ボルテックスチューブという面白い機械があります。圧縮空気だけで冷気を作り出すという機械で、化学プラントでも使えないかと一時期検討しました。こういう技術はその環境で初めて使うという時にはいろいろと考えることがあり、楽しいです。
化学プラントでボルテックスチューブを使うという時に気を付けたいことをまとめました。
作業環境改善
ボルテックスチューブは圧縮空気から冷気と暖気を分ける機械です。原理をちゃんと理解しようとしたら非常に難しいのですが、実用する分には原理は知らなくても問題ありません。電気を使わずに冷気を得られるというのは、熱中症が大きな問題になっている日本では作業環境を改善する目的で魅力的です。
ボルテックスチューブはいろいろなメーカーが製造していますが、例えば以下が参考になるでしょう。
化学工場では化学品の暴露防止のためにエアーラインスーツを付けて作業することがあります。壁で囲われていない空調がない場所でも使用することがあり、夏場は熱中症のリスクがとても高くなります。
エアラインスーツは空気を服の中に送り込んで使用するため、圧縮空気が必要です。圧縮空気は大気よりも高温なので、これを冷やして服の中に送り込む必要があります。このために冷凍機や熱交換器を使うと費用が膨大になるので、ボルテックスチューブは1つの解決策として考えられます。

使用流量が下がる
ボルテックスチューブは圧縮空気を冷気と暖気に分けるという仕組み上、入口の空気のうち一部分を冷たい空気として使うことになります。ざっくり冷気:暖気=1:1くらいになるとしても、使用流量は半分くらいになります。
この事実はボルテックスチューブを使う上でよく考えておかないといけません。例えば
・エアーの供給能力が思ったより少なくてエラーラインスーツの流量が足りない(≒酸欠)
・エアーラインスーツへの供給を増やすばかりに、自動弁などの開閉が悪くない(≒保安)
といった問題を引き起こしかねません。
エアー系統の組み方にもよりますが注意が必要であることは変わりません。エアー系統はユーティリティの中でも把握が難しいからこそ、しっかりと考えておかないといけません。
固定方法が難しい
ボルテックスチューブはとても小型で軽量です。できるだけ冷たい空気を使いたいし温度調整をするためにも、ボルテックスチューブはエアーラインスーツの直近に付けて人が操作できるようにします。
エアーラインスーツはとても大きくて視界を悪くします。ボルテックスチューブがエアーラインスーツにしっかりついているかどうかは分かりにくく、作業時に落下する可能性も。この場合、エアーラインスーツは適正に機能しないどころか、パニックになったりして災害に繋がりかねません。
このリスクが非常に高いので、エアーラインスーツにボルテックスチューブを使うのは難しいというのが私の考えです。
高温の空気が危ない
エアーラインスーツは圧縮空気を冷風と温風に分ける機械ですが、温風は非常に高温です。
やけどのリスクは高いし、エアーラインスーツに固定した時にはエアーラインスーツが溶けて使用できなくなるリスクもあります。視界が悪いエアーラインスーツでボルテックスチューブの状況を常に監視するのは難しく、作業環境を良くしようとしたのに作業性全体が悪くなってしまうという結果になりかねません。
最後に
ボルテックスチューブは、圧縮空気から冷風を作り出せるため、化学プラントでもエアラインスーツのように圧縮空気をもともと使用している設備では、追加の冷凍設備を設置せずに冷却できるという点は魅力的です。
一方で、実際に採用する場合には、冷風の温度だけを見るのではなく、供給流量の低下、圧縮空気系統への影響、固定方法、高温側空気による火傷や装備損傷、作業者の作業性まで考える必要があります。
私自身、化学プラントでこうした新しい技術を使えないか検討することは面白いと思っています。ただし、化学プラントでは技術的に使えるということと現場で安全に使えるということは別問題です。
ボルテックスチューブを使うのであれば、冷却性能だけではなく、実際の作業環境まで含めて成立するかを検討することが重要でしょう。
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【著者:ねおにーーと】
化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら
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