金属の渦巻ポンプや水封式真空ポンプなどの、基本的なポンプを選定する時に、地味に悩むことがあります。
鉄系にするかステンレス系にするか
会社として明確に思想が決まっているなら、初心者設計者も悩まなくて済むでしょうが、現実にはここに選んでいて、考え方が残ってないというケースが多いと思います。
私ならこんな考え方で選ぶだろう、という内容をまとめました。
生産に影響しないならオール鉄
ケーシングもインペラも鉄というポンプは、基本の材質です。
このパターンを私が選ぶなら、生産に直接影響がないポンプに限定します。
- そのポンプが止まっても水中ポンプなど代替がすぐに準備ができる
- 内容物に危険性が無い
- 流量が少ない
という化学プラントでは結構数が少ないと思います。
生産プラント内では、ほぼ該当なし。
プラント外に処理済みの排水を送ったり、雨水をくみ上げたり、プラントに関係なく使う用途がある場所です。
こういう場所は、仮に止まっても何とかなります。
固定式のポンプでなくて、移動式の水中ポンプを壊れたら交換するという運用でも十分なくらいです。
固定式でも変にメンテナンスするくらいなら、壊れたら交換するBM方式でも良いでしょう。
金属材質では鉄が最も安価ですので、使い方やメンテナンスとマッチした材質です。
プラント内ならオールステンレス
プラント内で使うなら、ケーシングもインペラもステンレスのオールステンレスにします。
材質は304系で良いと思いますが、できるなら316L系も考えましょう。
- プロセスでの腐食性が、ポンプとしてどこまで影響あるか判断しにくい
- 運転条件が一定ではない
- 詰まりや錆の可能性がある
オールステンレスは当然ですが高いです。
メンテナンスが不要というわけでもありません。ポンプが詰まったり割れたり、トラブルは起こりえます。
特に割れについては、鉄系の方がリスクが低いという考え方もあるくらいです。
それでも腐食やメンテナンスを考えると、ステンレスの方が安心感があります。
長いこと使い、トラブルでプラントを停止したくなく、とにかくケアする設備を減らしたいという時には、ステンレスにしておきましょう。
もっと耐食性を求めてフッ素樹脂ライニングや、漏れNGのためにシールレスポンプにするという場合は除きます。プラントのユーティリティ系など、水系だから鉄でも良さそうな系でもステンレスを選ぶ方が良いというシーンを考えています。
ケーシングが鉄、インペラはステンレスはあまり意味がない
ケーシングが鉄で、インペラがステンレスという選択肢は実はありえます。
- 腐食性が高いわけではない
- インペラは詰まりやすく清掃が大変(特にクローズド)
- 回転速度が直接加わるインペラは、腐食や割れも起きやすい
- 応力腐食割れの可能性がある内容物でも、ケーシングが鉄だと回避できる
この辺の事情を考慮して、「本当はコストダウンのためにオール鉄にしたいけども、せめてインペラだけはステンレスにする」という考え方が出てきます。
ところが、これは実際には基本的に鉄のポンプであって、ユーティリティ系にしか使えません。
ケーシングを鉄にしていたら錆が出てきて、ステンレスに錆が付着してしまいます。
コストの大小と起こりえるリスクの大小の、トレードオフの問題になりそうですね。
コストの差というのは実際には大したことではなく、リスク側の方が影響が大きいです。
設備はできるだけメンテナンスしないで済ませたいと思うのが、運転・保全の両方が思っていることなので、オールステンレスにしている方がとにかく無難だと思います。
ライニングは止めた方がいい
ケーシングをステンレスにするという時、ごくまれにライニングを選定する会社があります。
これは大抵上手くいかないでしょう。
ライニングがケーシングとしっかり固定されていれば良いのですが、そんなことはありません。
ポンプの起動発停で、ケーシング内が真空下になればライニングが剥がれます。
運転条件が加圧側だから、一瞬でも負圧になることは無い。だからライニングでも大丈夫。
と条件設定を見誤ってしまうと、ライニングを選びがちです。大抵データシートで仕様を指定する時には、イレギュラーケースを書かないものですが、トラブルはイレギュラーケースで起こります。
参考
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最後に
金属系のポンプの材質を指定するとき、ケーシングとインペラに対して、鉄とステンレスのどちらを選ぶかという問題があります。
どちらも鉄というのは、プラント内部では避けた方が良いでしょう。逆にどちらもステンレスとするのが無難です。
ケーシングは鉄でインペラはステンレスというのは何かと中途半端になりがちです。ライニングはもっとトラブルになりやすいです。
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