化学プラントの配管設計を長い間していると、配管ラックに配管を乗せる場所が無くて困ることがあります。
その割に予算は決まっている。
新たなラックを建てることはできない。
となれば、下のような強引な継ぎ足しが行われます。
ラックの強度不足
配管ラックは配管の大きさ・内容物などの荷重条件を基に設計されます。
この例のように、半ば強引にラックを継ぎ足していくと、強度不足になる可能性は容易に想像できます。
特に柱の強度が足りなくなる可能性が怖いです。
強度計算上は適切な余裕を見ているので、すぐにラックが壊れるなどの大問題になることは無いでしょう。
ある種、成功体験となってしまいます。
だからこそ、どこまででも継ぎ足しでも良いものだという、悪い錯覚を抱くでしょう。
作業の障害
ラックを継ぎ足していくと、作業の障害となりえます。
作業と言っても様々。
- 下に継ぎ足していくと、消防車・重機などの通行障害
- 横に継ぎ足していくと、消防車の通行障害やプラント建設の障害
- 上に継ぎ足していくと、配管更新の障害
消防法や石災法に関係する法的な制約なら一発アウトなので、さすがに守るでしょう。
社内規定で定めるような空間を確保できないことの方が、起こりやすいです。
規定に違反はしていないけど、作業がしにくいといった静かな問題の方が多いです。
更新や補修ができない
上に継ぎ足していく場合が典型例ですが、配管更新や補修がしにくくなります。
例えば最上部に電気ダクトや大型配管を施工している配管ラックがあり、その上部にラックを継ぎ足したとしましょう。
ダクト上部の開放や、配管の持ち出しができなくなります。
そこまでではなくても、上部スペースが狭くなるので作業がしにくくなるのは、間違いないです。
横に継ぎ足していく場合、ラックが古くなって更新や補強をしないといけないときに障害となります。
というのもラックごと交換する場合でも、ラックを補強する場合でも、すでに乗っている配管類をどう指示するのか?という問題が起こります。
単純なラック構造ならその被害が狭くても、ラックの形を複雑にすればその分だけ対応が難しくなります。
更新や補修に関して、作業時間が延びるので、メンテナンスコストとして効いてきます。
10年20年ではこの問題が見えないですが、30年40年と経つと問題になります。
その時になって考えれば良いという、無責任な設計となりやすいです。
腐食やコンタミ
上に継ぎ足していく場合が典型例ですが、腐食やコンタミの問題が起きえます。
例えば一番上には電気ダクトなどを置いて、液体系はその下に置くことが基本です。
腐食性のある液体や多量の水が、電気ダクトの上部にあると、何かあった時に二次災害になりますよね。
上にラックを継ぎ足すということは、このリスクを適正に評価しないといけません。
適正な配管数の設計を
配管ラックの継ぎ足しが起こるのは、初期設計が悪いからです。
工場全体を考えた設計が大事です。
特に問題になりやすいのは、原料ヤードもしくは廃棄物ヤードと工場ヤードとの間のライン。
プラントの種類や中で取り扱っている製品によって、1プラントあたりの原料数や廃棄物数は変わります。
昔のプロセスなら数が少なくて済んでいても、昨今の複雑なプロセス・省エネ・環境規制などの面では、数倍~10倍程度の数の配管が必要になりえます。
工場全体で設置できるプラントの数と、配置できる原料・廃棄物の数を適切に拾い上げ、必要なラックサイズを決めることが大事です。
後になってラックごと増設しようと思っても、ほぼ不可能です。
参考
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最後に
配管ラックを継ぎ足していくと、強度不足・作業の障害・メンテナンスの障害などのさまざまな問題が起きます。
そもそもラックの大きさは工場全体の大きさ・プラントの数を基に設計しないといけないのに、意外と考えられていないから、後になって足されていきます。
工場を一から建てるときには、しっかり考えましょう。
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