化学プラントのプラントオペレータ(application requirements)の募集について解説します。
募集要項では見えない、裏にある会社側の発想をまとめてみました。
プラントを運転するために欠かせないオペレータなので、ちゃんとしている会社なら定期的に募集をしています。
逆に、大きな会社で募集を掛けていない場合は、オペレータの年齢構成がバラバラだったり、仕事が少なかったり、異動が多かったりと、マイナスイメージもあったりします。
この記事を読むと、募集要項のウラを想像できるようになります。
僻地の大手化学プラントなら好待遇の募集要項ですが、実態は・・・?
ホワイト化学会社は競争率が高い
大企業の化学プラントならホワイト会社であろうと考えるでしょう。
大企業の化学プラントのオペレータに関する募集要項は、その地域の中でも結構群を抜いた内容のはずです。
- 給料は高い
- 福利厚生は超充実
- 深夜手当や残業手当など手厚い
- 三交代
だいたいこんな内容だと思います。
これだけ条件が良いと競争率は相当高くて、私の会社でも100倍程度まで到達する時期があるようです。
オペレータの仕事
とあるバッチ系化学プラントのオペレータの仕事を紹介しましょう。
- 6:30出勤
会社と家の移動時間にも依ります
- 7:00工場到着
結構込みます
- 7:10作業着に着替える
作業着は工場外に持ち込まないので、工場についたら更衣室で作業着に着替えます
- 7:20計器室到着
更衣室と計器室の距離が遠いケースは可哀想
- 7:30申し送り
前勤務帯(0:00~8:00)からの引継です
- 8:00待機
たばこ休憩が異常に多いです
- 8:05体操
準備運動です。ラジオ体操が一般的でしょう
- 8:15朝礼
業務内容の確認、事務所からの連絡。各種安全活動をこの後に行う場合もあります
- 8:30作業開始
なんだかんだ準備をしていたら、これくらいの時間に作業を開始するでしょう
- 8:45肉体労働
原料の仕込み・製品や廃棄物の充填という肉体労働から行います。元気なうちに済ませたいもの。運転方法や設備構成はこういう作業時間の都合で制約を設けることが多いです。
肉体労殿の合間を縫って、DCSのシーケンスで進めれる部分は進めていきます。
- 10:00休憩
肉体労働系は1時間くらいかかってしまいます。夏場だとこの1時間で汗だくになってしまいます。プラントを止めるわけにはいかないので、交代しながら休憩します。
ここから先は、DCSの操作と現場のパトロールや作業を行います。合間を縫って、昼食を取ります。
- 14:30終わりの雰囲気
この時期になると作業の終わりを意識し始めます。
- 15:00計器室に集合
現場作業は終わって計器室に集合します。たばこ休憩・・・
- 15:30申し送り
16:00~0:00勤務者への申し送りをします。申し送りが終わったら、またたばこ休憩・・・
- 16:00計器室出発
仕事終わりです。早く計器室から脱出しましょう。
- 16:10入浴・シャワー
工場内で付着した危険物などを洗い流して、構外に拡散させないようにします
- 16:30帰宅
会社から脱出です。お疲れ様でした。
16:00~0:00や0:00~8:00の勤務も基本的な構成は同じです。
肉体労働系の作業を8:00~16:00に集めて、夜はパトロールに集中させることが多いでしょう。
安定した状態では、DCSのボタンを押す作業と現場のバルブ開閉がメインになります。
原料の仕込み・製品の充填・廃棄物の充填や運搬といった肉体労働がサブの作業として発生します。
DCSがちゃんと整備されていて自動化が進んだ工場なら肉体労働作業の割合が低いですが、DCSや自動化設備が投入されない環境だと肉体労働作業の割合が高いです。
この意味では、連続プラントはバッチプラントよりも肉体労働作業の割合が低く、中小企業だと肉体労働作業の割合がもっと高くなるでしょう。
大企業の連続プラントしか勝ちませんね、
競争相手
募集要項を見た時には自分と会社との関係で考えるのが普通でしょうが、競争相手のことも考えてみましょう。
