プラントのレベル(plant level)設計は、エンジニアリングの質を大きく左右します。
プラント建設や増築のような大きな仕事でしか、検討することが無いので重要度を実感することは少ないでしょう。
プラントエンジニアとして、機械エンジニアが土建エンジニアと最も議論をしないといけない部分です。
一度作ってしまったら変更が効かない要素ほど、慎重に検討しましょう。
とても大事なことなので、図面をいかに丁寧に仕上げることだけでなく、現場でもしっかり確認して議論しましょう。
タンクを設置する例
以下の例を使って解説します。
屋外タンクとポンプがあって、スタンド上に配管を繋げるフローです。
このフローは、プラントの高さに関する記事で登場しました。
この完成形に向かって、現状は一部の設備が設置されていないとしましょう。
以下のように、赤い部分が新規に設置するという例です。
- 屋外タンクの基礎
- 屋外タンク
- ポンプの囲い
- ポンプの基礎
- ポンプ
- 屋外タンクとポンプの間の配管
- ポンプとスタンドの間の配管
屋外タンクの防油堤はすでにあって、屋外タンクだけ追加設置してポンプと配管を繋いでいくというパターンです。
ここで以下がポイント、というか設計の悩みどころになります。
レベル基準となるべきポイントが複数ある
配管図を書く時の思考
フローを基に配管図を書く時を考えましょう。
配管図は往々にして複数の紙面に分かれます。
対象となるエリアが遠いと紙面も分かれますが、レベル基準も分かれる場合があります。
同一プラント内なら、距離が離れていても同じレベル基準から追い出して図面を書くことがありますが、結構注意が必要です。というのも、プラント自体が傾いているという場合があり、長手方向の距離が長いほどその影響は末端部に出てくるからです。
レベル基準が分かれる例として、今回取り上げた屋外タンクと配管スタンドの関係は意外と見かけます。
個々の配管図に対して「GL+○○」とレベル基準を作ってしまうと、本当なら異なるGLのはずなのに同じGLであるかのような錯覚をしてしまいます。
今回の例なら、屋外タンクの防油堤の天端と配管スタンドの天端が4000mmであるという錯覚です。
この状態で配管図を完成させ、現場工事に入ったとしましょう。
配管図を書く時にはレベル測定をしないことが多いです。
逆にレベルをしっかり出した後で、配管図を書きあげればこの問題は起きません。
図面屋さんとそういうコミュニケーションが取って、測定をしっかりできる体制があれば楽ですね。
現場で起こること
基準があいまいな状態で施工することになるので、新規に作る部分が軒並みズレていきます。
今回の例なら、以下が最初に問題となるでしょう。
- 屋外タンクの基礎
- ポンプの基礎
土建工事のタイミングで、基礎高さをどこに持っていけば良いのかという問題になります。
図面だけを見て施工された場合、配管図よりも高い・低いという結果になります。
それが数10mm程度のズレであれば問題にならないこともあるでしょうが、場合によっては100mmのオーダーでずれます。
こうなると問題は大きくなっていきます。
- 屋外タンクの高さが法的要求よりも高くなる
- 屋外タンクが既存よりも低くなったり、土間より低くなる
- ポンプが異常に高いもしくは低い位置に付く
屋外タンクが低すぎる位置に付いてしまったり、ポンプが高すぎると、運転に支障が出ます。
だからこそ、配管図という施工図があっても、施工前に現場で確認することが最終的なストッパーとして機能します。
土建エンジニアと機械エンジニアはお互いに時間を見つけて現場に行きましょう。
対応方法
こういう問題が起きたときになって慌てないようにするために、予め対応方法を考えておきましょう。
配管調整
一般的には配管で調整するという方法を取ります。
今回の例なら、ポンプとスタンドの間の配管で調整します。
ここに調整代を設けましょう。
鉄系の配管やステンレス系の配管なら比較的容易です。
適切な場所にフランジを切り込みましょう。
逆にグラスライニングやフッ素樹脂ライニングならどうしようもなくなってしまう場合があります。
レベル調整用のスペーサーを考えましょう。
設備調整
もう1つの方法は設備を調整するという方法です。
配管が固定されているから設備で調整という考えです。
これはほとんど例がありません。
あったとしても数10mm程度の差を解消するために、現場で打ち合わせをして決めるという場合でしょう。
配管の高さが固定されている場合なら、例えばスタンド側を基準にするなど基準を1つに固定してくみ上げていくことになるでしょう。
参考
関連記事
最後に
化学プラントで設備を新規に設置するときに起こりやすい、レベル高さの問題について典型例をとりあげて解説しました。
レベル基準が複数できてしまい、それらの基準が一致しない場合に起こります。
古い工場ほど起こりやすいです。
配管図を書く段階でのレベル測定・現場での詳細の打ち合わせ・配管での調整など、各段階でできることはあります。
ギリギリになって問題が起きないようにするためにも、綿密な設計計画とコミュニケーションが大事です。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。