管理職になると、メンバーの育成と同じかそれ以上の位置づけで、メンバーのメンタルヘルス(mental-health)が大事になります。
管理職になる前からメンバーの指導を行っている人でも、管理職でない立場だと育成に重きを置いてしまい、メンタルヘルスに対して考えないこともあります。
いざ、管理職になってみて、研修を受けたり自主学習をしだしても、やや遅いと思います。
実際に私もそれで苦労しました。
自主学習として大阪商工会議所のメンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト 2種ラインケアコースを読んで、1年間実践した感想をまとめました。
ライン管理職向けではない
本書はラインケアコースなので、普通の管理職に向けた本のように見えますが、実態としては疑問符が付きます。
- Ⅰ種 マスターコース(人事向け)
- Ⅱ種 ラインケアコース(管理職向け)
- Ⅲ種 セルフケアコース(一般社員向け)
管理者向けという表現になっていますが、現場の実務で使える部分はこの2~3割くらいだと思います。
会社としてメンタルヘルスにどうやって取り組むのかというような、全体像にウェイトが置かれています。
ライン管理職で現場の第一線でメンバーのメンタルヘルスに直面する人であっても、全体像を知ることは意味はあります。
でも、初めて現場で問題に直面する人にとっては、全体像よりも個別具体的な部分が知りたいと思います。
検定試験という性格上、どうしようもない部分はあります。
とはいえ、管理職になった人の実感としては以下のような感じなので、物足りないと感じました。
- メンタルヘルスが重要であることは、肌感覚で十分に認識している
- NGなこと(みんなの前で怒鳴る、指導しない・・・)などは分かっている
- メンバーとどうやって接すればいいかが、分からない
メンバーとの接し方について最低限気を付けたい部分は、文として書いています。
頭では理解できても実践してみると、認識のずれがあってこの本にだけ頼るというのは辞めておいた方が良いでしょう。
労働者の異常に気を配る
管理職にとって労働者の異常に気を配るというのはとても大事です。
本書では体系立てて色々な説明をしていますが、実務的には「異常にいつ気が付くか」が最大のポイントだと思います。
一律的な答えは無いと思います。
管理職として試行錯誤する部分でしょう。
パワハラ的な対応を上司である管理職がしていないという場合でも、労働者に以下のような異常があった時は注意しましょう。
- 残業時間が定常的に多い
- 異動や配置転換があったばかりは要注意
- 周囲の人と雑談しない
本書でも記載がありますが、多くのページを割いているわけではありません。
残業時間が定常的に多い
残業時間の多さは、周囲の人と比べるのが良いです。
同じような仕事量を同じような能力の人が担当しているはずなのに、残業時間が多いということは何かしら問題があるということです。
直近数カ月で増えてきたら注意しましょう。
教科書的には1 on 1で話を聞きます。
これで問題が解決に向かうことはありえますが、どうしようもないというケースもあります。
積極的に話をしてくれる人なら大丈夫ですが、何も話をしない人もいます。
この人に時間を掛けて1 on 1をしても、時間が掛かるだけで解決しないという可能性があります。
仕事量を減らして様子を見る、という手段を取ることになるでしょう。
周りの人に仕事を増やすことができればいいですが、無理な場合は管理職自身が引き取らないといけません。
仕事を引き取らざるを得ない例がとても多いですが・・・。
異動や配置転換があったばかりは要注意
異動や配置転換があったばかりは要注意です。
これは年齢や経験年数を考えない方が良いです。
誰に対しても気を配る方が良いです。
数カ月は様子見した方が良いでしょう。
化学プラントの生産技術なら、以下のようなパターンが注意です。
- 担当プラントの変更があった
- 設計と保全の担当が変わった
- 他部署から異動してきた
- 他社から転職してきた
どのケースも等しく要注意です。
転職者だから、1カ月・2カ月目から成果を求めるという会社もあるようですが、あまり好ましくありませんでした。
周囲の人と雑談しない
周囲の人と雑談しなくなった労働者は要注意です。
かなりの確率で抱え込んでいます。
もともとは積極的に話す人が、雑談をしなくなってきたという分かりやすい例なら、すぐに行動しましょう。
問題は配属されたときからずっと話をせずに、1人で仕事しようとする人。
生産技術系の職場では一匹狼で仕事をする人がまだまだいますが、チームプレイの効果はとても大きいはずです。
今後ますます重要になります。
1人で黙って仕事をするタイプの人は、今後どんどん立場が危なくなってくるでしょう。
管理職が直接ここにアクションを掛けようとすると、失敗しやすいです。
メンバー間でコミュニケーションを取ろうとする仕掛けだけを作れば良いと思います。
この件は.○○さんに聞いたら良いと思うよ。
こんな感じですね。
というのも、管理職は本人が普通に見えても、労働者からは相当威圧的に見えてしまいます。
ここを認めることが管理職の最初のステップだと思います。
ストレス軽減方法
ストレスがたまったというときの対処法を、本書では記載されています。
運動・睡眠・リラクゼーションという類の話です。
管理者向けとしては怒らないようにするための対策として想定されます。
6秒ルールに繋がる話ですね。
個人的にはこれはあまり意味がなく、思考や発想を変えることが必要と思います。
私の場合は、諦めるということが決め手でした。
一方で、労働者側もここはしっかり理解したいところ。
管理者がこの本を読んで、ストレス軽減方法を労働者に伝えようとしても、伝えるのは難しいです。
労働者自身が研修や学習をして習得してほしいです。
会社としては、特にストレスに関しては管理職と労働者それぞれに、研修していることを伝達すべきでしょう。(弊社ではできていませんが・・・)
言葉の意味を認識合わせする
組織の若返りや再編成など大きく変化があった場合には、言語の意味を適切に認識合わせする時期が必要です。
同じ言語で受け取り方が違うことも認識しておきたいです。
日々の指導や適切なタイミングでの1 on 1でも、障害になります。
共通言語として習得するには、組織に新しく入ってきた側の努力が欠かせません。
これを認識していない新人が増えてきましたが、焦らず粘り強く取り組みましょう。
管理者自身が伝達するよりは、周りのメンバーとの雑談で認識を深める方が効果的です。
現場実習はその絶好の機会ですが、最近ではあまり上手く機能してないようです。
参考
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最後に
メンタルヘルス・マネジメントを読んで1年間管理職を実践してみた感想です。
労働者の異常に気が付く・ストレス軽減方・言語の意味を共通認識する
管理者向けというより人事向けという部分もあって、全てが使えるという本ではありません。
体系を知るという点では意味があるので、一度は見ておきたいです。
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