さっそくですが、人事異動(personnel change)は会社員の楽しみの一つではないでしょうか?
私は毎月の唯一の楽しみくらいになっています。
人事異動の何に楽しみを見出す課は人それぞれでしょうが、私は人事異動に伴う変化に期待します。
そして毎回裏切られます(笑)
そんな?人事異動についてある会社の基本的な考え方をまとめました。
人事から聞いた話ではなく、人事異動が起きた時の背景を考えつつ、人事権を持ちそうな人から漏れ聞こえてきた情報をまとめたものです。
それでもかなりの精度だと思いますよ。
同じ事業所内での異動(personnel change)
人事異動にはいくつかのパターンがあります。
大手の化学プラントのような複数の事業所を伴う異動では、事業所の移動を伴うかどうかで話が分かれます。
まずは同じ事業所内での異動から。
このポイントは、人事権を持つ人が1人に固定されているという点。
工場長のような事業所の長が人事権を持っています。
同じ事業所の○○課から△△課に異動するという時、工場長から○○部長と△△部長に一言話をして「よろしく!」なんて丸く話が収まることが多いです。
収まるというか、拒否権がないというか・・・。
この異動の場合は基本的には製造部の都合が強いです。
- 製造部の○○さんが別の事業所に異動するから、補充を別の部署から出す
- プロセスエンジニアの△△さんに製造部の経験をさせたい
- 製造部の◇◇さんには工場全体を見る仕事をしてほしい
こんな感じですね。
製造部の経験をキャリアの一環として捉えて、ローテーションの枠組みとして入れているために、製造部以外のルートを通るタイミングに合わせて事業所内の異動はします。
引っ越しを伴わないので、スピード重視の異動ができます。
トレード関係の異動(personnel change)
引っ越しを伴う異動の場合は、トレードが基本です。
野球のトレードと同じ発想です。
同じ仕事をする部署で異なる事業所間でトレードをするというパターンです。
エンジニアの異動はこのケースが多いです。
○○工場で機械エンジニアリングをしていた人が、△△工場でまた機械エンジニアリングをする。
専門家としてのエンジニアのスキルを育てるために、別の事業所での設備にも振れて会社全体の幅広い設備の知識を習得して欲しいという狙いです。
10年もすれば大抵の設備はマスターできますから、マンネリ防止の目的もありますね。
エンジニア以外の場合は、職種も変わる異動が多いです。
とはいえバックグラウンドを考慮するので、いきなり畑違いの仕事をして苦労するというケースはあまりありません。
基本的には。
引っ越しを伴う異動の場合は、人事権を持つ人が2人以上居ることが普通。
トレード元とトレード先で人事権を持つ人が違うからですね。
だからこそ、異動が決まるまでには時間が掛かります。
3か月から半年は最低でも必要でしょう。
この辺は結構シビアな駆け引きがあって、優秀な人に対しては「1か月でも早く欲しい、1か月でも長く居てほしい」というような調整をします。
そうでなければ・・・言うまでもありませんね。
招集目的の異動(personnel change)
化学プラントでは招集目的の異動もありえます。
プラント建設レベルのプロジェクトや、新部署結成のような場合です。
外部の人を募集できるわけでなく、自前の戦力から人を出し合って組織を結成するケースです。
一般的には栄転と呼ばれます。
この場合は、事業所長よりも本社の偉い人が人事権を持って調整するでしょう。
スピードも必要なので、出し渋りをする部署を出さないためにも偉い人の一声が大事。
逆に優秀な人を出す部署ほど評価されやすかったりします。
中間管理職からは「現場のことを知らずに人を勝手に動かす部長」みたいな反感を買うパターンが多いですね。
左遷
いろいろな異動に紛れて左遷というケースも含まれます。
社内で左遷の情報がキャッチできればかなりの情報通でしょう(笑)
- 研究→工場への片道切符
- 子会社に出向して数年以上居続ける
- 40歳を越えて見込みがなくなった
研究→工場への片道切符は化学プラントではよくあるパターンです。
このパターンはいわゆる「研究者」のイメージが強いです。そして工場では苦戦します。
子会社への出向は上位の人事権を持つ人に強烈なダメを食らった人。
数年経って人事権を持つ人が変わっても、元の部署に戻らないということは左遷という情報が引き継がれている証拠です。
40歳を越えるくらいになるその人の素質の見極めが終わって、キャリアが決まってきます。
ここで役に立たないという烙印を押された人は、左遷されやすいです。
化学プラントの機電系エンジニアの場合は、定年まで同じ部署に居つづけられるケースも多いので目立ちにくいですが、実際には明確に烙印を押されます。
変な異動(personnel change)
大抵の異動は分かりやすいのですが、変な異動ってあります。
- 異動して数か月~1年くらいで別の場所に異動
- 特定業務のような仕事内容の変更
- トレードなしの一方通行の異動
これらの異動にもちゃんと背景があります。
基本的には個人の問題から来ます。
- 介護などの家庭の問題で実家に戻りたい
- 結婚して夫婦で同じ場所で暮らしたい
- パワハラなどの問題でその部署に置いておけない
- メンタルヘルスの問題で特定の仕事に特化させたい
どれも会社の育成計画から外れるという意味で、人事権を持つ人にとっては悩みの種となります。
下手をすると自身のマネジメント問題に関わりますからね・・・。
異動(personnel change)の頻度
異動の頻度について一般的なことを解説しましょう。
3か月に1度の大異動
異動は3か月に1度くらい大きな流れを起こします。
1月、4月、10月が分かりやすい例ですね。
年度で動く日本では4月の異動は分かりやすく、年で分かりやすく1月というケースもあるでしょう。
学校など半期で動くケースとして10月というのもキリがいいでしょう。
だいたい3か月がキリのいい数字なので、7月も異動が起こりやすいです。
引っ越しの都合?
