流量計を適切に使うためには、配管長が必要となる場合が多いです。
種類によって変わり、必要な長さも変わるので、配管設計者としては混乱しそうになります。
ただでさえ狭いプラントで、必要なバルブ類やフィッティングを当てはめていくだけでも脳のリソースを使うのに、そこに計装エンジニアから
直管長をちゃんと確保してくれないと困るよ!常識でしょ!
という感じで責められます。(昔は結構言われました)
直管長を確保することについて、配管周りで考えることなどをまとめて見ました。
設計段階
直管長の悲劇を起こさないためには、設計段階が大事です。
P&IDに書いてしまう
流量計の直管長を確保するために絶対に行っておきたいことは、P&IDに直管長を書いてしまうということです。
これは効果抜群です。
配管のレイアウトを決める前の基礎資料であるP&IDに書いていたら、配管図作成段階でミスを防げます。
流量計の種類や口径によって直管長が変わるため、P&IDに流量計のシンボルをしっかり描いていて、ラインスペックから口径が分かるので、直管長そのものをP&ID上に書くことが可能です。
この段階でしっかり描いておらず、「5D」などの係数×口径で誤魔化していたら、配管図上でミスする可能性があります。
流量計の種類によって直管長が変わることから、計装エンジニアはP&ID作成段階で配管エンジニアとしっかりコミュニケーションを取りましょう。
たまに、流量計の種類を変えたけど配管エンジニアに伝えてなかった、という人が居ます。
流量計の図面だけを送って、P&IDや配管図を見直すのは配管エンジニアの当然の仕事だろう、と直管長変更の説明がないパターン。
ちょっとしたコミュニケーションコストを削減した結果、大きな被害が出てしまいます。
配管図とP&IDを見比べる
配管図を作ったら、計装エンジニアもP&IDと必ず見比べましょう。
ダブルチェック目的です。
配管図のアイソメ図にも直管長を書いていた方が良いでしょう。
平面図上には書きにくいです。
アイソメ図の直管長とP&IDの直管長を見て、合っていたらOKのはずです。
配管エンジニアも注意してみていますが、見落としが無いとは言い切れません。他にもチェックすべきことがいっぱいあるからです。
計装エンジニアも配管エンジニアがやって当然と受け身にならず、自分たちの範囲に接する部分なのでちゃんと見ましょう。
工事段階
設計段階で仮に失敗しても、工事段階でフォローしましょう。
強引にどこかで直管を作ってしまう
配管図までの段階で直管長が確保できていないことが分かった時は、覚悟しましょう。
どこかで強引に直管長を確保させます。
例えば高所などで作ります。
もともと流量計はメンテナンスのために、床面から手が届く範囲に設置します。
ここに直管長が必要となると、他の配管ルートの制約がかなり出てしまう厄介なもの。
配管設計上は優先順位を高めるとはいえ、直管長が抜けているケースは存在します。
この場合は、流量計のメンテナンスをある程度犠牲にしてでも、どこかで直管長を確保するという発想になります。
流量計にアクセスできるような架台さえつければ、運転も保全もできます。
コストが多少掛かりますが、直管長を確保しないで何もしないまま運転に挑むよりは安全でしょう。
計器の種類を変える
直管長が確保できないと分かった瞬間に、流量計の種類を変えるという手が一応存在します。
さまざまな種類の流量計を一通り揃えている、大きなプラントに限定される手です。
例えば面積式流量計に強引に変えて運転してみても良いでしょう。
とはいえ、面積式流量計だと配管高さが確保できなかったり、詰まってしまったりとリスクはあるので、必ずしも上手くいくとは限りません。
これなら1つ前に紹介した強引に直管長を変える方が、被害が少ないでしょう。
直管無しで運転してみる
諦めて直管長を確保しないで運転するということも、一応考えられます。
これは流量計に求める条件次第です。
例えば反応物の送液や加熱・冷却の制御を掛けるような、安全運転にシビアに効いてくるものは基本的にNG。
重量計など別の計測機器があって補完目的で使う場合なら、流れているかどうかを知る目的で流量計の指示値が0でなければ良いという使い方をすることがあります。
直管長があった方が良いのですが、無くても何とかなるかも・・・という話ですね。
この辺の感度は、個別設計だけをしていたら気が付きにくいです。
蛇足ですが、流量計の信頼性が低い下限域でローカット(一定値以下の流量を0として処理する)をする計器がありますが、運転側の思想を知らない計装エンジニアに多い迷惑な対応だと思っています。
参考
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最後に
流量計の直管長を確保するためには、配管設計の前のP&ID設計が重要です。
配管図を作成する時にP&IDが基本資料になるからです。
これができていたら、直管長は自ずと確保されます。
もし直管長が確保されていない場合、強引にループを作ったり、計器の種類を変えたり、あえて確保しなかったりと、いくつかの選択肢が残されています。
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