プラント設備が故障(breakdown)したとき、化学プラントの設備保全エンジニアが最も活躍します。
設備故障に対してどういう振る舞いをするかは、設備保全エンジニアの仕事の成果として明確に分かれます。
初心者→中堅→ベテランという3段階にザックリ分けて解説しましょう。
設備保全エンジニアと言っても自分で手を動かして装置を触ることは無く、手配屋としての設備保全エンジニアのことです。
化学プラントでも大手だとこういう職種が存在します。
実際に手を動かす保全者から見たら楽な仕事・・・と思われるかも知れませんね。
初心者
初心者設備保全エンジニアは、製造部・協力会社・メーカーとのコミュニケーションの伝言ゲームが怪しい状態です。
新入社員は当然初心者です。
できるだけ早いタイミングでこの状態からは脱却しましょう。
入社5年目くらいまでは初心者的な仕事に追われる保全者もいて、許容されるかも知れません。
初心者の設備保全エンジニアにありがちな行動は例えば以下のようなものです。
- 製造部の運転継続に対する考え方を知らない
- 協力会社の言いなりになっている
- メーカーに主張できない
伝言ゲームが主業務である設備保全エンジニアリングでも、それすら機能しない状態です。
このようなパフォーマンスになるのは以下の背景が考えられます。
機械の知識が少ない
初心者の段階で機械設備の知識は、学校で機械的な知識を得たかどうかがポイントではありません。
設備をどれだけ触ったか・目で見たかという親近感的な要素の方が強いです。
「経験がモノを言う」とよく言われますが、その経験が短いからこそ初心者。
例えば保全者として機械設備の勉強をしたことが無く、ずっと製造部で運転をしていた人でも設備保全エンジニアとして初心者の段階は簡単にクリアできます。
これは座学としての機械設備の勉強が初心者の段階では重要でないことを意味しています。
結果が出ていない
初心者の間の短い時間では、SDMやトラブル時に自分で判断して修理した設備に「結果」が出てきません。
多少判断を誤っても、もともと5年持っていた設備が4年で壊れそうになったというレベル。
その4年か5年を経験できるかどうかは初心者の壁の1つ。
大きく判断を誤って1年で壊れる設備に出会ったときに、保全者は自分の仕事を考えるでしょう。
自分以外の保全者から引き継いだ結果は、反省材料にならないです。
コミュニケーションに慣れていない
学校や製造部などコミュニケーションが限定化されている環境から、設備保全エンジニアとしてコミュニケーションを取る環境に移ったときは、コミュニケーションそのものに慣れるまでに時間がかかるでしょう。
結局は限定化された人間関係でのコミュニケーションですが、言語化が得意とは限らないのが設備保全エンジニア。
慣れるまでに時間がかかるのはやむを得ないでしょう。
初心者の段階では周りに振り回されてエネルギーを消費します。
若いうちだからこそ体当たりで何とかなるかもしれませんが、疲れます。
やりがいを感じることも少ないでしょう。
設備のトラブルが起きた時に、コミュニケーションが十分に取れずに上司がフォローに走り回らないといけません。
上司がフォローしているかどうかという目で、初心者かどうかは分かりやすく判断できます。
中堅
中堅エンジニアになると、自分の思い通りに仕事を回せる部分が増えていきます。
ここでやりがいを感じる人が出てくるでしょう。
中堅エンジニアはこんな事が可能になります。
- 製造部と1人で調整が可能
- 協力会社に必要な情報を伝えて、現場で調整できる
- メーカーとの調整も可能
- その場しのぎに対するフォローができる
- 長期的な保全計画も考えられる
中堅保全者は、簡単に言うと「独り立ち」している状態です。
上司が面倒見なくてもいい状態。
1工数という言い方をする会社もあるでしょう。
緊急的な設備故障が起きても、その後の基本的な処理は普通にこなします。
伝言ゲームのように見えて、関係者に必要な情報を適切に伝えていくという意味で知識は必要です。
このコミュニケーションを通じて機械装置の構造や特徴を、ゆっくりと勉強していくこともできます。
応急補修をしてその場しのぎをしながら運転する場合、運転停止時に正常な姿に戻すための各種準備が必要です。
その準備も基本的には問題なく処理するのが中堅です。
初心者の場合は、目の前の処理に追われて準備を忘れることがあります。
社会人としてどうなの?って思いますが、初心者の実態はこんな感じ。
自身の判断で設備の補修サイクルとして4~5年を経験して全体像を把握できている段階なので、その応用としての長期的な保全計画も立てれるようになります。
トラブルの情報を保全計画に反映させようとも考えます。
設備保全エンジニアとしてこのレベルまで行くことは、難しい話ではありません。
できるだけ早いタイミングでこの領域にまで到達したら、そのままステップアップせずにずっと中堅で社会人人生を終える人もいっぱいいます。
ベテラン
ベテランの設備保全エンジニアは、中堅エンジニアより視点を広げています。
課長がベテラン、主任が中堅と誤解されそうですが、そうではありません。
設備故障という物理的な現実に対して、どう判断するかは技術者としてのスキルそのもの。
ベテランになるとこんなことが可能となります。
- 他プラントの設備を調べて使えるか交渉する
- 予備部品を予め準備している
- 設備の仕様統一化の視点を持つ
- チョットした補修でどれくらい持つか推定できる
- だまし運転をする場合の注意点を明確に指示できる
かんたんに言うと「視点の広さ」がポイント。
自担当以外のプラントの特徴をある程度理解しており、保全状況も知っています。
問題が起きた時に、自分だけの範囲で物事をとらえず他の担当範囲の協力を得ようとする姿勢。
当たり前のように見えてほとんどできていないのが保全だと思います。
一匹狼の世界。
そこから脱却する人がベテランです。
さらに設備の知識に詳しく、寿命延命に対する知識があるので、製造部に対してアピールもできます。
トラブルを減らすことで生産機会を確保するというだけでなく、保全としての自分の仕事を減らすことが可能です。
この領域に行く到達することは意外と難しいです。
というのも、その前に課長に上がってしまうから。
課長に上がってしまうと、実務よりはマネジメント側にシフトして設備故障の対応をする機会が減ってしまいます。
かといって、主任の位置でベテランのような仕事をしても給料が上がるわけでは無く・・・。
ベテランとしてモチベーションを高く仕事をする必要性が低いということですね。
参考
最後に
設備保全エンジニアが設備故障時に取る対応を初心者・中堅・ベテランの3ランクに分けて解説しました。
初心者は伝言ゲームでミスが多く上司のフォローが必要。
中堅は独り立ちしてフォローなく処理可能。
ベテランになると自分以外の範囲にも目が行ってヘルプを求めるようになります。
保全の行動を第三者目線で見ていると不思議ですね。
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