そんなものは会社は考えませんね。残念ですが、事実です・・・。
1か月に1度の小異動
1か月に1度は小異動があります。
これは緊急性がある異動に限定されるでしょう。
毎月のささやかな楽しみですが、実際には大きな異動は1か月程度では起きません。残念。
異動(personnel change)に対する心構え
全社採用などでローテーションを前提とした社員はぜひとも異動に対する心構えはもっておきましょう。
気分転換
ローテーションは気分転換になります。
1つの場所にいると勝手も分かり、自分の好きなようにできる裁量もできやすいですが、マンネリ化するというデメリットもあります。
飽きるという個人的な問題ならまだしも、組織内でガン的な要素を生み出す可能性もあります。
横領的な側面だけでなくパワハラ的な側面も近年では課題になっています。
こういう温床とならないように、定期的に異動させようという考えですね。
新たな学び
異動は新たな学びの場として考えましょう。
- 別の地域の文化を知れる
- 会社全体を俯瞰するような思考が育つ
- 即適応する力が付く
長い期間1つの場所にいると、人間は適応力を徐々に失っていきます。
別の場所に行くことが怖くなります。
特に地方に長いこと居る人が、都会に行くには抵抗感が強いでしょう。
引っ越しがあると別の地域に強制的に移ることができて、異文化体験ができます。
国内でも引っ越しすれば十分に違う体験ができますよ。
1つの場所にいると、そこにある背景を当たり前のこととして捉えがちです。
これは仕事の本質を見る上で決していいことではありません。
別の場所に行くと、前の場所ではできたことができなかったり、違う方法を採用していたりします。
なぜこんなやり方をするのだろう?背景に何があるだろう?と考えて情報を集め、別の方法をていあんすることこそがローテーションの付加価値です。
ここで「〇〇の部署はダメだ!」的な思考はマイナス。
でもこういう人、多いですよ。
会社は育成は考えない
ローテーションに伴って必ず言われるのが「育成」
あなたの将来のことを考えて今異動してもらう。ちょっとの間は辛いけど我慢して欲しい。
- いろいろな部署を経験して人間的に成長して欲しい
- 最適な部署を探してほしい
- 思考の幅を広げてほしい
こんなことを言われるでしょう。
けど、ここで育成なんて会社はほとんど考えていません。
どれも後付けの理由です。
異動が必要な背景があってそこに都合よく適用できそうな人が居たから割り当てる。
こんな考え方です。
人事権を持つ人が外部から異動の必要性を求められ、異動先でも「病まずに堪えられる人」を探します。
そして異動を受けた人は耐えている間に、人事権を持つ人は別の場所に移ってします。
チキンレース、責任転嫁。
こんな単語がぴったり来ます。
右肩上がりは期待しない
人事異動で人事権を持つ人が責任回避をしたくなるには理由があります。
それは「誰も右肩上がりを期待していない」からです。
人材育成を考えるとき、初心者はこんなカーブを考えます。
初心者というか私がこう考えていました。
今よりも右肩上がりで成長させるイメージです。
- 人が入れ替わり先輩を越えるために、新卒者の人材育成も頑張らないといけない。
- 組織として成長し続けよう!
- DXなど新技術を導入して効率化しよう!
こういう話を聞いた時に、無意識に右肩上がりをイメージしてしまいますね。
でも、これは非現実的。
良くてもこのイメージが現実的でしょう。
定年と新卒の入れ替わりによって、一時はレベルが落ちるがそのうち昔を越える。
社内ではこういうイメージを持つ人が多いです。
でも実際はこれすら非現実的。
放っておくとレベルはどんどん下がるが、それを何とかして歯止めする。
これがおそらく正解です。
人事権を持つ人であっても少数の人が頑張ったからと言って、組織が活性化することは期待できないでしょう。
だからこそ問題を起こさずに定年まで迎えることに、人事権を持つ人は注力しがちです。
50歳を越えた人たちが考えることは、60歳までどうやって過ごすかだけですからね・・・。
ポジションが上でも下でも考えることは同じですよ。
最後に
化学プラントの人事異動に関する考えかたをまとめました。
事業所の異動を伴うかどうか・トレード目的・招集目的・トレード。これ以外にも変な異動があります。
マンネリ防止・視点の広さを持つというメリットはありますが、実態は会社の勝手な都合で異動することが多いです。
会社に依存しすぎると異動の時に受けるダメージは大きいですよ。
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