八潮市の道路陥没が大きな問題になっています。2016年に博多でも道路陥没が起きましたが、この問題の背景には、これまで見てなかった地面の下の問題があります。
化学プラントで長年勤めていて、工場の運営や投資に関わる仕事をしている私にとって、プラントライフサイクルの一環として地面とくに地盤沈下に関する話題は昨今重要な課題になっています。
地盤沈下に関する問題を整理して計画的なメンテナンスをするために、化学プラントで考えておいた方が良いことを、まとめました。プラントが置かれている環境によって違うので、各自のプラントの実態に合わせて参考にしていただければと思います。
埋設配管
地盤沈下を考える上で、最初に考えることは埋設配管です。八潮市の問題でも下水がキーワードになっています。
埋設配管は、地面上の通行障害とならないメリットがありますが、漏れが起きているかどうかわかりにくく補修がしにくいというデメリットがあります。今の化学プラントでも水系ユーティリティ配管や排水配管を埋設にしている例はあります。昔なら、危険物など埋設にしていたという噂も聞いたことがあります・・・。
水系の配管から漏れが起きて、水が地面下のどこかに(海など低地側に)流れていくと、水と一緒に土も流れていき空洞ができていきます。空洞が発展すると地面の凹みが出たり陥没という展開になります。私が居る工場でも、小規模の陥没は何度も経験しています。
埋設配管の数と使用量をまとめ、重要な物から地上化していく計画を立てるべきだと思います。規模にもよりますが10年以上掛かる大仕事になります。
地下水や埋め立て
化学プラントの多くは海に近い場所に建設されていることが多いです。地下水や埋め立ての影響が問題になりえます。
埋設配管のように漏れてなければ一見問題にならないものとは違い、常に進行していく問題です。建設地として選定したときには気が付いていなかったかもしれませんが、建ててしまった以上は対策をしないといけません。
実際の対策はかなりアナログで、内部に空洞ができればそこに樹脂相当の物を埋めていくもの。地盤を固くしたり隙間を埋めたりという対策をします。一度対策したら終わりというわけではなく、対策を取った周囲の対策を取っていない部分が今度は問題を進行させていきます。いたちごっこです。
このメンテナンス費用を適正に見積もっている会社は、そう多くはありません。知れば工場を維持するための膨大な金額に、思考停止してしまうかも知れません。
沈下量の測定
埋設配管や地下水の課題があるとして、メンテナンスで最初に行うことは沈下量の測定でしょう。
- 雨が降っているタイミングで地面の水たまりの量を目視確認する
- 杭を打っていて沈下の懸念がない建物との間の相対比較をする
- 専門的な測定を行う
方法はいくつか考えられますが、定期的に行うならかなりの費用が掛かります。定性的な評価だと信頼性が確保できずに予算化できず、予算化するためには高額の点検費が必要で、点検しても高額のメンテナンスが必要なことが分かるだけ。
結構先が暗い展開になります。
スチームドレン
地盤沈下を考える上で、スチームドレンは考えておかないといけません。工場内全域を張り巡らされたスチーム配管は、そのドレンをスチームトラップから排出して、地面に放流するパターンがあります。
ここで、文字通り土の上に放流して、自然に浸透する方法を取ることがあります。排水溝もドレン水を貯める配管を施工できない場所は多々あります。昔から取られているこの方法は、地下浸透の速度を評価するために使える価値があります。
ただし、ドレンの排出量やマスの貯留量などに関するそれなりの評価が必要なので、運転条件を含めてこまめな調査が必要になってしまいます。
スチームドレンの地下浸透は雨と同じ感覚で考えがちですが、発生量が違いますので注意が必要です。ラック上を通っているスチーム配管のドレンがラック基礎近くに浸透させていた場合、ラックの沈下や転倒というリスクが考えられます。
杭なしの建物
地盤沈下を考える場合、道路よりも建物が最も気になりがちです。これは道路は沈下しても簡単に直せる、被害が少ない、という考えからです。プラントそのものが沈んだり倒れたりすると、確かに大ごとですからね。
この心配については、杭を打っている建物かどうかを1つの判断指標にできると思います。地盤沈下の原因や発生懸念がある箇所よりも深い位置まで杭を打っていることが分かれば、その建物が沈む確率は低いと考えられます。
昨今の建物では杭を打つのが当たり前となっていますが、古い建物だと化学プラントと言えども杭を打っていないケースがあります。
地盤沈下が気になっているけど杭を打っていないプラントに対して、いつまで生産を続けるのかという課題は深刻な話になります。チキンレースに近い発想になってしまいかねません。
参考
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最後に
地番沈下の問題は化学プラントでも問題になります。埋設配管や地下水などの影響を長期的に受ける可能性がありつつ、スチームドレンなどの外部要因もありえます。
その割に、メンテナンスのための投資をしないので、気が付いたときには全容把握すら困難もしくは高額の費用が必要で、首が回らなくなってしまいかねません。
プラントライフサイクルの中でもとても重要な話題です。
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