架台の強度計算(strength calculation)の超概要を解説します。
建屋を設計するときは専門の強度計算を行いますが、架台レベルだと詳細計算をすることはほぼありません。
既存と同じ構造や部材を選定していれば、とりあえずOKですからね。
変に強度計算で部材を削減しようとしても、コストメリットが出ずに危ない状況になるくらいなら、1サイズ上げておこう。
こういう発想で、設計を省力化します。
とはいえ、計算方法の概要を知らなければ、エンジニアとしてはちょっともったいない気もします。
どういう考えで設計されているかを知ることは、臨機応変な対応をするうえで役経つことでしょう。
モデル
今回考えるモデルは以下の通りです。
これが、いわゆる架台です。
4本足で真ん中にタンクや反応器などをセットして、架台の水平リブに相当する火打ち梁で設備の荷重を受けます。
設備はブラケットで支持します。
設備の重量をWとします。
梁の強度計算(strength calculation)
架台の強度計算の最初のステップは梁の強度計算です。
部材Aの火打ち梁は、材料力学の基礎式そのものを適用します。
両端支持・梁の真ん中にW/4(火打ち梁が4本あるから)として梁のたわみ計算をします。
これで梁のたわみ・曲げ応力が許容値以下になるように、部材の選定をします。
断面2次モーメントを上げていきます。
部材Aで受けた荷重はそのまま部材Bに伝達されます。
部材Bも部材Aと同じ梁のたわみ計算をします。
荷重が掛かる位置が部材Aとは少し違いますので、注意がやや必要です。
部材Bも大きさも部材Aと同じように計算しますが、部材Bの方が一般には長いので、大きな部材が必要になります。
部材Bで受けた垂直荷重は、架台の柱部分である部材Cに伝達されます。
部材Cとしては、座屈の計算を行います。
これも材料力学の基礎的な話です。
地震荷重の計算
強度計算上は地震荷重を考えないといけません。
地震により設備が水平方向に移動して、それを受けるための荷重として地震荷重なる物を考えます。
地震荷重そのものは係数によります。
(設備の荷重)×(地震係数)=地震荷重
という発想です。
地震係数なるものは、地域・計算基準などによって変わります。
部材Cには地震によって水平荷重と垂直荷重の2つが発生します。
水平荷重:設備の地震荷重そのもの
垂直荷重:設備の地震荷重と重心差から発生するモーメントに抵抗するモーメント
水平荷重は分かりやすいでしょう。
垂直荷重はやや分かりにくいでしょう。
(設備の重心-架台の部材A・Bの高さ)×(地震荷重)=(部材Bの長さ)×(垂直荷重)
という計算になります。
タンクの重心位置とブラケット位置が近い方が良い、という理由はここにあります。
左辺がほぼゼロになって、垂直荷重を考慮する必要が無くなってきます。
垂直荷重も梁のたわみ計算を行って評価します。
部材Cとしては設備荷重による座屈と地震荷重によるたわみを考慮して、両方とも満足する部材を選定します。
斜材を付けた場合は、部材Cの水平荷重と垂直荷重を緩和する方向になります。
下の図のようなイメージで捉えていると良いでしょう。
取付ボルト
取付ボルトは部材Cに掛かる力・モーメントから計算をします。
考え方はアンカーボルトの計算とほぼ同じです。
梁に掛かる応力は水平応力と垂直応力の複合計算であることに注意しましょう。
数式を使った理解
ざっくり理解と言いつつ、数式を使った理解も最後に示します。
なお、以下の条件は共通して使います。
M:曲げモーメント
σ:曲げ応力
Z:断面係数
添え字のA,B,C・・・は部材のA,B,Cを示す
部材A
部材Aの梁の曲げ応力を計算します。
荷重W/4、長さLA、両端支持の式を使います。
$$ M_A=\frac{W}{4}\frac{L_A}{2}\frac{1}{2} = \frac{WL_A}{16} $$
$$ σ_A=\frac{M_A}{Z_A} = \frac{WL_A}{16Z_A} $$
部材B
部材Bも部材Aと同じように計算します。
$$ M_B=\frac{W}{8}\frac{L_B-L’_B}{2}= \frac{W(L_B-L’_B)}{16} $$
$$ σ_B=\frac{M_B}{Z_B} =\frac{W(L_B-L’_B)}{16Z_B} $$
部材C
部材Cについて見ていきます。
地震荷重Fについて部材Cでも水平荷重としてFは作用します。
$$ F=\frac{1}{2}F_0 $$
一方で、高さ差によるモーメントを受けるため、垂直荷重も受けます。これをF’とすると、
$$ F’\frac{L_B}{2} = F_0(h-L_C) $$
$$ F’=\frac{h-L_C}{L_B}F $$
部材D
部材Dがある場合も考えましょう。
こんな感じで、斜材の部材Dが入った場合は式が若干複雑になります。
力の釣り合いを考えると(正負の記号は適当に付けています)、鉛直方向・水平方向それぞれ以下の通りになります。
$$ F_D\frac{L_C}{L_D}+F_C-F’=0 $$
$$ F_D\frac{L_B}{L_D}-F=0 $$
これらの式から、以下の通りとなります。
$$ F_D=F\frac{L_D}{L_B} $$
$$ R_A=F’=\frac{h-L_C}{L_B}F $$
部材Cの断面積をAとすると、部材Cの固定点に掛かる引張応力、せん断応力はそれぞれ
$$ σ_k=\frac{R_A}{A} $$
$$ τ_k=\frac{F}{A} $$
となり、これらを主応力σmを計算すると
$$ σ_m=\frac{1}{2}σ_k+\frac{1}{2}\sqrt{{σ_k}^2+4{τ_k}^2} $$
となります。
参考
関連記事
架台の強度計算を詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
最後に
架台の強度計算のイメージを解説しました。
材料力学の梁のたわみ計算が基本です。
これに座屈計算や地震・撹拌などの水平荷重をプラスして計算していきます。
細かい計算をすることは少なくなってきましたが、概念は理解しておきたいですね。
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