いきなりですが、プラント設計の現場では、配管設計は最重視されなければいけないと思っています。
基本設計としてのプロセス設計や、詳細設計としての設備設計、建屋そのものの設計も非常に大事ですが、現場を決めるのは配管設計です。
上流部門の設計の結果が、すべて配管設計に伸し掛かってしまい、その不具合をクリアするためには配管設計で非常に多くの努力がなされています。
私が居る会社では、配管設計者は外部のドラフト担当者に委託しています。
与えられた条件を何とか実現して、図面に仕上げていきます。職人的なスキルの側面があります。
この辺の形からも、縁の下の力持ちです。
配管設計の良否が実プラントの運転にどういう影響を与えてしまうか、考えました。
配管設計者が居ないと、プラント設計は止まってしまいますね。
装置サイズに制限を与える
配管設計が悪いと、装置サイズに影響が出る場合があります。
配管設計でも一番悪いトラブルと言えるでしょう。
塔や反応器のサイズを1つ小さくしないと、収まらないという結果になれば、プラントの生産能力を落として経済性を悪化させる要因になりえます。
この失敗に至るには、ある意味で配管設計者がしっかりしているという証明になります。
現地工事前に気が付いて、装置を何とかしないといけないという結論になっているわけですから。
たいていの場合は現地事項になって気が付いて、配管を無理矢理変えて何とか収めようとしてしまいます。
これは設計・工事・運転のどの段階でも問題になるので、誰も望んでいない結果です。
だからこそ、基本設計や土建設計などのタイミングで、危ないと思う箇所は配管設計者と相談しましょう。問題ないという許可を与えるのが配管設計者、という位置づけで考えても良いかもしれませんね。
動線が確保できなくなる
配管設計が良くないと、動線が確保できなくなります。
重篤なケースだと避難ルートが確保できないというもの。
ここしか配管を通す場所が無いという理由で、地面近くの躓ぎやすい高さや頭をぶつけやすい高さに配管を通す場合もあります。
この場合は、ステップを準備したり、トラテープで表示したりするでしょう。
そのレベルを越えると、通行できなくなります。
ここは絶対に死守したい避難ルートに対して、配管を通してしまう失敗は、後々大問題になります。
設計段階で気が付けば、何とかなる可能性もあるでしょう。
工事現場で初めて気が付くというのはNGです。
配管設計者としては、しっかり見ておかないといけない最低限の部分だと思いますね。
液ガスが流れなくなる
配管設計の失敗は、中身である液やガスが流れなくなるという問題を起こします。
- 口径が小さくて圧力が足りない
- 配管の上がり下がりが多くて、流れない
- 勾配が不足していて流れない
これらのケースが圧倒的に多いです。
完全に流れないというケースはあまり多くはなく、流量が不足するということの方が多いです。
これでも、生産能力を下げてしまうという意味で重篤です。
装置サイズをしっかり考えて、目標の生産能力を確保しようとしていたのに、配管の問題で確保できなかった。
運転を開始して能力確認している段階で、この事実に気が付くとショックは大きいです。
配管サイズだけを上げれば何とかなるならまだ良いですが、ノズルが細いから装置を作り直しとなったら大問題です。
かかるコストや時間以上に、設計者としての質を疑われかねません。
配管設計者のミスとしては、配管の上がり下がりや勾配などレイアウトによる失敗が起きたときでしょう。
とは、これも配管設計者だけの問題ではありませんが。
数が多く優先度の設定が難しい
プラントでの配管設計は数や種類が非常に多いです。
個々の優先度を決めて、トータルのコストと工期を最適化するためには、配管設計者の全体設計が大事になります。
この観点では、上流部門であるプロセス設計や建屋設計も個別最適設計になりかねません。
それくらい、配管設計は考えることが多いです。
建設に占めるコストが高い
配管工事というのは、プラント建設工事の中でもコスト割合が高いです。
私は機械・電気・計装・土建・配管という5分類くらいで考えるのが好きですが、この中で配管が一番割合が高いです。
投資などの側面で機械だけが意識されがちですが、実際のコストとしては配管の方が高いです。
投資を抑える面でも、配管費を下げるための優先度設定は大事で、配管設計者の結果が重要な意味を持ちます。
特に、大口径配管・断熱配管などをどれだけ最小化するか、という点ですね。
ここに意識が向けば、配管設計者頼みにせずに、協議して作り上げていくという形になります。逆に意識が向かないと、P&IDを配管設計者に渡して、得られた図面を工事会社に渡す丸投げとなります。
メンテナンス費にも直結
配管設計の良否は、メンテナンス費にも直結します。
設備の点検補修のために、配管を取り外さないといけないとはいえ、取外す配管数が多いとコストに響きます。
もちろん工期にも。
配管を取り外す前の洗浄作業も時間が掛かり、危険な内容物が漏洩するリスクも上がります。
安全を最優先にするという思想は、プラント設計ではなぜか軽視されます。
建設コスト最小化が目につきやすいからですね。
以降の運転段階で、やっとメンテナンスが着目されます。
今後、建設段階でメンテナンスを意識した配管設計者は、とても重要になるでしょう。
設備を更新する時にメンテナンス性を向上させる思想がある配管設計者も、同じく重要になります。
失敗しても問題に気付きにくい
配管設計者がプラント設計で重要な位置に居ますが、残念ながら失敗に気が付かれにくいという問題を持っています。
問題に気が付くのは、工程上の遅延や品質などの結果が出たときです。
最初は運転条件や原料などからチェックしていくので、まさか配管が悪いことは無いだろう、と疑われることは少ないです。
また配管の多少の失敗なら、運転でカバーしたり、メンテナンスを我慢したり、と表面上に問題が浮き上がってこないのは日本ならではかもしれません。(私が中国で経験したときには、配管がすぐに問題になりましたが、単に私がすぐに気が付いたからという理由だけだったかも)
問題になりにくいし、改善するにはコストが掛かるので声を上げにくく、改善しても結果が分かりにくいし、解決したか判断するには時間もかかる。
結果が分かりにくいという点では、配管設計はやりがいを感じにくいです。
この辺りのインセンティブをしっかり考えている会社ってあるのでしょうか?とても大事なので、気になります。
参考
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最後に
プラント設計では配管設計はとても大事です。
良否は装置サイズや動線に影響を与えたり、液ガスが流れなくなったりします。
配管の数が多いので考えることは多く、建設コストやメンテナンスコストにも実は影響を与えます。
ただし、それらの問題が表面化することは少なく、運用でカバーされがちです。
配管設計者の質が今後も大事になることは確かですね。
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