化学プラントでの「入槽作業」は、タンク内部に人が入って点検や清掃を行う高リスクな作業です。中でも、LOTO(ロックアウト・タグアウト)が徹底されていない状況での作業は、重大事故を引き起こす可能性があります。
本記事では、入槽におけるLOTO未実施の危険性と、事故を防ぐための現場対策を解説します。
LOTO管理は機械の点検を行う時に、今や必須の考え方です。はさまれ巻き込まれの労働災害は、目に見えない危険で発生する頻度も多い恐ろしいものです。
入槽前は必ず電力遮断
槽は一般に撹拌付きの槽です。
入槽作業時に、撹拌機が動いてしまうと、はさまれ巻き込まれが起きます。
人と同じ程度のサイズの撹拌機が、急に回ってしまうことを考えるだけでも恐怖。
確実に遮断しましょう。
ブレーカー遮断
LOTO管理の典型例である電力の遮断は、ブレーカーの遮断を行います。
遮断してカギを掛けて、タグを現地に付けます。
LOTO管理をしているというためには、最低限必須ですね。
スイッチの遮断
電力の起動はDCSや現地などいくつかの方法があります。
ブレーカーさえ遮断できていれば、電力が来ないはずですが、万全を期すためにも現地のスイッチも遮断しましょう。
カバーなど人が間違って操作できないようにして、鍵も掛けます。
鍵の管理
鍵を掛けても、その鍵を持っている人が開けてしまっては意味がありません。
作業をしている人が鍵を管理すれば、他の人が間違って開けることはありませんよね。
LOTO管理上は正しいです。
ただし、入槽作業となると考えが変わります。
槽内に持ち込む物は最小化して、間違っても槽内に残さないように注意しないといけません。
この場合は、監視人など内部で作業している人でも監視できる人に持ってもらうことが、現実的な対策となるでしょう。(意図的に鍵を他人に渡すことができるので、完全な対策とはならないですが)
タンク入槽前に必ず配管遮断
入槽作業中に配管から液が入ってきたら、非常に恐ろしいです。
そうならないように、配管は遮断しましょう。
バルブだけで遮断するのは危険です。
内通している可能性があります。
バルブ2個で遮断すれば確率は上がりますが、そこに固執するよりは遮断板を付ける方が確実です。
窒素は絶対に遮断
入槽作業では窒素の遮断が必須です。
窒息を防ぐためですね。
窒素は配管で槽に接続されますが、他の配管に比べて対応を確実にしないといけません。
遮断板だともしかしたら・・・という可能性を考えると、窒素配管は切離しをするのが手堅いと思っています。
フレキシブルチューブで接続すると、取付・取外ができやすくなります。
ワンタッチで取付・取外ができるフレキシブルチューブは外部への漏れの可能性がありますが、その漏れで大気中に居る人が窒息するリスクは少ないでしょう。
そのリスクよりは、入槽作業時の安全対策の作業性を考える方が大事だと思っています。
換気処置も適切に
入槽作業の場合は、換気処置が必要です。
すべての配管を遮断すればいいというわけではなく、空気が入る道を確保しないといけません。
それも2方向
装置の上部と下部それぞれの配管を切り離したり、マンホールを開けっぱなしにしておきましょう。
作業前に酸素濃度を測定することも忘れずに。
最後に現地確認
LOTO管理を徹底するためにも、入槽作業前には許可を出す管理者が現物を確認しましょう。
現地での対応が基本となるので、実施できているかどうかは現地を確認するしか手がありません。
毎回見るのが望ましいですが、スポットでも見ておくべきです。
場合によっては、酸素濃度測定もチェックしましょう。
休憩後の酸素濃度測定すらチェックしても良いと思います。
管理者が全く見ない状態が維持されてしまうと、LOTO管理を意図的に実施しない作業者が出てきます。
その時に事故が起きたら、大問題になるでしょう。
作業員の身も管理者の身を守るためにも、面倒でも確認しましょう。
参考
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最後に
入槽作業は、通常のメンテナンスよりはるかに高い危険を伴います。LOTO手順の徹底は、単なるルールではなく、「命を守るための最低限の行動」です。現場にいるすべての人がその本質を理解し、確実に実行することが求められます。
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