化学プラントの配管中に設置する配管部品として、年々増えていっているのがストレーナ(strainer)。
種類や使い分けについてまとめました。
ストレーナとフィルターを私は便宜上区別して考えています。
- ストレーナ 小型
- フィルター 大型
割と適当な使い分けですが、サイズで勝手に区分しています。
今回はストレーナです。
ストレーナを配管中に付けるときは付帯部品も含めてセットものとして考えます。
そうしないと思わぬトラブルを起こしかねません。
ストレーナは意外と危険
その意味でインラインの流量計と似たような感じですね。
ストレーナ(strainer)の構成
ストレーナの構成は下記のルールに則るのが一般的です。
労働安全衛生規則第272条第2号ただし書及び特定化学物質障害予防規則第16条第2号ただし書の装置について
この例には、ストレーナの取り外し作業のために4つの要素が必要であると述べています。
- 入口出口のバルブ
- ドレン抜きバルブ
- エアー抜きバルブ
- 圧力計
それぞれの部品とその目的を確認します。
入口出口のバルブ
入口出口にはバルブは必須です。
これらのバルブがないとストレーナの取り外しはできません。
少なくとも入口側は必須。
入口側に液がゼロになっている可能性は極めて低いからです。
出口側は条件付きですが、基本的に必須。
その条件とは、出口側のライン中の容器が空であること。
入口出口どちらもストレーナの直近にバルブがある方が、ストレーナの周辺の液抜きだけをすればよくて、より安全性が高まります。
バルブ1つで遮断するのは不安がある場合は、2つ直列でバルブを付けることも考えましょう。
ドレン抜きバルブ
ストレーナを取り外すためには、液抜きが必要です。
入口出口のバルブを遮断して、ストレーナ内部の液を抜くためにはドレン抜きバルブが必要です。
小型のストレーナでは、15Aや20Aもありますが、これはできるだけ大きい方がいいです。
私は25Aは欲しいと思っています。
というのも、取り扱っている物質の粘度・沈降性・閉そく性などが分からないから。
昔は15Aでよかったかも液抜きができたかもしれませんが、液抜き性状が向上する側にプロセス開発がされることはありません。
大きい方が無難だと思います。
ドレン抜きは、ハウジングの底面に付けるのが普通です。
まれに、側面についているパターンがあります。
底板に接して側面についている場合はまだ許容できますが、底板に接せず底板より100~200㎜浮いた側面にノズルを打つメーカーがあります。
これは完全に許容できません。
エアー抜きバルブ
ドレン抜きバルブを開けるときに、エアー抜きバルブを先に開けます。
そうしないと、ドレン抜きが適切にできないからです。
ペットボトルを逆さにして、水を抜く時を思い出してください。
ペットボトル内の水が外に出る分、空気が混入してこないといけません。
ここで水の流出と空気の流入が同時に起こり、脈動が起こります。
水ならまだいいのですが、特性が不明な化学薬品の場合、液が完全に抜けない可能性があります。
このままストレーナを取り外すと、ハウジングに残った液がストレーナとともに外部に露出して、薬液に触れてしまいます。
どれだけ洗浄してもハウジング内の液は完全に洗浄できません。
触れると危ないです。
そのリスクは極小化すべきです。
こちらは15Aや20A何でもいいでしょう。
できれば、ドレン抜きと同じサイズかそれ以上の方が好ましいです。
液体より気体の方が密度が低く、液体が抜けた量だけ空気が入ってきたとしてもドレン抜きとエアー抜きの口径が同じなら密度の高いドレン側の方が圧損が大きいからです。
圧力計
上の基準には、1次側か2次側のどちらかに、圧力計を付けることを推奨しています。
私はこれは基本的に反対。
1次側と2次側の両方に付けるべき。
また、1次側と2次側どちらかにしかつけれない場合は、1次側に付けるべきです。
難しく考える必要はありません。
台所のシンクやお風呂のごみ取りを考えればいいわけです。
ごみは1次側に溜まります。
入口出口のバルブを閉めてストレーナが詰まっている場合、1次側には高い圧力の液が残っている場合はがあります。
これをドレン抜きで確実に除去できることを確認するために、圧力計を付けます。
この圧力計が無くて、ストレーナを開けようとしたら内液が噴き出してきた!
