化学プラントでは多種類の液体やガスを使い、流量を一定に制御しながら安全に運転する必要があります。ここで重要なのが流量計ですが、中でも安価な面積式流量計(フローメーター)は使う機会が多いです。
本記事では、化学プラントで面積式流量計を使う場面をいくつか紹介します。
面積式流量計の位置づけ
化学プラントで使う様々な流量計の中で、面積式流量計がどういう位置づけかをまずはおさらいしましょう。

| 種類 | 用途 | 直管長 | 圧力損失 | 価格 |
| 電磁式 | 水 | 要(短) | 0 | 高 |
| 渦式 | スチーム | 要(中) | 小 | 中 |
| コリオリ式 | 油 | 不要 | 中 | 高 |
| 面積式 | 油・ガス | 不要 | 小 | 安 |
| 容積式 | 校正 | 不要 | 大 | 高 |
安価な面積式流量計は、いろいろな使い道があることが期待できますね。
窒素パージ用
面積式流量計を一番使いやすい場所は、窒素パージです。
窒素パージなど化学プラントの危険物の引火爆発を防ぐ目的で、窒素は大量に使います。窒素は高いのでできるだけロスが無いように流量は絞りたいものです。ここで適正な流量を監視する目的で流量計が大事になります。
窒素というガスの流量を安価に測る方法は意外となく面積式流量計はその候補の1つです。ガスで汚れも無い窒素だからこそ、面積式流量計を使って詰まる可能性がないことも大きなメリットです。
本当に大事な個所なら自動制御を考えますが、屋外タンクなど常時使用する場所には手動の面積流量計を設置して、バルブを絞って流量が一定範囲にあることを定期パトロールで確認する、という方法を取ります。
バッチ運転など常時パージ用とブロー用がある場合には、常時パージ用に面積式流量計を設置します。
真空調整用
窒素と同じようにガス目的でのニーズは真空調整として存在します。

プロセス内の圧力を調整するには、真空ポンプで速度調整をする方法と空気を外部から取り入れて流量調整をする方法があります。前者の速度調整は意外と難しいので(ポンプと同じです)、後者の空気を外部から取り入れる方法が簡便です。
ここで取り入れる空気流量が分かると、運転調整がしやすくなります。ただし、圧力の自動調整だけで十分で流量を監視したりカスケード制御などに使うというニーズは必ずしも高くはありません。
過剰に空気が入ると引火爆発の危険性があるので、安全監視目的で設置するというのは1つの手かもしれません。
還流
ガス用途として使いやすい面積式流量計ですが、液体向けにも当然使えます。
面積式流量計は精度がそこまで高くないので、液体で一定の流量をコントロールしようとする場合には向きません。何となく流量を監視制御したいという場合に適用するのが良いでしょう。
代表例が還流です。蒸留では、加熱源であるスチーム流量と還流比が大事な要素です。
還流比を決めるための流量計はある程度の精度が欲しいので、例えば留出ライン側に別の流量計を使うとしても、還流ライン側は一定の範囲で流れていることさえ確認できればいいというニーズがあります。
スチーム流量をそれなりにコントロールしても、蒸発量は意外と変動するため、還流量をピッタリにコントロールしようとするよりはある程度の幅を持たせるプロセスの方が安心という場合は多いです。
また一度蒸発した液体を凝縮させているので、粉体など異物が入ってくる確率は低く、面積式流量計が有利な場面でもあります。
液体で、流量をある程度の幅で管理したく、汚れもない、という理想的な条件があまりないことを、この例を通じて理解したいですね。
参考
最後に
面積式流量計は、精度では他の流量計に劣るものの、
“必要十分”の計測でよい場面では最もコスパの高い選択肢になります。
特に化学プラントでは
- 窒素パージ
- 真空調整
- 還流ライン
といった用途で強みを発揮します。
「高精度は不要。でも流量の目安は欲しい」
そんな時に、面積式流量計は現場で頼れる存在です。
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