化学プラントには「怖い」というイメージを持つ人が多いですが、その怖さの理由や感じ方は人によって異なります。外部の人は何をしているか分からず不安を抱き、社内の事務系は薬液の性質に不安を持ち、現場の製造や機電系エンジニアは扱う薬液の危険性を肌で感じています。さらに研究者は、正しい危険認識と周囲の誤解のギャップに悩むことも。
この記事では、化学プラントの怖さの正体を4つの視点から解説し、その背景と対策について考えます。
【外部】何をしているか分からないので怖い
世間一般のイメージとしての「化学プラント怖い」は、不気味・何をしているか分からないという感じでしょう。
- 隠れたところでコソコソ何かを作っている
- 何か問題があったら地域住民に影響を与える
- 平和そうに見える今でも、実は被害を与えているかもしれない
テロなど物騒な話ともリンクされるイメージです。
日常で少し怪しげなにおいが出たり、工事で少し大きな音を出したりすると、即問い合わせを受けます。
下手をすると立ち退きという話にも。
そうならないように信頼関係を作るのは簡単ではなく、長年にわたる安全状態の維持とコミュニケーションが必要です。
地域住民との対話を専門とする部署(総務)があったりするくらい。
地道な活動で、成果が見えにくいです。
定期的な対話と実績つくり
【社内】どんな薬液を使っているか分からないので怖い
どんな薬液を使っているか分からなくて怖い、という少し具体化されたイメージを持つのは社内の事務系の人達です。
化学は怖いものというイメージがありつつ、社内で知っている人が生産活動などに関わっているので、多少は安心感があるようです。
プラント現場には積極的に近寄らず、製造の人とは事務所で話す程度なので、化学に対するイメージは一般の人と大差ありません。
自分たちは事務系だから工場にいるけど、怪しい化学物質とはできるだけ関わりたくない。
こんな一歩引いた目線でプラントを見ています。
中には口に出す人もいます。
同じ社員なのに・・・。
彼らのイメージを緩和させるためには、とにかく問題をおこさない実績つくりしかありません。
プラントから何かを漏らしたり燃やしたりすることなく、安全に運転できているという実績は、何か良く分からない怖い物質を上手くコントロールしているという信頼感に繋がるでしょう。
問題を起こさない実績つくり
【製造】薬液が○○なので怖い
取り扱っている薬液の一般的な性質を知っていて怖い、というもう少し具体化された怖さを持っているのは製造関係や機電系エンジニアなどです。
製造管理者やプロセス・実験などの化学物質と触れる人は、この情報を適切に扱います。
しかし製造オペレータや機電系エンジニアは、そうでもありません。
SDSなどの情報を見る機会もありますが、何となく怖い・どれもアブナイ、という認識。
変に強弱をつけて、過小評価をしてしまうよりは安心ですけど・・・。
良く分からないので、とにかく隔離をして接触しないように努力します。
保護具を付けたり、設備を頑丈にしたり。
運転時のミスオペで漏れが起きたり、触れてしまったり、設備が壊れたり、それでも人に被害が及ぶことは多くはない、という現場の生の姿を見てしまっているがゆえに、感覚がマヒしてしまう人もいます。
設備がボロボロなのに、まだ行けると謎の無茶をする人も居ます。
定期的な教育をするのが大事ですが、難しくて理解できないかも知れないので、最も大事な原則だけを叩き込むのが良いかもしれません。
何かあったらすぐに逃げる。
これができていれば、大きな問題にはなりmせん。
何かあったらすぐに逃げるように指示
【研究】周りの人が騒ぐのが怖い
怖い怖いと騒ぐ人が怖いというケース。
研究など化学物質の特徴を適切に理解している人です。
危険性を正しく理解しているので、本当に危ない場面では、非常に的確な判断と指示をします。
問題はそれ以外。
あまり危険でないからと、手を抜いてしまう姿を見せてしまう人が居ます。
本当なら過剰に見える対策でも、現場で勘違いされると困るので一律同じ対策をしていて、それが無意味だと思って手を抜きたくなります。
例えば、過剰に手袋を付けてプラント設備に触らないようにする、などでしょうか。
自己責任で判断して、周りに迷惑を掛けないはず。
そう思いたいのですが、周りからは「研究の人が不要と言っているからきっと大丈夫」という省略行為に繋がってしまいます。
その結果問題が起きてしまったら、「研究の人が同じようにやっていたから、自分は悪くない。教育と管理をしない会社が悪い」と責任転嫁をしてきてもおかしくありません。
作業標準を作成して徹底運用を行い、保護具を適切に使用し、設備の維持管理を徹底する。
自分から率先しないと周りが付いてこないという意識を持ち、ソフトハード面両方でできることをすべて行うという体制が求められます。
とにかく隙を作らないことが大事ですね。
ソフトハード面での拡充
参考
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最後に
化学プラントの「怖さ」は、外部の未知への不安、社内事務の距離感、現場のリアルな危険感覚、研究者の厳しい安全意識といった多様な側面から成り立っています。これらのイメージや感覚を緩和し、安心して働き、暮らせる環境を作るには、多大な努力と継続的な安全実績の積み重ねが不可欠です。
信頼の構築は一朝一夕にはいかないものの、全員が安全文化に参加することが、化学プラントの真の安全と信頼につながります。
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