地元の高卒・高専卒
最初の競争相手はその地域地元の高卒・高専卒です。
大企業であれば高卒・高専卒の優秀な成績の人が採用されるでしょう。
成績が若干劣る人はオペレータとしては採用されず、施工会社や図面屋に勤務したと思ったら、実は受験した工場に派遣される側になります。
計器室で出会ったら同級生だった、ということは1度や2度ではありません(笑)
縁故採用
縁故採用は絶対にあります。
どこまでを縁故というか問題はありますが、従業員の親戚を紹介・子供を紹介というケースは普通にあります。
有利に働くとは限りませんが、広く世間一般に募集しつつ、従業員が知っている人を比べることは会社としてメリットがあります。
- 従業員のレベルは会社が把握している。
- 従業員が使う表現は、会社の共通言語である。
- 従業員が知っている人の人物像を掴みやすい。
- 従業員が悪事を働くことを防止しやすい。
- トラブル時に連携や連絡を取りやすい。
従業員の関係者を絶対評価することは難しいです。
従業員の関係者と、世間一般に募集した人を相対評価することは、会社としては大きなメリット。
縁故採用とそれ以外の人の割合は良く分かりませんが、10~20%程度だと思います。
Uターン・Iターン
最後の競争相手は、UターンIターンの人です。
オペレータとしては、この割合は非常に少ないです。
プラントエンジニアやメンテナンスマンなら結構な数はいますけど。
やっぱり地元が良いから、地元で有名な会社で働こうと思った。
採用された人たちの志望動機はこんなケースが多かったです。
これはそもそも優秀で別の会社や別の業種で働いていた人が、家庭の都合などで仕事を変えたという意味であり、スペックは高い傾向にあります。
コンビナートは有利
高卒・高専卒を中心に採用するプラントオペレータで採用される確率を上げるには、工場の地域が重要となるでしょう。
具体的にはコンビナート地域。
高校や高専など地元の人数(供給)に対して、オペレータの数(需要)が多い地域だからです。
逆に、会社側としては非コンビナート地域の方が、優秀なオペレータを募集できる確率が高くなります。
募集人数の推移
募集人数を毎年のようにチェックしているとある傾向が見えてきます。
募集人数が下がるのが普通
プラントオペレータの募集人数は年々下がっていくのが普通です。健全です。
その背景を紹介しましょう。
理由は単純で、自動化が進むから。
人材不足・労務費の高騰・作業の効率化合理化などのあらゆる背景を総合して、募集人数は下がっていくのが普通です。
合理化で発生した余剰人員は子会社に出向したり、間接部門に異動するのが一般的です。
募集人数が変化しないなら要注意
募集人数が毎年同じ場合は要注意!
会社としてオペレータに投資できる金額が小さくて、人を駒として扱っている可能性があります。
募集人数が増加するならチャンス
ホワイトな化学プラントで募集人数が増える場合は、チャンスです。
この理由もシンプルで、プラント建設があるから。
プラント建設レベルになると、1つの課ができます。
新規のオペレータだけでも10~20人くらいは募集をするでしょう。
建設段階から現場を見ることができて、綿密な教育を受けながら、立ち上げにも参加できます。
こんな機会は会社人生でも1回あるかないか。
超貴重です。
近年は医薬関係のプラント建設が日本各地で急増しています。
中小企業で募集人数の増減がある場合は、組織の年齢構成のバラつきを疑った方が良いです。
たまたま定年者が多い年代だったという場合ですね。
そこで何かしら問題があったから募集人数を増やしたというケースは最後に考えましょうか。
最後に
化学プラントのオペレータの募集要項のウラを紹介しました。
オペレータの仕事の典型例を紹介し、競争相手としての高卒・高専卒の話を取り上げました。
募集人数が下がるのが健全で、変わらない会社は要注意、上がる会社はチャンスです。
縁故採用が先にあるので、競争率は激化するのが普通です。
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