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土建設計

化学プラント室内の換気はどうやって設計するの?

換気フィルター 土建設計
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化学プラントで部屋を付けた時の、換気(ventilation)の考え方を解説します。

運転上とても大事な考え方で、単に熱いという以上の安全上の問題があります。

医薬関係など厳密な封じ込めが必要な場合なら当たり前のことでも、一般的な化学工場ではそうでもなかったりします。

建屋建設などのプロジェクト段階で考えることでありながら、意外と疎かにしやすい部分なので、本記事の内容を知っているだけでも重宝されます。

壁による空間的な遮断

そもそも部屋とは何のために存在するでしょうか?

私は簡単に言うと空間的な遮断だと思っています。

周囲の空間から遮断することが主目的。

  • 家庭であれば生活環境やプライバシーの確保など
  • 化学プラントでは外部への飛散防止など

化学プラントでよくある薬液の充填を見てみましょう。

拡散(ventilation)

ドラム缶に液体や粉体を詰め込む作業です。

液体や粉体の薬液は、人体や環境に有害の物が多いです。

ここで壁を付けていないと、風によって拡散されます。

これは作業員の衛生面でも問題がありますが、地域住民への健康被害の面でも問題になりえます。

壁を付けると風による拡散効果が無くなるので、集気しやすくなります。

壁あり(ventilation)

こういう対策を取るのが基本的。

有機溶媒の場合は、爆発性雰囲気を即座に希釈するという目的で壁を嫌がるケースがあります。

可燃性ガスが滞留するのを嫌います。

部屋と換気(ventilation)

部屋を密閉化してしまうと、危険物の滞留や酸欠など悪い影響がでてきます。

それを防ぐために換気をします。

一般的な部屋の換気システムを示しましょう。

換気システム(ventilation)

簡単にいうと家と同じです。

  • 換気扇で部屋内の空気を外に排気
  • 窓や扉の隙間から吸気

扉には吸気を積極的に行うためのガラリを付けることもあるでしょう。

ガラリ(ventilation)

ガラリは純粋な隙間をつくることになるので、異常時に遮断できる仕組みを付ける場合があります。

手動・自動いろいろな方法でガラリを止める装置が考案されています。

化学プラントでガラリを止めざるを得ない場合というのは、相当な緊急状態なので手動でガラリを止めるというのは勇気がいります。

できれば自動の方が好ましいでしょう。

保護具を適切につけて現場処置をするのは変わらないから手動でも良いという発想もありますが・・・。

換気(ventilation)回数

換気では換気回数という概念が大事です。

換気回数は換気風量/部屋容積で決まる数値です。

50m3の部屋に200m3/hの換気扇を1基付けた時の換気回数は

200/50 = 4 回/h

という計算をします。

この回数が部屋の使用用途によって大きく変わります。

化学プラントの充填目的の場合は、5回~10回程度で設計します。

というのも以下の条件があるからです。

充填目的の換気回数
  • 作業員が一日の数時間しか部屋にいない
  • 部屋には作業員は1~2人
  • 飛散物を適切に集気排気できる設備がある
  • 水蒸気やガスは積極的には発生しない

発生ガス量が多いかどうかを1つの目安にすると良いでしょう。

防爆設計でも換気は基本的な設計要素になっていますね。

装置が適切にシールしてあり、配管もガスケットでちゃんとシールできていれば、危険物の漏えいのリスクは非常に少ないです。

換気回数はエアコンの設計でも重要な概念です。

フィルター

換気に付随してフィルターは必須の概念です。

改めていうまでもなくとても大事な発想。

というのもフィルターが無いと壁で囲った意味の一部を失ってしまうから。

フィルターの種類

フィルターは目開きが主な仕様になります。

目開きが小さいほど、細かい粒子をキャッチできる優れもの。

その代わり抵抗が増えるので動力アップの要素となります。

化学プラントレベルでは、中性能フィルターHEPAフィルターを認識していれば良いでしょう。

  • 通常なら中性能フィルター
  • 厳密にキャッチしたい場合はHEPAフィルター

これくらいの定性的な理解で十分です。

拡散防止の場合

排気フィルター(ventilation)

地域住民などへの有害物の拡散を防ぐ意味で使う意味の部屋では、排気側にフィルターを付けます。

フィルターを付けていないと、部屋に充満した危険物を積極的に外に出すことになります。

壁を付けて風が来なくなる分だけ、集気しやすくなって拡散効果が抑えられるという程度の扱いになってしまいます。

フィルターはちゃんと付けましょう。

陽圧室の場合

排気側にフィルターを付けるという発想が工場レベルでは多いですが、計器室など付帯設備では旧木川にフィルターを付けます。

排気(ventilation)

これは内圧室の発想。

部屋を陽圧にしておいて、可燃性ガスが部屋の中に入ってこないようにします。

部屋の中に入ってこないことが目的なので、部屋の吸気用ファンの入口にフィルターを付けます。

計器室の屋上にはファンとフィルターが付いていますが、建設時以外は注目しにくい部分ですね。

参考

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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

化学プラントで部屋と換気に関する一般的な考え方を解説しました。

危険物など外部拡散を防止するための壁が一般的。

他には計器室など家と同じような視点で壁を付けることもあります。

換気回数が1つの設計要素。

換気扇の付け方とフィルターによって、部屋外への拡散防止と部屋内への取入防止に思想が大きく分かれます。

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