なんてトラブルは1回や2回ではありませんね。
仮に圧力計の指示値がゼロでも内液が完全に居ないという証明にもならないのに。
現地圧力計で良いから絶対に付けたい場所です。
Y型ストレーナ(strainer)
Y型ストレーナは言葉どおりアルファベットのYの形をしたストレーナです。
Yの長手の部分にストレーナが入っています。
ストレーナの内側にプロセス液を通し、ストレーナをくぐって外側にプロセス液が出ていきます。
ストレーナで固形分が捕集されるという構図です。
ストレーナは円形の筒の形をしていて、表面に穴が開いています。
穴の形は色々。
円を均等に配置したパターンが多いでしょう。
パンチングメタルという表現をします。
穴の配置や穴の径でストレーナの性能を決めれます。
穴の合計面積が配管の断面積と同じ程度になるまで、ストレーナの筒を長くしておかないと圧力損失が出過ぎて液を後れなくなります。
Yの字にしてストレーナを長くしたいのは、圧力損失を考えてのことですね。
通常用
Y型ストレーナはあまり重要ではないけど、それなりに固形分を除去したいという場合に使います。
例えば以下のような場所です。
- 窒素
- スチーム
- 水
- 苛性ソーダ
プロセス中に投入するためにとりあえず一定の品質を確保したいという場合に付けます。
安価で大量のラインに設置することが要求され、Y型ストレーナを使います。
配管口径が25Aや40Aなど小型なので、点検清掃も簡単にできます。
消防用
消防設備用にY型ストレーナを使うことは一般にあります。
消防設備として例えば水噴霧消火設備などを考えればいいでしょう。
消火用水はため池にある水そのもの。ゴミだらけです。
この水を消防設備内に通すと、詰まります。
特に出口である水噴霧ノズルは断面積が小さいので、詰まります。
そうならないように、ストレーナを付けることが普通です。
消防法では、ストレーナの開口面積は配管断面積の4倍以上を確保することが要求されています。
この意味で、通常用とは別の管理をしないといけませんね。
消火設備は一般に口径が大きく150Aや200Aなどとなります。
こうなるとストレーナも超大型の設備となり、ストレーナーの取り外し・取り付けだけでもキツイ作業です。
バケットストレーナ(strainer)
バケットストレーナはY型ストレーナとは形が違うというだけです。
バケツ型をしています。
構造はシンプル。
シンプルだからこそ応用が効きます。
材質
バケットストレーナはシンプルな構造だからこそ、材質も色々作成できます。
一般的な炭素鋼・ステンレス系だけでなく、フッ素樹脂系も大丈夫。
化学プラントで腐食性の液中の固形分を除去したいというニーズは高く、プロセスラインのストレーナとしてバケットストレーナは重宝します。
掻取型
バケットストレーナは掻取装置を付けることができます。
キッチンのシンク内のゴミ取り装置を掃除する感覚にピッタリ!
ストレーナ内部にブラシをセットしておき、外部のハンドルと連結させてハンドルを回します。
これでストレーナのゴミを取って、逆洗をすれば異物除去はある程度可能です。
ハンドルを手動にするか電動にするかで選択が可能です。
大きなストレーナになるとそれだけで取り付け・取り外しが大変だから、掻き取り型は是非とも考慮したいですね。
洗浄
ストレーナがあるラインは洗浄を考えないといけません。
単純なブローをしても液が抜けないトラブルが多いです。
では、どうすればいいでしょうか?
ストレーナ(strainer)を取り外してブローする
ストレーナがブローの阻害原因になるのであれば、ストレーナを取り外したりバイパスラインに切り替える必要があります。
これができるラインであれば問題ありません。
ストレーナを取り外すと、液が漏洩したり、取り外して元に戻すという作業も発生し、製品量が少なくなったりするので、あまりしたくありません。
バイパスラインに切り替えるには、自動弁が必要になるので、そこまでコストを掛けられるか?という問題があります。
ポンプで別の洗浄液を送る
ストレーナで詰まる原因物を洗浄するという方法です。
これも洗浄液のラインが必要になったり、自動弁が必要であったりするので、適用できる機会は多くはありません。
ストレーナ(strainer)の出口にブローラインを設ける
ストレーナは使い続けるとゴミが溜まり圧力損失が高くなることで、液が送れなくなります。
ここで洗浄をしないといけません。
ストレーナには1次側に窒素のブローラインを付けることが多いでしょう。
でもこれだけでは不十分。
ストレーナの2次側にも窒素ブローラインを付けましょう。
逆洗の効果も期待できます。
参考
ストレーナは設備として扱う場合と配管として扱う場合の2種類があります。
配管としてとらえるパターンが多いと思いますので、配管の勉強の1つとして進めたいですね。
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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
化学プラントのストレーナについて解説しました。
ベント・ドレン・バルブ・圧力計の機能と、Y型・バケット型について記載しました。
洗浄方法としてのブローについても触れています。
製品保証・異物混入防止・配管閉塞防止などの機能を持っています。大事です。
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