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配管

局所排気用フードを化学プラントで設置する時の注意点

局所排気フード 配管
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局所排気用(exhaust)のフードは、化学プラントなど危険なガス・粉体を扱う場合によく使います。

ところが、意外と吸わなくて不満を持つオペレータが多いです。

オペレーターにすぐに影響がある化学物質ならまだ問題になりやすくて良いのですが、10年20年後に問題が起きるような化学物質だと、問題が起きたときにはとても大ごとになります。

アスベストが良い例です。

そうならないようにするためにも、しっかりと設計することはエンジニアにとって重要な課題。

基本的な考え方をまとめてみました。

粉塵が発生する理由

まずは化学プラントで粉塵が発生する理由を簡単に解説します。

化学プラントでは粉体原料を設備に投入するシーンが、たびたび登場します。

粉塵発生

この絵のように、フレキシブルコンテナに入ったパウダー状やペレット状の粉体原料を、設備に投入します。

フレキシブルコンテナと設備との間に、開放された空間があるので、フレキシブルコンテナを開けて落下していく粉塵が、周囲に飛散してしまいます。

原料である粉体は、自然物というよりも人工物の方が圧倒的に多く、人体に悪影響を及ぼす物も少なくありません。

作業者レベルでは保護具などを付けて対応しますが、そもそもの量(暴露量)が多いと対策の効果も薄れます。

粉塵が舞わないような環境を作ることで3K作業の要素を減らすことは、化学プラントの製造に関わる人なら重大な事としてとらえましょう。

最近では、粉塵が舞わないように囲い込む設備が増えています。投資できる予算と設置できるスペースがあれば、積極的に導入したいですね。

局所排気フード(exhaust)の基本

粉塵が舞わないようにするための基本設備は、局所排気フードです。

基本形は以下のような形です。

フードの基本

掃除機のノズルに似たような形があります。

パイプの先端をレデューサなどで大きくして、吸い込むエリアを大きくすることを狙った形です。

このタイプが抱える問題はかなり多いです。

吸い込むエリアが狭い

フードタイプは「これしか思いつかない」という前提の下で、設置します。

いざ使ってみると、こんな感想を抱きます。

吸い込み量が足りない

これは外付けフードというタイプだと必ずと言っていいほど、発生します。

制御風速と飛散限界点の考え方を知っていれば、吸えないと思うのは明らかです。

それでなくても、掃除機でゴミを吸おうとしたり手で吸い込まれるか確認したりしたら、気が付きますよね。

フード径と同じくらい半径の空間しか、吸い込むことができません。

任意の位置に変更できない

化学プラントで外付けフード型を好むのは、集塵位置を任意の位置に変更したいというニーズがあるからです。

フレキシブルコンテナでもドラム缶でも、投入するその場所には人が居て、人の作業を邪魔しない範囲で集塵フードが設置されていないといけません。

重量物の取り扱いになり、人によって作業姿勢が変わる可能性がある中で、固定フードを付けてしまうと、安全に作業ができなくなる可能性があります。

だからこそ、任意の位置に調整したい。

でも、それこそが難しいです。

ホース系は静電気の問題でほぼアウト。

樹脂系でアームタイプのフードがありますが、これも静電気の問題で使用先が相当限定化されますし、割れの問題を常に問われます。

フードを吊り下げようとすると、位置がずれたり異物混入の原因になったりして、かなり慎重に取り扱わないといけません。

ブロアーの能力が不足する(配管が細い)

フードを適切に設計しても、ブロアー能力が足りない例はとても多いです。

圧力損失の計算を間違っている例です。

風速を高めに見てしまうと、当然ですが能力不足となります。

風速10m/s程度に制御するのが基本。

風量不足でブロアー能力を上げたら解決だ!と安易に考える例もとても多いです。

この場合にブロアー単体に問題があるというよりは、配管が細すぎる問題の方が圧倒的に多いです。

いずれにしても、フード問題は①フード②ブロアー③配管3つのバランスを適正に取らないといけません。

重たい

外付けフード式は意外と重たいです。

例えばフードの設計で、制御風速を上げるため(集気領域を下げるため)にフードにフランジを付ける例はよく見られます。

フードフランジ

このタイプは確かに排風量を下げることが可能です。

ですが、フード自体が大きくなって重たくなります。

任意の位置にフード位置を決めたいというニーズと反してしまいます。

人が介在しないシステムを

フード式の集塵が上手くいかないという例に多く触れていると、人が介在しないシステムを探し求めるようになります。

このニーズを満たす製品も徐々に増えています。

しかし、化学プラント向けでなかったり、狭い場所では使えなかったりと、まだまだ汎用的だと思える機械は出ていません。

プラント建設などのゼロから検討できる場合には、こういうマテハン系の負荷を極小化するように優先度を上げてほしいと、個人的に感じます。

参考

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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

局所排気フードを化学プラントで設置する時の難しさについて解説しました。

フレキシブルコンテナに入った危険な粉体を扱うときに、フードは重宝します。

集塵エリアが狭かったり、ブロアー・配管とのバランスが取れなかったり、任意の位置に決めれなかったり。

簡単そうに見えて設計が難しい分野です。

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