プラント運転や設備制御は専門的で複雑に感じるかもしれません。しかし、実はその基本的な考え方は、私たちの日常生活の中にも似た動作が隠れています。
本記事では、「コップに水を注ぐ」という身近な動作を例に取り、機械エンジニアの皆さんにもわかりやすくプラントの制御の基本を解説します。これを理解すれば、プラントの運転や設備購入の際に役立つ視点が広がるでしょう。
機械エンジニアとして仕事をしていると、プラント運転とか設備の中で起こっていることとか考える機会がかなり少ないです。機械を購入する時には、設備の知識は絶対に必要ですが、勉強する機会がないというのは困ります。
蛇口の手前にコップを持ってくる
まずは準備段階です。
蛇口の手前にコップを持ってきましょう。
これはプラント運転では、設備やラインが完成していることを意味します。
蛇口が弁で、水道ラインはそのまま配管、コップがタンクですね。
この状態でも、いくつかの制御をしています。
初期条件の監視です。
- コップが空であること
- コップが適切な位置にセットされていること
- 水道の蛇口が閉まっていること
- 水道から水が漏れていないこと
プラントの運転でも初期条件のチェックをします。
- タンクが空であることを液面計で確認する
- 水ラインが複数に分岐している場合、他の場所で使用していないことを、占有状態から確認する。
- 水ラインの自動弁が閉まっていること
- タンク内に水が漏れていないことを液面計の変化量や流量計の変化量で確認する
どこまでを条件に設定するかは、プラントの特性などによって変わるでしょう。
液面計・流量計・自動弁があれば、かなりのことが可能ですね。
蛇口を開ける
さて、いよいよ蛇口を開けましょう。
蛇口を手で捻ることは、プラント制御上は自動弁を開にする作業となります。
占有権を持たせる場合には、自動弁が開いているという情報を、制御側に返すことになります。
家庭でのコップに水を入れるという例では、そこまではしないです。
ある程度入れる
蛇口を開けると、水がコップに入りだします。
ここでは無意識に以下の制御を行っています。
音や吹きだす量を見る
蛇口を開けたときに、流量を目で確認しています。
水が出るときの音や吹きだす量という形ですね。
プラントの運転では、流量計の値が変わることで確認します。
液面を見る
コップに水が注がれている様子を、目で確認します。
プラントの運転では、タンクの液面変化量を確認することになります。
コップが蛇口の下になければ、水が流れてもコップ内に水は入りませんよね。
流量計の指示値だけを見ていても、液面計が変わっていなければ、漏れている可能性があります。
流量計と液面計のダブルチェックは大事です。
液面計が設置されていない場合は、現地の目視確認が必須でしょう。
手に掛かる重さを感じる
コップに水が入りだすと、手に感じる重さが変わるでしょう。
水の量を、目以外の方法で感じることが可能ですね。
プラントの運転では、重量計などを設置することになります。
時間を図る
コップに水を入れながら、頭の中では時間をある程度カウントしています。
そろそろ入れ終わる時間だろう、と。
これと同じことを、プラント運転ではタイマーに監視してもらいます。
弁を開いても、流量計や液面計の値が変わらなければ、ずっとそのままの状態になります。
ところが、タイマーで一定時間経てば弁を閉めたりアラームを出すということが可能です。
蛇口を閉める
水が入ったので蛇口を閉めましょう。
プラント運転では弁を閉める操作になります。
ここで、弁を閉めるのはいつでしょうか?
- 流量計の積算値が一定値を越えれば、弁を閉める
- 液面計や重量計の指示値が一定値を越えれば、弁を閉める
- 時間が一定値を経過すれば、弁を閉める
人がコップに水を入れる場合は、この辺り適当にしています。
プラントの制御上は、上記3つのどれかが成立すれば、弁を閉めるという操作になるでしょう。
最終的な量を調整する
蛇口を閉めた後、コップの水量を確認するでしょう。
ここで量が足りなければ、再度水を入れます。
量が多ければ、水を捨てれば良いですが、プラント運転ではそうはいきません。
だからこそ、少し少なめに投入して、後で追加するという方法を取ることは可能です。
溶媒などを一定量入れる場合にはここまでしませんが、反応の液を入れる場合には、これに近い操作をします。
弁を閉めて、一定時間が経過し、液面計の指示値が安定した後で、指示値が一定量以上であること確認する。値が少なければ、再度投入をする。
という操作になります。
この場合、流量計や時間による判定は難しいので、液面計での再判定か手動での作業となるでしょう。
参考
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最後に
プラントの制御は難しく感じますが、身近な「コップに水を注ぐ」動作に例えると理解しやすくなります。初期条件の確認、流量の監視、時間管理、そして停止操作の4つのステップを意識することで、機械エンジニアとしてプラント運転の基本を掴めるはずです。
この考え方は設備の購入や運転時のトラブル対応にも役立つため、ぜひ日常生活の中でも意識してみてください。
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