製造工場では電気を使った設備が非常に多いです。化学プラントでは火災爆発の危険性から、電気設備は防爆仕様にする必要があります。このハードルが高いため、設備導入ができないケースは多々あります。そこで諦めるのではなく電気以外の方法を考えることは、1つの有効な方法となりえます。
本記事では、電気以外の動力としてエアーを使う設備について紹介します。
この記事は、防爆シリーズの一部です。
・放出源・換気・距離の視点から考える化学プラントの現実的防爆設計
・化学プラントで必須の防爆機器とは?設計・保全に役立つ基本知識と選定ポイント
・プラントの危険区域の精緻な設定方法を試してみた
・防爆設備はどちらを選ぶ?安全増防爆と耐圧防爆の違いと実務判断
・現場でできる防爆対策の基本:モーターを防爆型にするか、非防爆を遮断で守るか
防爆設備のデメリット
電気はとても便利なものなので、防爆という制約があっても化学プラントでは非常によく使われます。
防爆設備は高価・納期が掛かる・予備が少ないなどプラントの安全安定運転には、課題があります。この課題を解決するのが電気エンジニアであって、設備を導入する機械エンジニアは何も考えなくて良いかというと、そうではありません。安く早く使えるようにしたいなど、製造課からの要望を受けることもあるでしょう。こういう場合に、エアー設備の導入を検討するのは機械エンジニアの役割ですね。
エアー設備で代替できる可能性
防爆設備ではなくエアー設備で代替できる可能性があるものを紹介します。紹介しているものは全て、エアーが電気全てを代替できるわけではなく電気の一部を代替できるというもの。使用範囲や制限など検討が必要であることに注意しましょう。
基本的には小さな動力で動かせる設備が対象です。
ポンプ
化学プラントなど液体・気体を扱うプロセスで多く使われるポンプ。電気を使うのが当たり前に見えて、エアーでも使える可能性があります。
代表例がダイアフラムポンプ。流量は少なく揚程も決して高くはありませんが、液体を送ることは可能です。実際に電気のポンプが故障したときなど、緊急対応にダイアフラムポンプは大活躍します。電気のダイアフラムポンプは高圧用などむしろ限定して、ダイアフラムポンプはエアー用と割り切っても良いかもしれません。
自動弁・制御装置
自動弁や制御装置も電気でなくてエアーを使う場合があります。自動弁はエアーの方が電気よりも個人的には便利と思っています。制御装置も例えば専用機器で現場に設置するタイプあれば、エアーで制御回路を組む場合は今でもあるでしょう。
これらは、むしろ電気の方が使いにくいと言われる類かも知れません。
充填・包装設備
充填包装設備は、物流関係など世間で幅広く使われている中で、化学プラントなど防爆が必要な限定された使用条件でも使われます。紙袋・ドラム・フレコンなどを扱うからですね。
これらの作業をするために防爆設備を求めようとしたら、意外と見つからなかったりします。エアーでも動かせる設備はいくつかあります。ドラム缶の反転装置・充填のパッキング装置などです。エアーだと圧力による限界があるので、使用条件は注意したいですね。また、秤などは電気を使わざるを得ないのでエアーでは代替できないでしょう。
掃除機
掃除機は化学プラントでも使い、粉塵爆発など危険性があるものを扱います。ここに防爆の掃除機を使うことは悪くはありませんが、エアーの掃除機も存在します。
エアーの方が動力が小さく、吸引量など能力に不安がある場合もありますが、安い安全という点が大きなメリットです。
工具
工具は電気でなくてエアーを使う物があります。個人的に好きなのはエアーのインパクトレンチ。プラントに有機溶媒が残っていてライン洗浄している間に、配管や設備を分解したいというニーズはあります。人力でボルトを外さざるを得ないのですが、別の動力を使えたら便利ですよね。もちろん扱いには習熟が必要なので、誰もが使えるわけではありませんが、便利になります。
同じようにグラインダーも設備洗浄で使えたりします。
エアー設備を導入するときの注意点
エアー設備は便利ですが、万能ではありません。
・供給エアー圧や容量の制限
・設置位置による圧損
・メンテナンス(結露・オイルミスト対策)
といった課題があります。
エアーは電気という動力から作られるので、電気を直接使う方が効率的であることは確実です。ユーティリティの供給という点でも電気の方が効率的です。だからと言って電気一辺倒になるのもリスクがあるので、電気とエアーの適材適所の併用を意識することが重要です。
参考
最後に
防爆エリアでは、電気設備が使えない・高価・納期がかかるなど、現場を悩ませる問題が多くあります。
そんなときに「電気がダメならエアーで」という発想は、シンプルながら実務的な解決策です。
ポンプ・弁・包装機・掃除機など、エアーで代替可能な機器を上手に選定すれば、安全とコストの両面で効果が期待できます。
化学プラントの設計・保全担当者は、ぜひ一度検討してみてください。
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