化学プラントで使用されるスチームトラップは、ディスク型やフロート型など基本的な種類であっても、周囲の配管構成次第で性能や安全性が大きく変わります。経験だけで組んでしまうと一見うまくいっても、緊急時やトライアル時に対応が難しくなることがあります。
本記事では、基本形・集合形・特殊形の3つの代表的な組み方を解説し、それぞれのメリット・デメリットや運用上の注意点を紹介します。他にも組み方は考えられると思います。
基本形
まずは基本形から見ていきましょう。

トラップはバイパス配管とセットで組みます。運転開始前には配管内に錆などが溜まっており、これをトラップラインに通してしまうと、詰まって誤作動や作動停止などのトラブルが考えられます。バイパスラインはブローの目的を持ちます。
トラップ側とバイパス側それぞれ単独で作動ができるように、1次側にバルブを付けておきましょう。2つのラインそれぞれ、排出先は大気(排水溝)をイメージしています。
トラップが故障した場合には取り外す必要がありますが、その場合でも運転をするためにはバイパスラインを開けて使うことも検討対象になるでしょう。ただし、ユーザー側の使用圧力は下がり、スチーム消費量は大きくなるので、採用は慎重にしましょう。トラップの予備を持っておき、定期的に交換することが大事です。
集合形
基本形に近い形ですが、トラップラインとバイパスラインを集合させる場合があります。

この方法を採用する場合として、以下のようなケースが考えられます。
- トラップ出口から排水までの配管をできるだけ少なくして、スペースを確保したい
- ドレンをできるだけ回収したり、別用途に使用したい
- 連続使用など、ドレン排出先を運転中に変えたくない
私の職場では、この例はあまり使ったことがありません。ドレンを回収して温水などに活用する場合には、使えます。
配管トレース用など、使用量が少なくサイズが小さい時にも使えます(小さな配管だと詰まりやすいので)。トラップラインから漏れているのかバイパスラインから漏れているのか、分かりにくく手で触るなど火傷のリスクがある作業が発生します。
この派生形として、多くのトラップを集合させることも考えられますが、1つ1つのトラップの故障が分からなくなるので、採用するには慎重に検討しましょう。
スチームを使うという目的から考えると、作動しない状態は危ない可能性があり、スペース程度の問題であれば、配管設計者の工夫の範囲で解決できることもあります。
特殊形
特殊形として、集合形をさらに枝分けした例です。

これは洗浄など特殊な例のときだけ、ブローができるようにしたものです。基本形や集合形で代用できる場合も多く、私も数回しか組んだことがありません。バルブが多くなると誤操作の元となり、排出ラインのバルブを全て閉めることも起こりえます。詰まったり漏れたりするリスクもあがります。
参考
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最後に
スチームトラップの配管設計は、以下の点を意識することが重要です。
- トラップとバイパスの2ラインは必ず用意する
- 配管構成はできるだけシンプルにする(基本形推奨)
- 集合形や特殊形は用途やスペース、ドレン活用など目的に応じて採用
- バルブ操作や故障判定の容易さを考慮する
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