プラントの立ち上げや試製造は技術者が集まって本気を出します。
この段階では結果が全て現れます。
試製造の前までは検討時間がいっぱいあり、多少失敗しても後でフォローができるでしょう。
試製造だけはその失敗も含めてすべて対応しないといけません。
ところが課題だらけの試製造をすると、結果が必ずしも満足がいかないかも知れません。
例え計画値を満足していたとしても、不満が残ってしまうと、以降でどういうことになるか紹介します。
生産性が上がらない
試製造で頑張らないと、生産性が上がりません。
例えば収率80%まで試製造の序盤のバッチで達成したとしましょう。
目標値が75%くらいだったら、これでも十分に合格だと言われます。
いったん満足してしまうと、さらに上を目指すタイミングは、意外とありません。
試製造であれば、多くのプロフェッショナルが一堂に会し、即決即断ができます。
このタイミングを逃すと、関係部署に情報を集め合意を得るために多くの時間を掛けます。
さらに、運転時に微調整を行おうとしても、安全にかつ合理的な最適化がしにくくなります。
どうしても安全側に偏らざるを得ません。
試製造という限られたタイミングでは、収率が1%でも上がるための努力を最後まで続けましょう。
成績の良くない製品なら、そのうち他社に負けてしまうかも知れませんよ。
製造のライフサイクル全体に影響が出る話ですね。
原因不明のリスクが残り続ける
試製造で頑張らないと、原因不明のリスクが残り続けます。
「何か知らないけど上手くいった」
こうやって見過ごされる小さな異常が結構あります。
「良く分からないけど傾向監視で」
こんな風に問題を先送りします。
その結果はすぐに出るわけではなく、何年何十年と先になって現れます。
この時になって、試製造で判断した人が残っているわけでなく、なぜそうなったかを検証する術がありません。
良く分からない物を扱う化学工場としては、かなり不気味な話です。
気が付いたら忙しくなっている
試製造で頑張らないと、以降の時間で忙しくなっている場合があります。
- 予定した生産量や成績を確保できずに、会社から問われ報告を求められる
- 原因を解析するために多くの労力を使う
- 不具合のある設備や使用方法で、かえって忙しくなる
試製造自体は相当しんどい作業です。
早く解放されたいと思う人もいます。
この結果は、後々の生産活動に大きく響いてきます。
一瞬しんどいか一生しんどいか。
試製造をしているタイミングでは見えずらいですが、以降の生産活動では露骨に見えてきます。
気が付いたら忙しくなっているうちはまだ良いのですが、その後は気が付いたらとても暇という状態になるでしょう。
見捨てられるということです。
技術者としての実力が付かない
試製造で本気を出さないと、技術者としての実力は尽きません。
どれだけ机上で検討しても、現場ではイメージ通りに物事が進むわけではありません。
そこで問題の本質を見抜き即決即断する能力は、技術者にとって非常に重要。
繰り返し真剣に考える機会として試製造は貴重です。
製造プロセスを真剣に考えるということは製造だけにとって大事というわけではなく、製造部以外の他の業務にも応用ができるでしょう。
製造を経験していると工場内ではどの部署でも対応できる、といわれるくらいですからね。
試製造を経験する機会は一生で数回程度でしょう。10回も経験すればベテラン。
少ない機械だと意識して、真剣に取り組みましょう。
参考
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最後に
試製造を本気で頑張らないと、生産性が上がらず・原因不明のリスクが残り・気が付いたら忙しくなっています。
それ以上に、技術者としての実力が付きません。
会社人生の中で10回も経験するわけではないので、しっかり取り組みましょう。
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