工場向け電気料金(electric fare)の簡単な仕組みについて解説します。
経理的な話になって機電系エンジニアとしては敬遠しがちの分野。
電気料金の話だから電気エンジニアだけが考えればいい!
こんな機械系エンジニアもいます。
とはいえ、電気料金の元となる設備を選定するのは機械系エンジニア。
機器の性能の良し悪しを決めるときに、消費電力は1つの検討要素となります。
2種類の電気料金(electric fare)
電気料金は定額料金と従量料金の2種類に分かれます。
他にも種類がありますが、この2つの違いが分かれば十分です。
定額料金
定額料金とは、電灯のワット数あるいは機器の重量によって料金を決める制度です。
要するに、電気容量で決めるという考え方。
24時間連続運転をする場合に有利です。
例えば37kWのモーターでポンプを24時間365日運転したとします。
この時、定額料金では37kWのモーターという仕様そのもので料金が決まります。
この前提は24時間365日の運転です。
バッチ系化学プラントでは実際にそんな運転をしている設備は多くはありません。
ユーティリティ関係の用役設備に限定されるでしょう。
24時間365日運転している37kWモーターの設備もあれば、2時間365日運転している11kWモーターの設備もあります。
これら2つを、48kWモーターが24時間365日運転しているという条件で、料金設定するのが定額料金制です。
従量料金
従量料金は、消費電力に対して支払いをします。
先ほどの、24時間365日運転している37kWモーターと、2時間365日運転している11kWモーターがあれば、それを実際に消費した電力に応じて料金を支払います。
これは一般家庭ではごく普通のことです。
原単位
原単位とは、一定量の生産物をつくるために使用する、または排出する物や時間などの量という定義です。
化学プラントでは製品が生産物になります。
ある製品を例えば1トン生産するために必要な電力を、電力の原単位として考えます。
先ほどの例では・・・
365日で100トンの製品を作るのに、24時間365日運転している37kWモーターと、2時間365日運転している11kWモーターを使ったとすれば、電力原単位は以下のように考えます。
定額料金制
48kW*24時間*365日*電力単価/100トン
従量料金制
(37kW*24時間+11kW*2時間)*365日*電力単価/100トン
原単位は生産活動における、変動費の解析指標として使います。
変動費は生産活動そのもので決まる費用なので、製造部に責任があるのが普通。
この費用を削減することは製造部にとっての使命。
そこに電気料金も関係します。
定額料金にしていたところを従量料金にする。
これだけで原単位が改善されます。
力率の定義
力率の定義は下記のとおりです。
力率 = 有効電力 / 皮相電力
皮相電力とは電流Iと電圧Vを使って、皮相電力 = VIと表現されます。
皮相電力は有効電力と無効電力を使って皮相電力 = 有効電力 + 無効電力とも表現できます。
VIという値は、電気が使うエネルギーそのものですので、有効電力が電動機に実際に供給された電気エネルギーと言えます。
無効電力が電気ロスと考えれます。
電圧と電流の位相差Θを使って、力率はcosΘと表現することもあります。
電流と電圧に位相差がない(コイルやコンデンサーがない)と、Θ=0に近づき、力率は高くなる、というくらいに認識があれば十分でしょう。
消費電力の計算
消費電力の計算は簡易的にはモーター容量から計算できます。
有効電力は適当に係数で、と言っている部分です。
詳細計算をしようとしたら、電流値の情報を使います。
電流値と電圧値を使えば、精度は高くなります。
消費電力は電流×電圧×力率ですので、電流値が計測できると、力率を0.85や0.90と置くことで、かなりの精度での計算ができます。
力率による割引
力率は電気回路上のロスと考えていいので、電気回路でロスが少なければ、省エネと言えます。
これを電気料金に反映させようという料金体系があります。
基本的にこの値は一定の値です。
契約によって力率0.85とするか、それ以外の値にするかは微妙に変わります。
力率0.85で契約した場合、0.85より高い力率の電気使用実績であれば、割引があるという仕組みです。
機械設備
機械設備の消費電力の簡易計算方法を紹介します。
モーター容量×時間×日数
消費電力の計算は、これで十分です。
モーター容量は現物をチェック
モーター容量は例えば電動機の仕様を見れば一発です。
37kWなどとネームプレートに書いています。
時間はとりあえず24時間
分からなければ、最初は24時間で考えればいいです。
細かい修正は後で行います。
日数は生産日数そのまま
生産日誌を見ればこれも分かります。誰でもわかります。
有効電力は係数で
上記の計算では、実際に電力として使用した有効電力だけを取り出していません。
無効電力分も含んでいます。
これは割と適当に0.7など仮定してしまえばいいです。
微修正の係数として使います。
設備の運転方法と台数
連続プラントなら、設備の台数×モーター容量×24時間×生産日数と真面目に求めるかもしれません。
設備の台数×モーター容量を動力設備の台数×平均モーター容量で出してもいいですし、個別の動力設備についてモーター容量を積み上げても良いでしょう。
いずれにしても、一度やってしまえば、毎月の支払い時に使用できます。
これがバッチ工場では多少の知恵が必要です。
雑に計算するなら動力設備の台数×平均モーター容量でOK。
もう少し真面目にするなら、24時間運転するユーティリティ系と、反応で使用する攪拌機などに分類するでしょう。
これは台数×モーター容量が大きいものだけ精査するという思想です。
その他設備
電気使用量を調べるときに、機械設備に目を向けるのは当然です。
ところが、実際にはその他設備の影響の方が強いです。
具体例を紹介しましょう。
照明も消費電力×台数×時間×日数で計算できます。
1基あたりの照明では電力は小さいですが、塵も積もれば山となる。
かなりのウェイトを閉めます。
意外と計器室の照明が電力を食います。
DCSも同じく24時間運転しています。
冷暖房は夏季・冬季に限定しますが、これもかなり大きいです。
参考
最後に
機械系エンジニアの範囲内で電気料金について解説しました。
定額料金と従量料金という2つの料金形態と、力率の値について説明しています。
モーター動力×運転時間で電気料金が簡易計算できますので、ぜひチャレンジしましょう。
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