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土建設計

パイプスタンドの強度計算と長期荷重・短期荷重

パイプスタンドと長期短期 土建設計
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パイプスタンドの強度計算について解説します。

長年使っている化学プラントでは、当然ながらパイプスタンドがたくさんあります。

当たり前のように設置されていて、設計手順はすでに確立されていて、簡単にできる当たり前の構造物だと考えられてしまいます。

実際にはそうではなく、考え方は都度レベルアップしていきます。

パイプスタンドとパイプ

パイプスタンドにはパイプが載っています。

スタンド荷重

この手のタイプは、化学プラントでは本当によく見かけます。

シンプルな構造ですね。

パイプを支えるだけのパイプスタンドなので、一見簡単そうに感じますが、強度計算をするうえではいくつも考えないといけません。

どういったことを考えないといけないか、解説します。

長期荷重

パイプスタンドに関わらず、「構造物」というジャンルにおいては、長期荷重短期荷重を考えます。

長期荷重と短期荷重の簡単なイメージは以下の通り。

長期と短期

言葉からイメージできる部分も多いですが、長期荷重と短期荷重の例をいくつか紹介しましょう。

長期荷重:長期的(常時)に加わる重量。パイプスタンドの場合はパイプの重量が該当

短期荷重:短期的(瞬間)に加わる重量。パイプスタンドの場合は風や地震が該当

パイプの重量

長期荷重の例として、パイプの重量を少し掘り下げます。

パイプの重量は以下の3つに分類できます。

長期荷重

空重量としてのパイプの重量は、材料そのものの重量です。

これはとても分かりやすいですね。

パイプの重量 = パイプの単位長さ当たり重量 × パイプ長さ

細かく計算するなら、フランジ・エルボ・ボルトなども加えていきます。

直管パイプの重みだけを考えると不足しがちなので、フランジ接続を基本としているプラントであれば、フランジの重みを入れておきましょう。

5mに1つフランジを付けるとして、5mごとに2個のフランジがあるというように簡単に考えましょう。

保温の厚みも空重量として分かりやすいですね。

保温の重量 = 保温の単位長さ当たり重量 × 保温長さ

パイプも保温も、数と大きさに依存します。

パイプスタンドの幅や段数と平均配管口径から、パイプスタンドに載せることができる配管重量を計算します。

最大許容荷重 = パイプ数量 × パイプ口径

例えば、スタンド幅2mで、パイプ平均口径50Aなら、パイプどうしの間隔0.15mとして、1段辺りに積載可能なパイプ数は2/0.15≒13本となります。

後は、スタンド段数で掛け算すれば良いですね。

例えば、50AのSGPなら、パイプ重量5.31kg/m、フランジ重量1.86kg/個なので、スタンド間隔5mとしたときの、1本のパイプ重量は5.31×5+1.86×2=30.27kg

内容物が水として、液重量は3.14/4×0.0529^2×1000×5=10.98kg

となります。足し合わせて、30.27+10.98=41.25kg。

スタンドが2段あるとして、13本×2段=26本のパイプを乗せることを考えましょう。

41.25×26=1072.5kg→1ton

が長期荷重となります。

雪の荷重

冬季に雪が降る地域では、雪の荷重を計算に含める場合があります。

例えば、積雪深さ20cmの場合は、0.2m×1000kg/m3=200kg/m2の圧力がスタンド梁に加わるとして計算します。

梁の大きさによって荷重が変わるので、繰り返し計算をすることになりますね。

満水かどうか

液の重量を満水として考えましたが、プラントやスタンドの特性によっては、これを短期荷重として考える場合があります。

つまり、液が主体のプラントではなくガスが主体のプラントの場合、通常の運転ではパイプ内はガスが通っていて、水圧試験などの特定のタイミングだけ水を張ることになるからです。

何が通るか分からない、増改築が多いなどの場合には、安全側である液体が通るとして考えておく方が良いでしょう。

液比重はたいていの場合は平均値に近い水で考えれば良いですが、比重が重たい液の割合が多い場合には、比重を多めにしておくと良いでしょう。

短期荷重

短期荷重としては風や地震荷重が代表例です。

地震が大きい

日本では地震による短期荷重がとても大きな要素を占めます。

ここでは、そんなものだ、という理解していてください。

水平震度

地震荷重の計算は、水平震度として考えます。

危険物タンクの設計の考え方を使っています。

横揺れである水平地震が構造物であるスタンドに伝搬して水平震度として計算することになります。

重力加速度×係数いう式になります。

水平震度

0.15というのは与えられた係数で、v1やv2などの変数が乗ってきます。

  • v1 地域別補正係数(0.7、0.85、1.0)
  • v2 地盤別補正係数(1.50、1.67、1.83、2.00)

地域や地盤の特性に応じて、値を選びましょう。

私は安全側に見て、最大値であるv1=1.0、v2=2.00でみて、水平震度=0.3(0.15×1.0×2.00)でよく考えています。

危険物タンクで特定タンクや準特定タンクの場合には、タンクの固有振動の影響を考えます。

固有振動

タンク自身が固有振動数を持っているため、地震による複雑な振動数のうちでタンクの固有振動数と一致する成分により、タンクが共振を起こします。

この影響を代表的な係数として表したものがv3です。

1.0~2.2の範囲で変わることになりますが、私は最大値である2.2を使っています。

共振を考慮した水平震度=0.66(0.3×2.2)

この辺りは設計者の思想が出てくる部分でしょう。

鉛直震度

鉛直震度は水平震度の1/2と消防法令で定められています。

計算上は可能ですが、水平震度の計算の方がシビア側に出るでしょう。

許容応力

強度計算の判定条件は、許容応力です。

梁のたわみ計算を行って、曲げ応力を計算した後、以下の判定条件と比較します。

  • 長期許容応力度 156N/mm2
  • 短期許容応力度 234N/mm2(156×1.5)

梁の部材の大きさを選定して、曲げ応力<許容応力度となるように設計します。

許容応力度は鋼材の許容圧縮応力ならびに許容曲げ応力として規定されています。

細長比=0(柱ではない)として考えれば良いでしょう。

短期許容応力は、長期許容応力の1.5倍として考えています。

柱の計算は、細長比に応じた許容応力度を選定することになります。

参考

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最後に

パイプスタンドの強度計算と長期荷重・短期荷重について解説しました。

専用ソフトを使わずに手計算で出来るレベルですが、どの値を使えばいいか分からずに真面目に計算しようとすると苦労します。

その結果、既存のスタンドと同じ部材を使う、もしくは1サイズ上げるというような、アナログな対応になってしまいがちです。

既存スタンドで一度計算してみて、不足してそうなら強化していきたいですね。

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