マテリアルハンドリング(material handling)、いわゆるマテハンについて解説します。
化学プラントの機械設備設計エンジニアをしていて、明確な解答がなく悩む課題トップ5に入るのが、マテリアルハンドリングの作業性。
建設時は関係ないように見えますが、いざ運用しだすととても問題になります。
とはいえ建設後に改造しようにも、制約が大きすぎて対策を取りようがなかったりします。
工場のマテハンについて大事な要素を解説します。
マテリアルハンドリング(material handling)とは
マテリアルハンドリングとは「マテリアル(物質)」の「ハンドリング(操作)」のことです。
物質を移動させる作業として物流業界で使う単語です。
これが転じて化学プラントでも使用します。
化学プラント的には手動作業の典型例としてマテハンが取り上げられます。
特にバッチ系では粉体が多いですね。
液体も廃油などがあるのでゼロではありませんが、相対的には少ないですね。
これらの作業を主にプラント内で実施します。
重労働
マテハンは化学プラントでは重労働に位置付けられます。
実際に人がマンガの世界や発展途上国で見られるような直接重い荷物を持つシーンはほとんどありません。
例えば、ドラム缶ならドラムポーター・フレコンやファイバードラムならパレッターを使い省力化しています。
それでも重労働と位置付けられます。
例えばドラム缶やファイバードラムに物を詰めた状態で人手で運搬していると、靴の上にドラム缶を乗っけてしまうなどの重篤なリスクを持ちます。
ドラム缶を傾けるだけでも体重を掛けないといけず、力が必要ですよね。
世間一般の建設業などから見たら重労働に位置付けられないかも知れませんが、業界によっては重労働に位置付けられます。
ましてや少子高齢化が進んでいる日本では、今後の自動化は避けられないでしょう。
というより、積極的に投資しないと作業員が集まらない展開が予想されます。
高さ
マテハン作業の自動化には建屋の高さが必要です。
マテハン作業を省力化・自動化しようとすると専用の設備が必要です。
重量物の吊り上げを想定した設備が必要です。
これは思った以上の設備高さが要求されます。
最低でも5m程度と考えるべきです。
これ、結構ハードルが高いです。
というのも、化学プラントで1つのフロアを5m以上にすることは普通はありません。
配管やラックが張り巡らされているからです。
機械工場などのように天井が高く、トロリーホイストが自由に動く環境ではありません。
この当たり前の現実に気が付かない化学プラントエンジニアや管理者がとても多いです。
マテハンメーカーを呼んでみると一発で分かります。
彼らが現場を見る前後でのリアクション。
現場を見る前は受注する気マンマンの営業担当者も、現場を見た後は絶句・・・!
その後はいくら問い合わせても、無視されます。
工場のTPMで作業場を改善しました!という案件が極めて限定的ですよね。
これって化学プラントでマテハン作業を自動化できる要素が少ないことを意味しています。
プラント設計に直結
マテハン作業の自動化に高さが必要となれば、プラント建設そのものに関係するでしょう。
特に重要なマテハン作業には、以下のような対応が必要です。
- 配管や設備を周囲に張り巡らさない
- 建設高さや作業空間に余裕を持たせる
- プラント建設段階からマテハンメーカーとやり取りをする
プラント建設段階では忙しくて、マテハン作業を真剣に考える人は結構少ないです。
一度プラントを建ててしまうと、30年~40年と建て直すことはありません。
最初にしっかり検討しないと、30~40年の製造部の作業者に重い負担を強いることになります。
製造部の管理者が後々悩む問題で。それに釣られる形で機電系エンジニアも悩みます。
参考
最後に
化学プラントでのマテハン作業とエンジニアリングについて解説しました。
マテハン作業を軽視すると、作業者が集まらなくなり、ますますコストが増えていくことになります。
これを回避するためには、プラント建設の最初の段階が大事です。
プラント建設の良否が、将来まで影響を与えます。
機械エンジニアの仕事は重大ですよ。
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