粉体を製品とするプロセスでは乾燥機が一般に使用されます。
この乾燥機は、化学プラントでは特殊な扱いで、非常に重要な役割を果たします。
機械に求められる特性・プラント内での乾燥機に求められる役割などを整理します。
乾燥機という機械の特性
乾燥機という機械に求められる特性を、重要なもの3つ選びました。
均一に加熱する
粉体を乾燥させるという目的は、非常に重要です。
液体だけのプロセスであれば撹拌槽にジャケットが付いていれば、目的をかなり達成できます。
ところが粉体を均一に加熱させようとすると、実は結構難しいです。
液体よりも混ぜることが難しいからです。
- 撹拌槽と同じように撹拌を内部に付けて、混ぜる
- 撹拌なしだが、本体自体を大きく揺らして、混ぜる
- 混ぜる必要が無いほど、薄く広く伸ばす
いろいろなパターンがありますが、粉体を均一に加熱させるという性質は共通です。
不均一に加熱をした場合、例えば乾燥してない粉体と、乾燥した粉体が出来上がってしまうなど、製品の品質がバラバラになってしまいます。
製品でなくて中間体などであっても、次のプロセスで影響を与えかねません。
低温で加熱できる
粉体の場合、液体よりも低温で加熱したいというニーズがあります。
高温で加熱すると、溶けてしまったり不純物ができたり、品質面で悪影響が出かねません。
液体よりも慎重に扱わないといけないでしょう。
系内を真空にして、常圧よりも低い温度で加熱することが大事です。
そうすると、装置としては真空下でも使える耐圧性が求められます。
運転制御ができる
乾燥機では運転制御が意外としにくいです。
制御ができる設備は重宝します。
撹拌機や本体を揺らすパターンでは速度制御が可能ですが、液体よりも制御範囲は狭いです。
速度を遅くし過ぎてしまっても、早くし過ぎてしまっても、負荷が高くなって運転できなくなるでしょう。
加熱源はスチームの場合は制御しやすいですが、低温で加熱するという目的で温水を使用する場合は、制御がやや難しくなります。減圧のスチームを使おうとすると、追加の設備が必要となりコストは一般に上がるでしょう。
化学プラント内での乾燥機
化学プラントで乾燥機というと、独自のニーズがあります。
処理量が多い
乾燥機は処理量がとにかく問題になります。
液体系で反応をさせて、道中の工程や最終の工程で乾燥機を使う場合、乾燥機の容量が不足しがちです。
乾燥前に濾過を行いますが、濾過前のスラリーの密度と乾燥後の粉体の密度を比べると、大差ないかスラリーの密度の方が低いでしょう。
撹拌槽の容量の方が、乾燥機の容量よりも遥かに大きいため、液体の取り扱い量の方が大きくなります。
乾燥機の容量は大きければ大きいほど、製品の増産という点では有利になります。
異物問題が起きない
乾燥機は異物を発生させる要因となる機械です。
乾燥機から出た粉体が最終製品となる場合、ここで異物が出てしまうと後で処理がとても大変になります。
- 撹拌機付きの場合、撹拌機そのものとシールが異物
- 真空乾燥の場合、フィルターが異物
- 乾燥不良が起きた場合、液体が異物
- 接続配管のボルトやガスケットが異物
異物のリスクを減らすためには、機械本体を揺らすタイプが一番低いです。
逆に、棚段乾燥など一度元の設備から粉体を取り出さないといけない機械だと、空気中のごみが異物となりえます。
クリーンルームなど特殊な設備が必要となるでしょう。
メンテナンス費が安い
乾燥機は特殊な設備なので、メンテナンス費がとても高いです。
プラントの安定運転のためには修繕費はできるだけ抑えたいのに、乾燥機に掛かるメンテナンスは年々上がっています。
修繕費全体の中でも、乾燥機のメンテナンスがトップクラスとなるプラントも珍しくないです。
高額な設備を多数扱う化学プラントでは、メンテナンス費が安い機械は重宝します。
空気と触れない
化学プラントでは乾燥機に粉体を投入する時に、空気中で取り扱うことを避けたいです。
粉体自体が空気中に触れると、引火爆発する可能性があるからです。
ろ過設備や粉体ホッパーなどと繋がって、密閉系になっているプロセスは安心感が違います。
空気と触れない乾燥機の中には、コニカル乾燥機など接続配管を付けたり外したりするタイプもありますが、付け外しの作業自体が面倒ですし、異物混入のリスクもあります。
参考
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最後に
化学プラント向けの粉体乾燥機に求められる性質をまとめました。
均一・低温加熱で運転制御できることは乾燥機一般に重要です。
化学プラントとしては、処理量の多さ・異物問題が少ない・メンテナンス費が安い・空気と触れないなど独自の要求事項もあります。
金額の高く、数も少ない設備なので、慎重に取り扱いましょう。
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