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化学機械

ジャケット形式の設備を化学プラントでよく使う理由

ジャケットを使う理由 化学機械
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ジャケット形式(jacket)について解説します。

化学プラントで働いていると、ジャケットという単語を多く耳にします。

何となく意味は理解できて、今までそれで問題ない構造だから気を配ることが少ないかもしれません。

当たり前のように使っているものこそ、しっかりと基本を押さえるようしたいです。

特に保全エンジニアは知っておいた方が良いでしょう。

ジャケット(jacket)の構造

まずは、ジャケットと呼ばれる構造を考えてみましょう。

タンク

タンク周りのジャケットというと以下のような構造をしています。

プロセス対象

タンク(この場合は撹拌槽)の周りを金属板で覆う形です。

ジャケットの日本語が外套と呼ばれることからも、外に羽織るものというイメージで理解しやすいでしょう。

ジャケットの典型例は胴部・下鏡部だけを覆ったものですが、選択肢はいくつかあります。

セミフルジャケット

フルジャケットはタンク全体を覆いますが、コストは上がります。ジャケットのその逆です。

フルジャケットにするかセミジャケットにするかは使い方に依存します。

バッチプラントならセミジャケット方式が圧倒的です。

配管

配管でも装置と同じようにジャケット方式があります。

二重管と呼んでいる場合もあるでしょう。

二重管

タンクと同じようにフルジャケットとセミジャケットがあります。

フルジャケットは配管末端までジャケットで覆われています。その代わりに配管フランジサイズは大きくなります。

セミジャケットは配管末端がジャケットに覆われていないです。これを良しとするかどうかは使い方に依存します。

ジャケット(jacket)の使い方

ジャケットの使い方はいくつかのパターンがあります。

温度調整

ジャケットの典型的な使い方は温度調整です。

ジャケット内側の本体内部にあるプロセス液の温度を一定に保とうという狙いです。

プロセス液を温める場合はスチームや温水を、冷やす場合にはブラインや冷水を通します。

積極的な温度調整をしないけども、外気による温度変化を避けるために魔法瓶と同じ目的でジャケットに空気を充満させる場合もあります。

ジャケットと設備の接している部分は温度差が高く、化学プロセス液によっては危険な状態になりえます。

外側から温度を調整する仕組みなので、タンクのように内側の径が大きい装置では内部まで熱が伝わりません。

伝熱を促進するために、タンク内部に撹拌機をつけて撹拌を回します。

配管でのジャケット方式の場合は、配管径は一般に小さく流速も高いため、内部で温度ムラが起こりにくいです。

ジャケットを付けることで外気との接触を断つことができるので、温度調整という意味ではより有利です。

タンクでセミジャケットにするのは、フルジャケットにしても上鏡側は気相部になって熱の面であまり気にする必要がないからです。

断熱材を巻いて終わり、とすることが多いです

漏洩防止

ジャケット方式は温度調整が一般的ですが、漏洩防止の役目もあります。

タンクや装置内部に危険なプロセスを扱っていて、溶接部からの漏れを気にする場合にはジャケットを使います。

この目的であれば、フルジャケットにすることが好ましいです。

ジャケット内部には空気や場合によって窒素も検討しましょう。

装置保護

グラスライニングの装置などではジャケットは保護装置の役目を持ちます。

外部の衝撃などに弱いグラスライニング。

ジャケットが盾の役目を果たします。

とはいえ、ジャケットに保護の役目は過度に期待しない方が賢明です。

作業服と同じで、最後の砦という位置づけが良いでしょう。

ジャケット(jacket)の問題

ジャケットはその目的を考えるととても有用ですが、問題点もあります。

腐食

ジャケットの最大の問題は腐食です。

ジャケットを付けることによって本体外面が見えなくなってしまいます。

ここに、スチームや水を流していると、炭素鋼がいつ腐食するか分かりません。

気にすることなく長年使っていると、いつの間にか腐食して使えなくなった。

最近の化学プラントでは増加している問題です。

定期的なメンテナンスや交換を考えないといけませんね。

コスト

ジャケットを付けるということは当然コストが上がります。

金属量が増えるから当然ですね。

重量・寸法

ジャケットを付けることで重量は当然ながら増えます。

プラントによっては重量オーバーとなることもあります。

ジャケット分だけ径が大きくなります。

狭い日本のプラントでは配管などを通す場所が少なくなって困ることが多いです。

温度調整の選択肢

ジャケットは温度調整が最大の使い道です。

では、温度調整はジャケットでなければできないでしょうか?

化学プラントの場合には、トレース・コイルという方法もあります。

どちらも細い配管を使う点は同じ。

トレースは装置の外側、コイルは装置の内側に対して使うイメージです。

トレースの場合は、流量が少ないので温度調整の効果は低いですが、取り外しが簡単です。

コイルはジャケットよりも内側でプロセスと熱のやり取りができるので熱交換の点で有利です。一方で、腐食の原因になりやすいです。

トレースよりは流量が欲しいけど、コイルほどの厳しい環境でないから、ジャケットを使うという選択になります。

参考

関連記事

ジャケットについてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

化学装置でジャケットを付ける理由について解説しました。

装置内部の温度調整がメインの使い方ですが、プロセス液の外部への漏洩防止の役目も持っています。

フルジャケットとセミジャケットの2つがあります。

タンク・撹拌槽のほかにも配管に対しても使います。

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