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電気設計

プラントの危険区域の精緻な設定方法を少し計算してみた

危険区域計算 電気設計
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化学プラントの設計をしていて、最も悩み諦めざるをえないことに、防爆があります。

このせいで、いろいろな技術導入が遅れ、コストや納期の問題も出てきます。

安全を守るために仕方がないとはいえ、何とかならないものかと考える人は多いでしょう。

そんな中で、防爆設計に関するガイドラインが出ています。

すでに検証して採用している会社も多いでしょう。

逆に、私の所属会社のように、昔ながらの定数で防爆範囲を決めている会社の方が多いと思います。

すぐに使うわけでなくても、実際にガイドラインを使ってみて、どれくらいのオーダーの結果になっているかは、感覚として知っておいてそうはないでしょう。

実務でそう感じたので、試しの計算と検証を少ししてみました。

以下の資料を参考にしました。

プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン

https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/hipregas/files/20200121_1.pdf

事例2 溶剤蒸留工程(シクロヘキサン、液放出)を題材にします。バッチでは危険物ガスの漏洩というケースがそもそもほとんどないので、検討対象から外します。

開口部面積Sの違い

開口部面積は、漏れの考察とシールの種類で決める値です。

S=0.025,0.25,2.5の3つのケースで振ってみました。

開口部面積S0.0250.252.5
放出特性0.00160.01620.1620
換気度高換気高換気中換気

開口部面積Sは放出特性に比例で効いてくるので、結果は当たり前となりました。

換気度が高から低に落ちるのは、S=2.5mm2でした。

この値は、低速作動のシーリングエレメントで、放出開口部が拡大可能な条件の典型的値(例:エロージョン)という条件です。

パトロールなどで漏れを早期発見する場合には、開口部が拡大する前に解決するので、もう1つ左の列の弱い条件で考えて良いと思います。

そうすると、S=0.25mm2が上限となって、高換気の結果を得る頻度が高いだろうと期待できます。

放出定数Cdの違い

事例では放出定数Cdは0.75ですので、高い側の0.99も見ておきましょう。

放出定数Cd0.750.99
放出特性0.00160.0021
換気度高換気高換気

開口部面積Sと同じで、放出定数Cdも放出特性に比例で効くので結果は当たり前です。

放出特性が大きく変わるわけでなく、事例の範囲内では高換気です。

放出定数はあまり気にしなくても良いのでは?と思います。

安全を考えるなら0.99を採用する方が無難ですね。

安全率kの違い

安全率kは0.5の場合も見てみます。

安全率k10.5
放出特性0.00160.0032
換気度高換気高換気

結果はこれまでと同じ比例関係。

高換気という結果に変わりはありません。

気化率の違い

気化率は極端なケースを見ておきましょう。

液体ではプロセス温度が気化率とリンクしていると考えましょう。

気化率1090
放出特性0.00160.0146
換気度高換気高換気

結果は比例関係でこれまでと同じ。

開口部面積Sと気化率は結果にダイレクトに効きますね。

10倍×10倍=100倍で、中換気という結果になります。放出特性0.146m3/sだと、重いガスの場合で、危険距離が2~3mとなります。

3mも距離を取れば十分だと判断できますね。会社の発想だと、もう少し余裕を見て5mで一定という感じでしょうか。

プロセス圧力の違い

事例では1.1MPaという高圧(私としては)なので、もっと低い値を見ておきましょう。

プロセス圧力MPaG10
放出特性0.00160.0005
換気度高換気高換気

計算式は√で効くので、結果は当然のものです。

圧力が低いと放出特性も急に下がります。

バッチだと0.3MPa程度なので、放出特性は0.0010程度でしょう。

放出特性の目安

非防爆設備が使えるかどうかの判定は、放出特性と換気速度で決まります。

換気速度はプラント内なら0.1m/s程度で考えておくと安全でしょう。

この場合の、高換気と中換気の境目となる放出特性は0.007m3/s程度。

これまでの結果をまとめます。

開口部面積Smm20.0250.025で固定
放出定数0.750.99が安全側
安全率10.5が安全側
気化率10物質とプロセス温度に依存
プロセス圧力MPa1.10.3程度
放出特性0.00160.007が閾値

危険距離の目安

放出特性は気化率だけが変数となるイメージです。

放出特性の目安と気化率という目安ができたら、危険距離を見積もっておきましょう。

高換気かどうか(非防爆設備が設置可能かどうか)を判定するだけでなく、中換気であっても危険距離内に入らなければ非防爆設備を設置できることになります。

距離が短い方が、設置上の制約が無くて助かるのは言うまでもありませんね。

先の条件で、放出特性が10~30くらいなら高換気になりそうです。30~90でも放出特性は0.02m3/sですが、危険距離は2mもありません。

条件の振れと、設置位置や設備の構造の振れを考えると、5mも取っていれば十分でしょう。

さらに短い距離で設置したいなど、検討が必要な場合は個別に実施しましょう。

参考

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最後に

プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドラインを少し検討してみました。

内容物や運転条件による部分は多いですが、非防爆設備の使える範囲は広がっています。

詳細検討に時間が掛かるので気おくれしている人もいらっしゃると思いますが、それなりの余裕を見ても5mもあればかなりの条件で包含できる気がします。

化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)

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