24時間運転する工場では、稼働を少しでも止めないように設備に対するケアを非常に重視します。会社が設備保全を組織の1つにする理由がここにあると思います。設備が壊れたときにすぐに対応できるように予備部品を持つことは、保全の重要な役目です。ところが、化学プラントでは予備部品の考え方に特徴があり、適切な対応が求められます。
本記事では、化学プラントの予備の考え方の概要部分を解説します。
突然の故障に対応
予備を持つ目的は突然の故障に対応することです。設備は動いて当たり前ではなくて、いつ壊れるか分からないものです。設備でも壊れにくいものと壊れやすいものがあって、運転を安定化させるためには壊れる前にいかに修理や交換をするかが求められます。
予備というとき予備部品と予備機の2つで微妙なニュアンスの違いがあります。予備機は設備本体一式の予備を指し、予備部品は設備の一部品の予備を指します。例えばポンプならポンプそのものの予備を持つときは予備機を指し、ポンプのメカニカルシールの予備をもつときは予備部品を指します。
予備の思想という意味では、化学プラントでは予備部品と予備機はあまり大きな差はないので予備という単語でまとめて以下解説します。
予備 = 予備機 と 予備部品
予備機 ポンプなど
予備部品 メカニカルシールなど
数とリスクのバランス
予備を考えるときに大事なことは、数とリスクのバランスです。これをどこまで詰めていくかが保全の腕の見せ所となります。
数の設定
予備はどれだけの数を持つかということが課題となります。例えば家庭では薬や食料品などで最低限の数を持っていることがありますよね。今日1日分だけを持つのではなく数日持つようにしていたりするでしょう。
何個持つのかということは数の話です。ポンプを1個持つのか2個持つのかという課題。化学プラントで予備という場合は1個であることが多いです。その設備がすぐに使えなくなる確率が高くはないからです。家庭でのイメージとしては、パソコンとかスマホなどが該当するでしょう。その設備は、数年は最低使用する前提で考えます。もしくは予備を持たない0個。壊れてもすぐに調達できるから確保する必要がないです。食料品がそうですね。
予備 1個 or 0個
なお、家庭ではパソコンやスマホの予備を持つことは普通はないですよね。逆に充電器やケーブルは予備を持っていたりします。予備機と予備部品の違いです。
予備機 パソコン・スマホ
予備部品 充電器・ケーブル
期限の設定
予備を持つとしても期限の設定は必要です。残念ながら工場現場ではとりあえず買っておいても、
「何かの時に使えるかもしれないから捨てるのはもったいない」
という悲しい判断が起こりえます。家庭でもこのパターンがありますよね?保全は工場内では組織立てるよりも個人プレイになりやすいので、同じ発想で予備を確保しようとしてしまうことがあります。
予備を持っていたとしても数10年前に買ったもので、錆びてしまって使えなくなった。こういう予備はとても多いです。予備は在庫となってしまうので、在庫削減のためには予備は最低限にする必要があります。
予備を1個持っておいたとして、その予備が何年後に使うか予想して、使ってすぐに予備を補充する。
このサイクルを予備1つ1つに設定するのが保全の長期管理となります。
捨てる覚悟
予備の使用期間に対する設定はとても大事ですが、捨てる覚悟を持つことも大事です。「いつか使うから置いておこう」と無期限に予備を置いていると、置き場所を圧迫します。
場所だけでなくて処分費用もかかりますし、一度に処理しようとしても時間もかかるので、そのうちどうしようもなくなってしまいます。
システマティックにしようとすると、以下のような情報を整理していくことになります。
・予備のリスト化
・使用年数の設定
・交換費用の見積
・廃棄期限の設定
・廃棄費用の見積
この前段に、予備の員数管理と入出庫管理が必要なので、運用するのは結構な人手がかかってしまいます。
リスト管理
予備は揃えようとしたら膨大な数になります。どの予備を持つかということを考える前には、現在のプラントでどういう設備があるかをリスト化する必要があります。
このリストは一度作ったら終わりではなく、設備の更新のたびに責任をもって更新しなければいけません。
例えば、家庭や事務所で使っている道具はどういうものがあるかリスト化している人は居るでしょうか?常に使うものまで都度管理することは難しいと思います。使っている人は消費したら購入するというサイクルに注目するだけで、その記録を取ることはしないでしょう。これと同じことが設備でも発生してしまいます。使っている人と管理する人を分けないと、リストを維持することはできません。
リスト化された設備に対して、何を予備として持つかという予備のリストが必要です。設備のリスト管理だけでも大変なのに、予備のリストが設備のリストと合っているかどうかを確認していくことも労力が発生します。
リスト管理と簡単に言いますが、実際には複数の人が必要となる泥臭い作業になります。
機種の統一が前提
予備を確保していくうえで機種の統一は非常に大事です。
・予備機の数を減らす
・予備部品の数を減らす
・使用設備が予備にもなる
1プラント内で同じ設備を持つことも大事ですが、複数のプラント間で同じ設備を持つことも大事です。プラントの数が少ないと問題にならなくてもプラントの数が多いと、予備の問題はとても複雑になります。
典型例がポンプです。特に渦巻ポンプ。複数のメーカーが生産していて、1つの工場でも複数のプラントが多くのメーカーを使っていると、渦巻ポンプだけでもリスト化するのが大事になります。予備を持とうとしたら費用が膨大になり、予備部品の確保だけでも予算不足となってしまいかねません。
最後に
化学プラントにおける予備管理は、故障したら交換するための在庫を持つことだけが目的ではありません。
適切な数量設定、寿命管理、廃棄計画、設備台帳の維持、そして機種統一まで含めて考えることで、初めて効率的な保全体制が実現します。
予備を増やせば安心という単純な話ではなく、設備停止リスクと管理コストのバランスを最適化することこそが、化学プラント保全の基本的な考え方です。
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【著者:ねおにーーと】
化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら
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