バッチ系の化学プラントの場合、バッチごとに特定の液体・特定の量・特定の速度で送りたいというニーズがあります。精度を高く求めるなら手動の流量計や自動制御の流量計を付けて、シーケンスを組み、誰がやっても間違いがないように運転方法を定めます。
ところが、こういう高級な方法を取れない工場や、そこまでのニーズはないけどもある程度は制御したいという、かなりあいまいな運転条件は存在します。そういう場合に、どういう対応をするかということを考えましょう。
DXなどとは真逆の現場的でアナログな方法です。
開度を記録する
1つ目の方法はバルブ開度を記録する方法です。
今回の場合は、以下のような水をタンクに投入するという場合を考えましょう。

バルブ開度を調整すれば流量は変わります。流量計が無かったとしても例えばタンクに液面計があって時間記録が分かれば、それなりに測定はできるでしょう。水なら水道メーターや仮設の流量計で、バルブ開度と流量の関係を調べてしまうという手もあります。
確実な方法のように見えますが、この方法には前提条件があります。
- 調整バルブ手前の水はポンプなどで圧力が掛かっていて、その値が振れない
- 水は他のユーザーで使われておらず、単独使用をしている
- 配管の閉塞が考えられないような、綺麗な水である
バルブ開度を一度記録して、その開度で運転していれば問題なし、というわけではない点に注意が必要です。アナログな方法のため、常に信頼ができるわけではありません。液面計があれば液面変化が毎バッチ変わりないかとか、マンホールから中を確認できるなら最初の数分間の状況を確認する、記録書を作るなど、何かしらの別の確認手段を追加しておくと安心感が増します。
液抜きをして測定
液抜きをして測定するという方法があります。

この絵のように、タンクの接続口すぐに液抜きラインがある場合にできる方法です。水を流してバルブ開度を調整し、バケツに水を入れ始めて時間を測定します。これでそれなりの流量範囲にバルブ調整をすることは可能です。
もちろんこの方法も注意が必要です。
- 毎バッチ調整することが確実
- バッチ数が少ないなど、バルブ開度を固定する場合は、手前にon-off用のバルブが必要
- 液抜きの口径は主管と同じ
- タンクが大気開放状態である
- 開度記録と同じでポンプ圧力や使用条件に変化が無いことが前提

液抜きで大気に開放するラインと、タンクを経由して大気に開放されるラインが、圧力損失的に大差がないという前提が入ります。この状態でアナログな流量測定をすれば、すぐにバルブを切り替えても同じ程度の流量でコントロールできます。
供給ポンプや他のユーザーの使用条件が変動しても、直前であれば変動するリスクは少ないと考えます。確実な状態に持っていくには、毎バッチ実施する方が良いでしょう。流量をどこまでコントロールしたいか、というニーズに依存します。
参考
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最後に
流量計が無くてもそれなりに流量をコントロールする方法を紹介しました。
バルブ開度を調整して他の計器などで測定する方法と、液抜きをして測定をする方法です。とてもアナログなので、運転で万が一ということが無いように仕掛けを作らないといけません。これで製品の品質に影響が出たりするので、疎かにできないですね。
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