私は20年以上の化学会社のキャリアでバッチプラントのみを担当してきました。バッチプラントが当たり前になり過ぎた自分にとっては連続プラントが特殊に見えますが、多くのエンジニアにとっては逆。連続プラントが当たり前の世界です。
バッチプラントの説明をしようとする場合、連続プラントの比較をすることは理解を助けます。バッチプラント担当だから連続プラントを知らなくてもいいわけでもなく、知っていると使える場面は出てきます。
バッチと連続の比較
バッチプラントを連続プラントの比較でみると言っても、いろいろな視点で見れます。ここでは代表的な物をいくつか並べてみます。
バッチプラントでも種類は様々ありますので、完全に一致しているものばかりではないでしょうが、一般知識として大きく外れてはいない内容です。
| 連続 | バッチ | |
| 生産品目 | 少品種大量 | 多品種少量 |
| プラント全景イメージ | 凸凹した形 | 直方体 |
| メイン装置 | 塔 | 反応器 |
| 材質 | ステンレス | グラスライニング |
| 静機器・動機器 | 静機器が多い | 動機器が多い |
| 手動自動 | ほぼ全自動 | 手動あり(仕込・充填) |
| サンプリング | スポット | ほぼ毎バッチ |
| 制御 | PID | シーケンス |
| 作業スペース | 狭い | 広い |
| 稼働の考え方 | 絶対止めない | 止めてもいい |
| SDMの頻度 | 数年に1回 | 毎年 |
| 運転条件 | 高温・高圧 | 常温・常圧 |
生産方式としての連続とバッチは少量多品種か多量少品種かの違いです。これは化学プラント従事者にとっては分かりやすい内容なので今回は省略します。興味がある方は、以下の記事をご確認ください。

以降は、設計・運転・保全それぞれの目線でどういう特徴があるかを、それぞれ簡単に解説します。
設備の特徴
バッチプラントの設備の特徴は多数の反応器を使うことです。化学プラントというと多くの塔が並んでいる姿をイメージする人も多いでしょう。これは連続プラントの特徴であって、バッチプラントでは塔の数は多くはありません。代わりに反応器をいっぱい使います。
塔はサイズが大きいのでプラントの外側から見てもすぐに分かります。一方で、反応器はプラント内部にセットされていて、外からは見えにくいです。この反応器を複数個並べて様々な反応をするのがバッチプラント。反応器の組み合わせでいろいろな反応ができるので、多品種少量向けの装置です。
塔に合わせてプラントを作る連続プラントではプラントの形は一見凸凹した形です。バッチプラントではプラント内に反応器を収めるため、プラントの外観は直方体のシンプルな建物に見えます。
反応器はグラスライニングという特殊な設備を使います。鉄の表面にグラスをつけたもので、耐食性を上げたもの。連続プラントではステンレスの設備が多いので、グラスライニングになじみが少ない人も実際には多いです。バッチプラントではむしろグラスライニングが普通くらいのイメージなので、この感覚差はとても大事です。
設備は静機器と動機器の2つに分かれ、モーターを使うものが静機器・使わないものが動機器という大きな区分をします。連続プラントではモーターを使わない塔などの装置が多くて静機器中心、バッチプラントでは反応器で撹拌機を動かすためのモーターが多いので動機器中心です。
運転の特徴
バッチプラントの運転の特徴は手動操作が多めということ。メインの反応などプロセス部分は自動弁や計器をつけることで自動化ができて、連続プラントと大きな違いはありません。反応器やバルブの操作で手動が多いということは必ずしもいえません(これらの操作でも手動が多い傾向はあります)。
バッチプラントでは粉物の原料や製品の形態が多く、包装形態もバラバラなので手動で作業することが多いです。
工程中で品質を作りこむために工程分析を行いますが、そのためのサンプリングがバッチプラントでは多いです。連続でもサンプリングはありますが、頻度が違います。バッチプラントではバッチ単位でサンプリングをするため1バッチ/1日のよくある操業形態だと、毎日サンプリングが必要です。
運転制御方法もDCSの連続制御ともいえるPID制御に頼ることは少なく、段階制御であるシーケンス制御を良く使います。PIDもシーケンスもバッチでも連続でも使いますが、割合の問題です。これは初心者にとっては難しい部分ですが、制御思想が大きく違って理解が難しいということだけここでは把握できていれば良いと思います。
手動操作が多いため、プラント内でも作業スペースを広めにとります。原料などの一時保管場所としても役割もあります。プラント内に入ると、連続プラントだと所狭しと設備や配管が並んでいても、バッチプラントだと少し広めに床スペースを取っていたりします。
保全の特徴
保全の考え方も、連続とバッチでは異なります。連続プラントだととにかく運転を止めないことが優先されます。24時間365日安定して動かして連続操業のメリットを出すためです。少しのトラブルにより生産ロスは、プラントを止めたり再稼働させたりする日数が加わってしまい、生産量を減らしてしまいます。
バッチプラントだと停止や立上のリスクが少ないので、何かあったらプラントを止めるということが可能です。
SDMも連続だと数年に1回の大規模な修繕になりますが、バッチだと1年に1回少しずつ周旋することが可能です。
運転条件は連続の方が厳しく高温高圧下での取り扱いが多いです。これは作業者にとってもリスクがあるだけでなく、設備にとってもリスクがあります。だからこそSDMでしっかりメンテナンスする必要があります。
バッチだと温度や圧力は厳しいものではないので、リスクは少なめです。これはグラスライニングの設備能力に引っ張られる部分があります。グラスライニングはステンレスに比べると壊れやすいので、メンテナンスとして特別なケアが必要となります。その意味ではバッチの方がメンテナンスが楽とは必ずしも言えません。むしろ、取り扱いが難しい設備や配管として、連続プラントのメンテナンス作業者からは敬遠される要素になりえます。
参考
最後に
バッチプラントと連続プラントは、生産方式だけでなく、設備構成、運転方法、保全の考え方まで大きく異なります。
- 設備では塔と反応器
- 運転では自動運転とシーケンス運転
- 保全では止めない思想と止められる思想
この違いを理解すると、自分が経験していないプラントでも設計思想や運転方針をイメージしやすくなります。
化学プラントエンジニアとして知識の幅を広げるためにも、両者の違いを理解しておくことは大きな武器になるでしょう。
この記事の内容を、あなたの職場・キャリアに合わせて整理したい方に技術・キャリア相談を行っています。海外プラント、製造管理、組織の病理、キャリア停滞など、あなたの状況に合わせて具体的にアドバイスします
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【著者:ねおにーーと】
化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら

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