プラント設計ではエレベーション(level)をちゃんと設計することはとても大事です。
設計のかなり初期から決める事項です。
エレベーションを決めることはプラントの寸法を決めるほか、設備の大きさや配管のルートなど設計の多くの場面に影響を与えます。
機械設計エンジニアなら土建・電気・計装のエンジニアと取りまとめをするために、知っておく方が良い知識です。
もちろん、土建エンジニアもプラント構造物としての高さには興味があっても、プラントを構成する他要素との関係として知っておいた方が良いです。
さらに、電気や計装のエンジニアもプロセスエンジニアも周辺知識として理解したいですね。
高さ(level)基準GL
最初に高さ基準について考えましょう。
一般にGL(Ground Level)と呼ばれています。
地面の高さというニュアンスで、レベル基準としてよく登場する単語です。
こんな風にタンク・ポンプ・配管などが並んだプラントで地面(人が歩く場所)をGLと呼びます。
すでに出来上がった設備回りを歩いていると、これらの設備はすべて同じ高さにあると錯覚するでしょう。
街中でも坂道など極端な場所以外は、平坦な道で同じ高さにあると思い込んでしまいます。
ですが、実際には地面には勾配があります。水平ではありません。
例えば、下の図のような感じで斜めに傾いているシーンを想像しましょう。
地面が傾いているということは、高さ基準としてGLを選定することは難しいでしょう。
この場合には、地面以外のどこかを基準にすることを考えます。
水平を意識して作られた場所で、一度作るとそんなに簡単には変わらない部分、が理想的です。
代表例が土木建築の部材です。
防油堤・タンク基礎・配管スタンドなどが分かりやすい例。
これらをEL(Elevation Level)として設定します。
配管スタンドをELとして設定した例です。
ELからどれだけ下の場所にあるか、という意味でEL-●●●という表現をしていくことになります。
防油堤内の土間などはGLやレベル基準を設定することは控えましょう。
土間は水勾配を付けることが普通です。
水勾配分だけ土間の高さが変わるので、見た目上のタンク高さはタンクの方位によって変わります。
機械設計においてタンク高さを指定する場合、一般には最小高さを指示することになるので、最大高さ側の影響を把握しておかなければいけないでしょう。
配管高さ(level)
次に配管高さを考えましょう。
配管の位置を指定するときに、TOP/COP/BOPという表現を使います。
配管が円形であるため上・中・下のどこかを指定する用語です。
一般にはCOPで配管図などに指示することが多く、意識する機会は少ないでしょう。
BOPは使う場合が少しはあります。
スタンドが良い例ですね。
スタンド上に配管を置く場合に、レベルを記述しようとした例です。
スタンドをEL(スタンドの天板)とした場合、配管のBOPはELと等しい関係にあります。
ここで、フランジは考えていません。
例えば、断熱を付ける場合には、シューなどの部材をスタンド上に設置します。
シュー高さが150mmの場合は、配管のBOPがEL+150という表現になります。
梁高さ(level)
最後に、梁高さを考えましょう。
配管図上では普通はTOB(Top Of Beam)しか登場しないと思います。
梁の天板の位置を表現するときの専門用語ですね。
例えば、プラント高さを決めるときに梁高さを基準に考えます。
1FLはコンクリート土間で作られていて水勾配があるから、どこが基準かわからないという状態考えます。
ここで2FL以上の高さはどうやって指定しましょうか。
梁もしくは床で指定するでしょう。
梁を水平に設置することが普通なので、梁の位置がプラントの高さを決める指標となります。
高さとしては天板側のTOBとして指定します。
梁から直接床を張ったり、根太を間に設置したり、根太の大きさを変えて床勾配を付けたり・・・とパターンがいくつかあります。
それでも床をレベル基準にするよりは、梁をレベル基準にする方が間違いが少ないと思っています。
BOB(Bottom of Beam)は表現としては見たことがありませんが、プラント設計上は大事な発想です。
反応器のような大きな設備を据え付けたり、重量物を吊り上げるホイストを設置する場合には、梁の下端からどれだけスペースがあるかを追い出していきます。
参考
プラントエレベーションは建設段階でとても重要なはずなのに、意外と軽視されています。
その結果、詳細設計段階や運用段階で色々な人が苦労します。
しっかりと理解するには、プラント建設に関する幅広い知識が必要になるでしょう。
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最後に
プラントのエレベーションを決めるための基本的な用語と考え方を解説しました。
GL/ELやTOP/COP/BOP/TOBなど意味を知れば難しくないと思います。
それがどこのことを示しているのか、どこが水平でどこが勾配があるかという目線でイメージができれば、レベル基準の大切さを実感できるでしょう。
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