化学プラントにおける機械装置の位置決めは、安全性と効率性を確保する上で欠かせない要素です。特に、連続運転が求められる化学機械では、適切な位置決め技術の選択と運用が、事故防止や装置の長寿命化に直結します。
本記事では、化学プラントで採用される主な位置決め技術と、それぞれの特徴や注意点について解説します。
化学プラントの機械設備で動く部品の位置決めが話題になることは、ほとんどありません。はさまれ巻き込まれを防ぐための、安全装置で登場する場合がある程度でしょう。
化学機械には制御という概念が少なく、何も手を加えなければ、限界まで動き続けるような機械が多いです。モーターのように延々回り続ける設備が良い例ですね。こういう設備を使いながら、機械部品の位置を決める方法がいくつかあるので、代表的な物を紹介しましょう。
一般的な機械とは少し勝手が違うと思います。
機械的に位置(positioning)を決める
位置決めの典型例は機械的に止めるという方法です。
例えばピストンのような形状をしていて、シャフトが左右に動く機械を考えましょう。

この場合、シャフトがどれだけ左右に動こうとしても、ケースの外に出ることはありません。
その分だけケースは強度を持たせます。
シャフトの動きは制御が可能です。
モーターなどの機械的な力で動くシャフトを、ケースと強引に押さえつけて止める仕組みなので、シャフトもケースも摩耗してきます。
金属同士であれば接触粉が、異物になったり、プロセス液の安全性を阻害したり、焼き付いて取れなくなったりします。
動きの制御を掛けるというよりは、最終安全装置という位置づけの方が良いでしょう。
信頼感は抜群です。
機械的に止めるだけなので、制御を掛けることはできません。
モーターの電流値が上がって、オーバーロードでモーターの動きを止めるという受動的な結果になるでしょう。
リミットスイッチで位置(positioning)を決める
リミットスイッチでの位置決めは、王道中の王道。
まずはこの方法で対応できないか考えましょう。

リミットスイッチはシャフトと接触はするものの、すぐにスイッチが動いてシャフトの動きを邪魔しません。
スイッチの入り切りの電気信号を取り出すことが可能で、次の制御に使えるため、自動制御を考えるときにとても重要です。
機械式に止める場合に比べて、設備の損傷も起こりにくいです。
あえて言うと、リミットスイッチが壊れるリスクはあります。
適切なタイミングで交換できるように、スペアパーツの管理が大事ですね。
光検出スイッチで位置(positioning)を決める
最近の位置決めでは光検出スイッチを使う場合があります。
リミットスイッチのように機械的な接触がないから、長持ちするだろう。
そう思って光検出スイッチを採用するケースは多いです。
これが機械設備としては結構な曲者。
特に、この図のようにクローズド系で扱うと、大抵失敗します。

光検出スイッチは、ピストンが通るときとそれ以外とで光の跳ね返る時間が変わることを利用した方式です。
原理はシンプルですよね。
これがなかなかうまくいきません。
というのも、機械油の影響を受けるから。
グリースや潤滑油が塗られた設備で、運転環境の影響を受けやすい化学設備では、光検出の阻害をして運転できないケースが結構出てきます。
個人的にはリミットスイッチの方が安心感があります。
近接スイッチという意味では、光以外にも検出方法がありますが、検出が難しくてあまり採用されません。
サーボモーターで止める
サーボモーターやステッピングモーターで動きを制御するという方式は存在します。
これも時々うまくいきません。
光検出スイッチと同じで、機械油の影響を受けます。
また、化学装置の場合、運転条件が安定しているわけではありません。
パルス信号を受けてモーターが適切に動くかどうかが、運転条件に左右されてしまうので、思わぬ条件で使えなかったりします。
便利な機械のはずですが、信頼感が落ちてしまうのが残念です。
この辺りの発想が、化学装置の保安装置にも直接関連します。
自動制御を信じない装置が多いですよね。
時間で止める
動きを制御するという意味では、時間で止める方法があります。
タイマーの設定をすることは、化学プラントの自動制御でも判定条件の1つに入れます。
これを機械部品の動きにも取り入れることは、普通のこと。
上手くいく確率はありますが、あまり高くはありません。
光検出やサーボモーターと同じように、機械部品や運転条件の影響を受けます。
安全性を高めるための、判定条件として考えるくらいでちょうど良いでしょう。
リミットスイッチを基本にして、スイッチが壊れたときにも止めるように、機械的なストッパーやタイマーを条件に加えます。

参考
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最後に
化学プラントにおける機械装置の位置決めは、安全性と効率性を両立させるために、装置の特性や運転環境に応じた適切な技術の選択と運用が求められます。各手法のメリットとデメリットを理解し、定期的な点検とメンテナンスを行うことで、安定したプラント運用を実現できます。
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