バッチプラントは同じ会社・同じ目的の製造品目であれば、非常に似通ってきます。
概念設計する人が変わらないから、当たり前ですよね。
複数のプラントに対して、都度生産品目を導入していきますが、どのプラントが最適なのかを選ぶには、プラントごとの癖を知らないといけません。
似た設計にすればするほど、違いが分かりにくく、違いを浮き彫りにするためには次のような比較が大事です。
化学プラントを例に解説します。
反応器
バッチ系の化学プラントは反応器がメインです。ここをまずは抑えましょう。
数・容量
反応器の数と容量は最初にチェックしておくことです。
1プラントで10~20個程度なので、簡単にリストアップできるでしょう。
容量のほかに、当然材質も揃えます。
撹拌翼・バッフル・軸封・インバータなどのパラメータをリストにしましょう。
プラントによって数そのものが違えば、サイズが違うなどの明確な指標になります。
材質やアクセサリーで意外と違う部分があったりします。少し調べるだけでも違いが分かり、面白いですよ。
高耐食性金属
材質はグラスライニングが多いですが、まれにステンレスやハステロイなどの金属材料の反応器を使うでしょう。
これは非常に貴重な情報となるので、材質と数のデータを集めましょう。
汎用性が大事なバッチプラントですが、金属材料の反応器は少しあるだけで汎用性がさらに広がります。同じ材質で揃える方が、汎用性が無くなるというのは興味深いですね。
高圧設備
常圧もしくは減圧での反応を行うことが多いですが、まれに高圧での反応を行います。
そのための専用設備としてオートクレーブを持っているかどうかも、チェックしましょう。
プラントによって1か0かという違いですが、その違いが特性を生みます。
他の設備
バッチ系化学プラントだと、反応器を調べるだけで6割程度は全体像が把握できます。
少し調査レベルを上げるためには、他の設備をいくつか調べましょう。
全部を調べる必要はなく、特定の設備を拾うことが大切です。
濾過乾燥の有無
化学プラントの場合、濾過乾燥設備があるかどうかは非常に大きいです。
製品の形態が液体なのか固体なのかの違いが出ます。
輸送・安全性の問題にも関わりますし、そもそも高価な設備になります。
能力は反応器の容量に依存します。
高圧設備と同じで、プラントによって1か0かという違いですが、その違いが特性を生みます。
充填塔の数
化学プラントの反応では、必ずと言っていいほど溶媒回収を行います。
ここで充填塔を使った還流を掛けます。
充填塔は高価かつ設置場所が限られるので、プロセスの自由度を左右させます。
能力は反応器の容量で決まるので、充填塔の仕様を細かくチェックする必要は基本的にありません。材質くらいは調べても良いでしょう。
意外かも知れませんが、こういう部分でもプラントの差が出ます。
真空装置の数
真空装置の数も、プロセスの自由度を決める場合があります。
充填塔の数とほぼ近いケースが多いので、絶対に必要というわけではありません。
能力も反応器の容量に依存します。
真空ポンプなのかスチームエゼクタなのかという違いの方が、運転的には影響がでるので、興味があれば調べても良いでしょう。
特殊設備
特殊設備はいくつかピックアップすると良いでしょう。
化学プラントの場合は粉体設備関係が該当します。
逆に、ポンプ・熱交換器・小型フィルターは大きな差になりません。
特性の生産向けに専用のポンプや熱交換器が必要と言う場合でも、導入のためのコストは高くはないので、プラントの特性というほどの差はでないでしょう。(よほどの場合はあるといえばありますが、そもそもバッチプラントの定義から外れていくと思います。)
大型のフィルターはろ過設備と同じように、プラントの特性になります。
調べなくていいもの
プラントの特性を調べる上で、最初のステップとして調べなくて良いものがあります。
プラントサイズ
プラントサイズの比較は、割と細かな部類になります。
同じような思想で作られたプラントであれば(化学の場合)、反応器の数がプラントサイズに比例します。
プラントサイズを調べるくらいなら、反応器の数と容量を調べるだけで十分という意味ですね。
あえて注意すると言えば、熱交換器や充填塔の有無で、プラント高さが異なる場合があります。
それでも優先度は高くありません。
機械屋だとプラントサイズのような分かりやすい所から手を付ける人も居ますが、あまりお勧めはしません。
配管長さ
配管長さもプラントサイズと同じで、特に重要ではありません。
これも反応器の数に関係があるからです。
設置コストという意味では配管長さを調べても良いですが、プラントの特性という意味では残念ながらあまり登場の機会はないでしょう。
自動化率
自動化率は運転の難易度を大きく変えます。
プラントによって自動化の進捗が変わっているのであれば、考えても良いでしょうが、この時代に大きな差がある会社ってどれくらいあるのでしょうか?(有るなら有るで拡充しきっていて、無いなら無いでほぼ手動というように、均質化されていると勝手に思っています)
参考
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最後に
バッチ系化学プラントの特性を比較するためには、主要な情報を数個集めると良いでしょう。
反応器の数・容量と材質や圧力が最も重要です。
濾過乾燥や充填塔・高圧設備で差が生まれます。
他にポンプや熱交換器を除いた、特殊設備はプラントの特性となるでしょう。
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