言えないレベルの氷の塊)が付着している場合があります。
チョットした低温ならまだ良いのですが、液体窒素クラスになると迂闊に触ってしまうと手が氷にくっついて取れなくなります。
その後の処置で大騒ぎすることになります。
転落
工場内は転落する可能性が相対的に高いです。
事務所や家ではそれなりに整理整頓されていて、突起物も極小化しているはずです。
工場ではどうでしょうか?
- 設備や配管サポートの基礎
- 壁際のホースやバルブハンドル掛け
- 移動式の設備
- 段差を越えるステップ
いろいろな物が所狭しと並んでいるはずです。
こういった箇所を越えようとしたときに、転落やつまづく可能性があります。
特に40歳以上にもなれば、自分の思った通りに体が動かずに転落することだってありますよ。
街中でも起こりうることなので・・・。
墜落
化学プラントではなかなか起こりえないかも知れませんが墜落だってありえます。
想定するシーンは「床が抜け落ちる」
そんな馬鹿な・・・と思うかもしれませんが、年数が経った建物では起こりえます。
特に怪しげな化学薬品で鉄の梁が腐食されて弱っていたというケース。
他には手すりに体を預けすぎて、腐食した手すりが折れて墜落。
手すりも床も怪しいと思って移動しないといけません。
もちろんすぐに壊れるわけでなく、傾向がちゃんとあります。
運転員が日々のパトロールで観察して必要があれば注意喚起しましょう。
何かにぶつかる
化学プラントで起こる危険性のうちリスクは少ないが頻度が圧倒的に多いのが、何かとぶつかることです。
現場の低い位置を見るためにしゃがんで、観察が終わったから立ち上がろうとしたら、真上にあった設備に気が付かずに
ガツン!
ヘルメットがないとかなり痛いやつです。
本来の用途とはちょっと違いますが、ヘルメットを付けて防げる効果が最も高いです。
入社したての頃はヘルメットに配管の塗装や凹みを付けることが勲章だ、という言い方もするくらいですね。
ヘルメットがあっても痛いものは痛いので、体で覚えて危険回避ができるようになりましょう。
参考
最後に
化学プラントの現場に立ち入る時の注意点について紹介しました。
最もリスクが高いのが薬傷。やけど・転落は少しある程度で、墜落はほぼないでしょう。
頭を設備にぶつけることはとても多いのでヘルメットは必須です。
エンジニアは、設備を知っているから現場を知っていると天狗にならないように気を付けましょう。
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化学会社の現場は筆者様のご指摘通りです。小生は有機合成化学会社で40年働きました。大学、院で無機化学系分析を専攻したが、化学の仕事のヤバさは嫌と言うほど経験したので企業には絶対行きたくないと思い、公務員目指していくつも受けてその内いくつかは面接で落ちて会社員になってしまった。合成の現場はやばいので最初から分析に入って最後まで分析でやれたのは運が良かったと思ってます。でも仕事が終わり帰宅すると女房が開口一番臭いから、全部着替えてから家に入ってと言われ、外で見られないように、ズボンと上着を着替えてから家に入りすぐシャワーを浴び、風呂場は窓を全開してるがそれでも臭いと言われる。分析でさえこんなものだ。同僚は、癌などの病気で結構早死にが多かったし、大火傷や、腕を機会に挟まれて切断した人もいた。みんな製造現場の人だ。化学会社なんて絶対入るものではないと言いたい。付け加えて言うと、化学系はどの大学でも一番レベルの学生が集まる。旧帝大やそれに準ずる大学は優秀な学生が集まる。
おそらく私が想像する化学プラントとは時代もしくは環境が大きく違う感じです。
極めてヤバい環境ですね。。。