プラントエンジニアに関する仕事をしていて、1つ疑問に思ったことがあります。
「熱力学って必要ですか?」
機械系の4力学の中でも、熱力学は流体力学に次いでプラントエンジニアリングで必要だと分かりやすい分野です。
しかし、実際には熱力学ではなく伝熱力学を使うことが多いです。
熱力学自身はほとんど使わないでしょう。
材料力学や機械力学の方が出番は多いです。
熱力学の法則?
熱力学といえば第0・第1・第2からなる3つの法則が有名です。
工業仕事とかエントロピーとかいう専門用語が出てきますよね。
プラントエンジニアリングの業務で、この単語を使ったことは基本的にありません。
仕事は圧縮機とかモーターなどの動力として登場しますが、メーカーが提示してくれる情報であって、自分で手を動かして検証したり議論したりする用語ではありません。
エントロピーは全く使ったことがありません。
あえて使うとしたら比熱とエンタルピーくらいです。
比熱は熱力学として学ばなくても、義務教育の範囲内でOK。
エンタルピーは蒸気の潜熱のところで出てくるという程度で、別に使わなくても何とかなってしまいます。
マクスウェルの関係式なんて知った時にはある種の感動を覚えましたが、1回も使ったことがありません。
大学院の受験のために結構真剣に勉強した記憶はありますが、ほぼ使わないとなると虚しくなりますね。
蒸気の性質
蒸気の性質はほとんど使いません。
常圧での湿り蒸気・乾き蒸気の考え方を知っていればよくて、ボイラーなどで過熱度が少し登場する程度。
pV線図を真面目に理解しなくても十分に実務に対応できるでしょう。
蒸気圧力に対する飽和蒸気温度の関係は使いますが、学問として知らなくても良いような気もします。
- 蒸気圧力が高いほど蒸気温度が高い
- 実務で使う蒸気圧力のパターンは数個で、対応する蒸気温度は使っているうちに覚える
水の飽和表すら使わないで良くなります。
今は検索すればすぐにヒットしますしね。
熱サイクル
熱サイクルは内燃機関や冷凍機のサイクルが登場します。
内燃機関はともかく冷凍機は工場でも多く使っているメジャーな設備。
冷凍機のサイクルを知っていると、有利なようにも見えますが、熱力学として知っておかなくても何とかなるでしょう。
- 設備設計の段階では、負荷の熱量と、対応する設備能力や台数の話が大事
- 設備保全の段階では、圧縮機などの回転機と、閉塞しやすい熱交幹部のメンテナンス計画が大事
pV線図やph線図が無いと理解できない、対応できないという部分は多くはありません。
本当なら、蒸発器や冷却器での負荷変動によって気体と液体のバランスが変わって、それがシステム全体にどういう影響が出るか、という部分でph線図が登場しなくもないですが線図を使わなくてもイメージで何とかなります。
仕様より負荷が低い → 交換熱量が低い → 蒸発器での蒸気温度が低い → 圧縮機に流れる蒸気量が少ない → 冷凍能力が下がる
という典型的なパターンに対して、わざわざ線図を使わなくても良いですよね?という話です。
蒸発器に流す冷媒の量にたいして交換熱量に応じて冷媒が蒸発し、交換熱量が高いほど蒸発した冷媒ガスの温度は上がります。
蒸発した冷媒ガスに対して圧縮機が仕事をしますが、温度が低いガスは体積が小さく、圧縮機での成績を悪くします。
仕様がさらに低下すると、冷媒ガス中に冷媒の液体が残った状態になり、圧縮機の作動がさらに悪くなります。
サイクルというより冷凍システムとして見ていればよくて、化学プロセス的な考え方で良いと思っています。
参考
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最後に
プラントエンジニアとして仕事をしていて、熱力学の知識を使ったことが実はあまりありません。
伝熱力学とは似ている部分があり、四力学としては熱力学を学ぶためか、熱力学の知識がプラント園医ジニアとして大事であるかのような錯覚をします。
ところが、実務では非常に限られた範囲でしか使いません。
なくても何とかなってしまいます。
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