化学プラントの設備設計をしていると、不純物についてそれなりに話題になります。
水・メタノールというような純粋な物質だけを取り扱うことはむしろレアで、何かしら混ざった物を取り扱う。だから、耐食性の評価もとても難しい。
こんな感じで、上司から教わったことがあります。
言っていることは正しいのですが、これだけだと受け取り方が変わってきます。
何か良く分からない難しいもので、自分には判断できないし、考えてもいけない分野なのだ・・・
完全に尻込みをしてしまっていました。
実際、上司の立場に立ってみると、感覚的にはこんな感じです。
ベースの部分は文献を使って自分でも調べられるが、複雑な話になれば専門家に頼ればいいのだ!自己判断は危険!
若い時ほど自分だけの判断で、結果的に間違った判断になってしまいがちです。
上司としてはそこが気になるポイントなので、最終的な自己判断の前にどれだけの情報を集めるかが大事だと思っています。
これを当時聞けていれば余計なことで悩まなくて済んだのですが。。。
取り扱い物質に対する不純物の位置づけ・ニュアンスを理解しておくと、こういった悩みも減少されるでしょう。
不純物は製品品質として決める
取り扱い物質に対して不純物は必ず含まれています。
飲み水ですらミネラル分はある意味で不純物ですよね。
不純物はある程度含まれていて当然ですが、範囲があります。
原料→製造(加工)→製品というスタートからエンドまでの領域で、範囲を決めます。
原料では原料の受入分析で範囲を設定し、製造プロセス中では工程分析で重要な範囲を設定し、製品では製品品質としてその範囲を設定する、という感じです。
もちろん製造プロセスでは、分析していないだけで不純物がいっぱい含まれています。
これを真面目に集めていくのがマテリアルバランスということになりますね。
ゼロかゼロでないか
不純物を考えるときに、ゼロかゼロでないかという判断は大事です。
つまり、ある要素を全く考えなくて良いのか、それなりに考えなくてはいけないのか、という検討の出発点となります。
不純物がゼロでなくて、一定の範囲にあることを認識して、適切な設計を行う
こういうアプローチを心掛けましょう。
というのも、ここを意識せずにプロセス部門からの情報を待っていると、マテリアルバランスがしっかりした物でないと満足しなくなるからです。
研究開発が完成し、マテリアルバランスをしっかりとって、その数値をメーカーに提示して設計してもらう。
このアプローチは、コンカレントエンジニアリングとは真逆の発想となります。
分からない状態でも、外れない設計をして、タイムリーに処理をすること。
エンジニアリングにとって非常に対峙です。
設計段階で不純物を考える例
設計段階で不純物を考える例をいくつか紹介しましょう。
プロセス部門からの情報を聞くときに、単に聞き方1つで変わってきます。
耐食性も、もちろんこの中の1つですよ。
スラリー
スラリーはポンプやそのラインの設計でとても大事です。
固形分0wt%であれば、インペラやメカニカルシールは汎用的なものを考えれますが、1wt%でもあると要注意です。
数wt%程度までなら軽いものでも対応できますが、10wt%のオーダーになると専用の設備が必要になるでしょう。
ここで5wt%という情報をプロセス部門から受けたとして、5wt%対応の設計をしていると問題になりやすいです。
例えばプロセス上の失敗でスラリーが多めのものが入ってきたり、生産プロセスの変更でスラリー濃度を上げたりしたいときに、即座に対応できなくなります。
こういう時には10wt%オーダーのしっかりした仕様にしておくと、後々悩まなくて済む確率があがるでしょう。
酸
純粋な水に酸が一部含まれているという場合があります。
この場合は、耐食性が気になるでしょう。
酸の割合次第ですが、SUS304では対応できない可能性があり、SUS316LやGLなど耐食性の高いものを選ぶと安全側になります。
アルカリ側なのか酸側なのかという判断だけの世界です。pHが1なのか3なのかという数字が問題というわけではありません。
酸ということさえ分かれば、それなりに考えることができます。
水
溶媒に水が含まれていると、プロセス上問題になることがあります。
プロセスで発生した不要な水は分液をして処理すれば良いのですが、設備から水が混入してきた場合は処理ができなくなる可能性があります。
水を嫌うプロセスなのか水が混入しても良いプロセスなのか、これによって例えばシール水の設定などを変えていきましょう。
溶媒
溶媒の中に別の溶媒が混じることは往々にしてあります。
晶析など溶媒の入れ替えをするプロセスの前後では、起こりえます。
蒸留である程度取り除くとは言え、完全には取り除けません。
最終的には廃棄処分しますが、その間は複数の溶媒が混じったものとして取り扱う必要があるかもしれません。
例えば、Oリングの材質を選ぶ時に溶媒Aを扱うプロセスだからと思って選定していたら、実は溶媒Bが含まれていて材質が持たなかったということが考えられます。
そのプロセスでは溶媒Aだけに見えますが、溶媒Aはその後の経路で溶媒Bが混ざり回収されて、使いまわされるというケースです。
こういう時は、溶媒Aには溶媒Bも含まれるもの、として材質選定しないといけません。
選択肢は多くあるわけではありませんがプロセス全体像が見えていないと、どのケースまで考えていいか分からず選定できなくなってしまいます。
特に初心者のころは引っかかりやすいテーマです。関係者と相談して危険回避しましょう。
参考
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最後に
プラント設備設計で不純物は見ておかないといけません。
ただし、マテリアルバランスを取るというレベルではなく、ゼロかゼロでないか範囲があるかさえ分かれば良いと思います。
いろいろな条件の振れがあっても対応できるような設備にしておくこと。
どの条件まで考えるか、が大事になってきます。
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