はさまれ巻き込まれ(entanglement accident)について考えます。
製造業にいたら嫌というほど耳にする単語。
設備を設計する生産技術者なら、設備面でできる対策は常に考えておかないといけませんね。
特に回転機械は要注意。
回転機械のはさまれ巻き込まれ対策といってもできることはとても多いですが、初心者向けにポイントを解説したいと思います。
このポイントを理解してから個々の検討を行えば良いでしょう。
近寄らせない
はさまれ巻き込まれ対策の絶対原則と言っていいでしょう。
人を回転部に近寄らせない
回転している部分に人が接触するから、はさまれ巻き込まれは発生します。
であれば、近寄らせないことは本質的な対策となります。
ですが、これが難しい。
人が機械に触れない
人を回転部に近寄らせないためには、人が機械に触れないような対策が思いつきます。
典型例が安全柵
柵の内側に回転機械があって、人が物理的に近寄れなくします。
鉄板のカバーで覆いたいところですが、機械の動きが見えなくなるので、網などで柵をつくります。
そのためにはかなりの空間が必要になるので、化学プラントのような狭い工場ではほぼ実現できないでしょう。
電車のホームに最近ついているカバーやロープもこの発想ですね。
機械に触れるけど回転部に触れない
安全柵のように機械全体を覆うことはできずに機械の外面に触れざるを得ない場合はとても多いです。
この場合でも、はさまれ巻き込まれを起こさないために、回転部だけはガードしようという発想があります。
典型例が安全カバー
回転部の周りにカバーを付けて、人や体の一部が回転部に近づけないようにします。
鉄板のカバーを付けたいところですが、回転機械によっては空気による冷却ができ無くなるので注意しましょう。
プラント内のポンプなどが典型例です。
パンチングメタルのように中が見えたり空気の通り道があるような構造にしましょう。
微妙な開口部ができてしまいますが、人が近づけないようにするために、開口部の大きさが設計ポイントになります。
化学プラントで安全カバーを付ける場合は、回転部のすぐ近くが多いので、人間の体で小さな部位である指が通らないような穴が理想的です。
指が通るサイズが難しい場合は、手が通らないサイズにして手の長さよりも大きなカバーにします。
こうやって開口部のサイズとカバーの大きさには一定の関係ができあがります。
安全柵はその最大ケースで、体全体がすり抜けられず体の一部がすり抜けたとしても回転部に絶対に接触しないという条件で来ます。
近寄ると勝手に止まる
回転部に接触すると機械を強制的に止めてしまうということは、はさまれ巻き込まれの対策になります。
インターロックなどの名前で一般的です。
リミットスイッチで物理的に遮断
インターロックの基本は、リミットスイッチと言っても良いくらいです。
安全柵や安全カバーにリミットスイッチを付けてしまい、開けるときにはインターロックを作動させて機械を止めます。
この方式は遠心分離機などの危険性の高い回転機械には、一般的に採用されています。
リミットスイッチをテープなどで強制的に固定して、作動させなくするようなケースもあるので注意しましょう。
レーザーなどで間接的に遮断
リミットスイッチのような物理的な手段ではなくて、レーザーなどの間接的な方法で遮断することも考えられます。
物理的な手段ではなくなるので、信頼性は少し落ちます。
この方法を使っても良いですが、それだけに頼り切らないようにしましょう。
最悪の一歩手前で止める
安全カバーを付けていても外す、リミットスイッチを付けていても解除されてしまう。
こういう場合にも、はさまれ巻き込まれを防ぐためには手動の緊急停止ボタンがあります。
設備によってはこの方法に頼らざるを得ない場合もあるでしょう。
部分的にははさまれ巻き込まれが起きてしまうので、最悪の一歩手前で止めることになります。
できるだけ使いたくないものの、もしものために準備しておきたいですね。
表示する
カバーを付けたり、リミットスイッチを付けていたとしても、緊急停止ボタンをつけるほどではない。
こういう中途半端な構造も割とあります。
リスクアセスメントをして許容せざるを得ない場合ですね。
その場合は危険表示や標識をするという対策になります。
何もしないよりは発生確率を下げることができるので、積極的に表示しましょう。
化学プラントでも表示はごく一般的に行われていて、表示だらけになっていたりします。
参考
はさまれ巻き込まれは残念ながら古くからある事故の型です。
技術が進歩しても基本は変わりませんので、以下のような本で基本を学ぶのも良いかもしれませんね。
関連記事
はさまれ巻き込まれの対策は、特に製造業ではとても大事です。
さらに知りたい方は以下の記事をご覧ください。
最後に
化学プラントの回転機器に対する、はさまれ巻き込まれのポイントを解説しました。
安全柵は難しいけども安全カバーは一般的に行います。
重要な設備にはリミットスイッチなどを設けます。
どんな場合には表示や標識は有効なので、できる限り付けていきましょう。
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