サプライチェーン(supply chain)の課題について考えます。
製造業にとって原料は非常に重要なテーマの1つ。
化学プラントのように特殊な原料を使う場合には、調達に相当の苦労を掛けます。
同じように化学プラントのエンジニアリング・建設も資材や部品が1つのテーマになってしかるべき。
この5年~10年くらいでようやく話題になってきていますので、時代の流れに取り残されないようしっかりと理解しましょう。
生産中止品の増加
近年、化学プラントの設備関係で生産中止品が増えています。
化学プラント向けには油圧機器がその典型例でしょう。
ニーズの減少
生産中止をする最大の理由は、ニーズの減少です。
油圧機器はその1つの例。
インバータに切り替えた方が良いように見えてしまいますからね。
ところがインバータも壊れやすい問題があって、油圧機器の上位互換というわけではありません。
それでも油圧機器のニーズが減っている以上、生産中止になるのは仕方がないですね。
ラインナップの増加
設備メーカーは自社のラインナップが年々増加していく方向で、生産中止にせざるを得なくなっています。
ポンプ1つ取っても
- A社仕様・B社仕様のように各社異なる要求があり
- 昔のポンプの金型は保管し続け
- 既設の老朽更新のタイミングになっている
というように、ラインナップが拡大し続けている方向です。
思い切って旧品は中止にしないといけないのに、なかなかできませんね。
これは化学プラントの製品でも全く同じ。
製造責任という名のもとに昔からある製品をなかなか中止にできないのは、日本の弱いところです。
昔の製品も残し続けないといけないということは、リソースを圧迫する方向です。
- 部品
- 人材
- 資料
いろいろなデータを保管し続けないといけません。
それが限界に来ています。
人材不足
製造工場の人員は年々減少しています。
- 日本人の人口自体が減っている
- 3K作業をしたくない
- 給料が安い
この辺りが背景になります。
工業高校卒業者の人数も減っているので、製造工場に就職する人数が減るのは当然のこと。
自動化を進めていって3K作業はかなり減っていますが、それでも嫌がる若手が多いです。
給料も決して高くありません。
これならIT系の仕事をしていた方が良いと考える人は多くいます。
純粋に生産供給能力が減っているから、旧品を作れる人が少なくなっており生産品目を減らさざるを得ない。
これが人口減少に伴う、部品供給の停止に繋がります。
工場環境の変化
工場環境の変化も、生産中止の要因となっています。
- 工場内に新たな設備の導入
- 安全を意識した作業スペースの確保
- 工場の引っ越し
工場の置かれた環境が変化しており、ニーズの少ない旧品はカットしてかざるを得ない状態です。
標準化の推進
生産中止に対応するためには、ユーザーは標準化を真剣に取り組まないといけません。
A社仕様・B社仕様というオリジナルはソース先を限定化する危険性があります。
特定の会社に依存してしまうと、そこが駄目になった場合は手が打てなくなります。
既設と同じでないと良く分からないけどダメ
という視点でストップしてしまうと、万が一の場合に対応できません。
設計の本質を考えて枝と幹を使い分けれられるようにすることに加えて、
メーカーには標準品を提示させて特殊な要求をしない、ということが今後ますます求められるでしょう。
ユーザーとしてもエンジニアリングの技術的能力を高速で成長させるために、標準化は欠かせません。
複数ソース化の推進
化学プラントのエンジニアリングにおいては、設備ソースの複数化は必須の考え方です。
でも、これがなかなか上手くいきません。
- 一流メーカーでないと対応が悪い
- 一流メーカーでないと安物買いの銭失いになる
- 一流メーカー以外は大量発注に対応できない
いろいろな背景がありますが、一流メーカーの数が少なく複数ソース化が難しい環境にあります。
2~3社しかソース先がない設備は要注意です。
グラスライニング設備・高耐食性機器・遠心分離機・乾燥機などがバッチ系化学プラントでは要注意な分野です。
こういった製品は日本国外から調達する可能性も考えないといけません。
海外調達
複数ソース化の中でも海外メーカーからの調達は、特別大きなテーマとして上がるでしょう。
20年くらい前には、安価な労働力を求めて中国など海外への進出が進みました。
JTCの中には10年経っても海外調達をしなかった会社もあるでしょう。
遅すぎなんて批判されることも。
でも、2021年現在では海外調達が逆にリスクになっています。
輸送できない
コロナ禍のロックダウンで輸送できない部品がどんどん出てきています。
- 半導体
- インバータ
- ケーブル
- 蛍石
電気計装関係がほぼ全滅です。
サプライチェーンやリソースの確保に真剣に取り組めない業界ほど、業界の変動に左右されます。
化学プラントも体力の無さから業界に左右させやすい環境にあります。
最終メーカーが国内であっても原料が海外であることが普通ですので、注意してし過ぎることはありません。
日本の方が労務費が安い
日本の方が労務費が安くなっているのでは?というケースが増えています。
賃金は増えず、税金は増えていっている日本ですから・・・。
日本の方が労務費が安いなら海外調達の意味はほとんどなくなります。
建設業を代表に、日本人の労働者が少なくなっていて外国人労働者が増えているから、日本の労務費が上がる未来は遠いでしょう。
調達部の存在価値
会社には調達部が存在します。
調達部の存在価値は年々薄くなっているでしょう。
社内購買システムのような自動化が進んでいる部署です。
馴染みのある取引先に電話を掛けてFAXやメールを送って仕事をするという、単純作業はどんどんなくなっていくでしょう。
調達部の人間は安全部と同じように、誰でもできる仕事の典型例です。
調達部が行うべきことは、単純作業ではなく調達の安定化・調達の合理化・世間動向の調査などにあると思っています。
この辺ができる調達部がある会社は強くなるでしょう。
参考
関連記事
調達についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
化学プラントの設備の部品や調達メーカーについて紹介しました。
生産中止の部品が増えていっています。
複数ソース化や標準化をユーザーは目指しましょう。
海外調達にはリスクがあり、調達部には戦略的な思考が求められます。
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