配管にはバイパスラインが付いていることが多いです。
何となく昔から使っているから使うのが当然だと思ったりしますが、実は結構考えないといけません。
当たり前を疑ってみましょう。
バイパスラインの構成
バイパスラインの定義を最初に紹介します。
迂回路の意味があるバイパスラインはメインラインを回避するラインとして設置します。
黄色部には装置や配管部品などが設置されています。
通常はメインラインを通して、目的の運転を行います。
ところが対象となる装置や配管部品(黄色部)は故障することがあります。
この場合にも、運転を止めないようにするためにバイパスラインを設置すると言われています。
バイパスラインはメインラインが故障したときに使う
具体例
バイパスラインの目的は明確ですが、バッチ系化学プラントで使う時には少し考えが必要になる場合があります。
具体例をいくつか見てみましょう。
ストレーナ
ストレーナにはバイパスを設けます。
まさにバイパスの基本。
ゴミ取り目的のストレーナにゴミが溜まっていき、詰まったらバイパスに切り替えます。
これは分かりやすい例ですね。
ところで、ゴミ取り目的で使うストレーナがあるラインで、ストレーナがないバイパスを使うことはいいことでしょうか?
取りたいゴミが取れずに流れていってしまいますね。
ストレーナにバイパスラインを設置するなら、バイパスラインにもストレーナを設置して、切替運転ができるようにした方が好ましい場合が多いです。
シンプルにバイパスラインにストレーナを設けても良いのですが、流れが均一になるように枝分かれの位置を変えることもあります。
特にスラリー系で閉塞が強いラインでは、どちらを選ぶか悩みます。
メインラインが真っすぐで詰まりにくい左側を選ぶか、詰まるリスクが2ラインとも同じ右側を選ぶか。
配管設置スペースとも関係しますので、どちらかが絶対に正しいというわけではありません。ケースバイケースですね。
ポンプ
ポンプにバイパスを設置する例があります。
この場合は、ポンプが直列のブースターポンプの役目を持ちます。
ブースターポンプが壊れて修理している場合にも、バイパスラインから液を流したいニーズはあります。
ブースターが無くても液がある程度流れたり、圧力が少し低かったりという程度であって、緊急時の冷却目的などで止めることができない場合には、バイパスを使いましょう。
反応など流量や圧力が絶対に必要という場合には、ブースターポンプが壊れることは運転停止を意味します。
バイパスラインを付けても大して意味がないでしょう。
流量計
流量計にバイパスを付ける例があります。
これは流量制御が大して重要でない系に限定されるでしょう。
流量計は壊れる可能性がありますが、壊れてもバイパスラインを通したいというニーズ。
バッチ系化学プラントなら機会は少なく、運転を止めた方が安全です。
安全に運転を止めるための冷却源に流量計を付けている場合には、バイパスラインがあった方が良いでしょう。
逆に加熱源であるスチームラインにバイパスを付けると危険です。
流量計でスチーム流量を落としているのに、バイパスラインを使うと制御流量よりも大きな流量が流れる可能性があります。
慎重にしないと危ないということは認識しましょうね。
手動でバルブ開度や他の計器の情報をチェックしながら、運転していくことになるでしょう。
逆止弁
逆止弁にはバイパスラインを付けることがあります。
上下向きに逆止弁を付けると、逆止弁の上側には水が溜まります。
ポンプを止めて逆止弁上部に液が残ったまま、再度ポンプを起動しようとしたら、逆止弁下側の空気溜まりが抜けずに起動できなくなる場合があります。
ここでバイパスを付けると、逆止弁上側の液が抜けるので、ポンプが起動できる可能性が上がります。
バイパスを故障とは違う意味で使う例ですね。
スチームトラップ
スチームトラップにもバイパスラインを付けます。
詰まりやすいスチームトラップがあると、配管内部で圧力を持ってしまって危険な状態になりえます。
この場合に、バイパスラインから蒸気を流しておいて、メインラインのスチームトラップを安全に交換します。
ドレンという液抜きの目的もありますので、バイパスラインとしては必須です。
配管構成上は枝分かれした側にスチームトラップを付けるので、バイパスライン側にスチームトラップが付いていると表現できなくはないですね。
参考
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最後に
バイパスラインの基本と、バッチ系化学プラントでの使い方を紹介しました。
ストレーナ・ポンプ・流量計などは使い方が結構難しいです。
逆止弁やスチームトラップは、運転上・保全上必要となります。
標準的にとりあえず付けていても良さそうですが、実際に使うかどうかは別問題ですね。
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