プラントの建設後や大改造後の立ち上げは、試製造という位置づけで多くのメンバーが交代でプラントの運転に立ち会います。
ここで、計器が絶対に正しいと思い込んでいると、相当痛い目をみます。
もちろんそうならないように、水を流した運転の時に校正をします。
この校正を持って、計器が正しいと思ってしまいがちなので、注意しましょう。
液面計は現地でチェック
液面計は、タンクに実液を入れる前に水を入れて校正をします。
信頼のおける流量計や重量計などを使いながら、タンクに水を張っていきます。
流量計の値と液面計の値をグラフにしていき、ズレが無いかを測定レンジ全体で確認します。
これで液面計は問題ないはず。
そう思って運転していると、いくつか落とし穴にはまります。
- 実液の密度が予想値と違っていて、液面計が正しい値を示さない
- 油だけを測りたいはずなのに、液面計近くに水が残っていて真値を示さない
- 粉やガスによって、電波が届かずに測定できない
- 温度や圧力による体積膨張で誤差が出る
- 撹拌による液盛り上がりで正しい値を示さない
液面計の値が正しいかどうかは、疑いながら運転を開始します。
最初は特に現地をしっかり確認しましょう。」
ガラス式液面計や覗き窓があれば、図面を見ながら現地の液面がどれくらいの液量を示しているか確認し、液面計の指示値とのずれを調べます。
液面計が無い場合でも、タンク表面を触ったり叩いたりすれば、ある程度の推測ができます。
液面計が水の時に問題なかったから実運転でも問題ないと思わずに、他の観測できる対象と比較検証をしましょう。
そのうえで初めて信頼性が生まれ、定常運転につなげることができます。
流量計は液面計とセットでチェック
流量計は信頼性が高いように見えますが、初期運転でしっかり検証しているから成立します。
- 流量計が満液になっておらず、真値を示さない
- 実液の密度が予想値と違っていて、流量計が正しい値を示さない
- 振動が大きくて真値を示さない
- 気が付いたら腐食していて真値を示さない
- 予想よりも流量が大きい・小さいために、信頼性が出ない
流量計が正しい値を示しているかどうかは、液面計を必ずチェックしましょう。
液面計の方が信頼性が低いのですが、液面計を見ずに流量計の値だけを信じてしまうと、実は流量計の値が間違っていたという可能性に気が付きません。
流量計でも、初期は使い方が安定していないので、真値を示していないかも知れません。
配管や計器の周りを触ったり音を聞いたりして明らかに流れていることが分かる場合は、ゼロを指示しないはず。それなのに、ゼロを指示することもあります。
音を聞いて流速が速いか遅いか判定して、平均流速×口径から流量の値を推定して、流量計の指示値の妥当性を検証しても良いでしょう。
観測可能な情報をフル活用して、信頼性を上げましょう。
温度計は設備を実際に触ってみる
温度計は、ズレにくい計器ですが、だからといって信頼してはいけません。
配線の接触不良・配線間違いなど起こりえます。
温度計が付いている付近に液体が来たら、常温でない限りは指示値が変わるはずです。
その変化だけを見て温度計が正しいと思い込まない方が良いでしょう。
微妙にずれたりします。
- 蒸留で物性の分かっている沸点と同じ値を温度計が示さない
- 前工程・後工程の温度計の値と明らかな差がある
- 供給されるユーティリティの温度と指示値が明らかに違う
運転に使用する各種流体の温度はデータとして持っているはずですが、肝心の計器が正しい値を示さない場合があります。
予め取得している各種データと比較しましょう。
温度計の値だけを信じずに、配管を直接触ってみることも有効になることが多いです。(火傷や凍傷にならない温度帯であることが前提です)
加熱や冷却の操作であればU値の測定をすることで、違和感に気が付く場合もあります。
繰り返しますが、観測可能な情報を集めて信頼性を確認しましょう。
圧力計は現地式を必ずつける
圧力計は伝送器だけなら異常を示す可能性がゼロではありません。
温度計と同じ程度に信頼性が若干損なわれます。
より確実にするためにも、現地式の圧力計をセットで付けましょう。
2個の圧力計の値がほぼ一致していれば、信頼度はグッと上がります。
どちらかが壊れているという場合が多いですが・・・。
とくに現地式の圧力計は消耗品的な扱いですので、過信しないようにしましょう。
圧力計が全くついていないと運転は急に不安になるので、信頼性が無くても必ずつけて確認しましょう。
- ポンプの揚程・流量と液体の比重から圧力計の値が正しいかチェックする
- 減圧ラインは沸点や圧力損失を加味する
- 圧力計を軽く叩いて、針が振れる確認する
参考
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最後に
プラント立ち上げ時は計器を信じすぎると罠にはまります。
水運転で確認出来ていても、実運転で何かしら問題になります。
壊れにくく測定対象が分かりやすい主要計器ですら、観測できるあらゆる情報と整合性を取りましょう。
設備を現地で確認することも必要となってきます。
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