消防法の危険物一般取扱所について解説します。
多くの化学プラントは危険物製造所でしょうが、危険物一般取扱所という扱いの工場も存在するでしょう。
かくいう私も、「あ、このプラント一般取扱所だったっけ・・・?」と自社のことでも調べないと分からないです。
それくらい、違いがほとんど無いように見えます。
どこが違うのかをはっきりさせる意味で、一般取扱所の要件を製造所と比較しながら解説します
一般取扱所は製造所と基本的に同じ
さっそく結論ですが、一般取扱所は製造所と同じ感覚でOKです。
位置・構造・設備は製造所の基準を採用しています。
この文言がほぼ全てです。
法規的には危険物の規制に関する政令の第十九条に記載されています。
第十九条 第九条第一項の規定は、一般取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準について準用する。
昭和三十四年政令第三百六号 危険物の規制に関する政令
第九条第一項は製造所の要件ですね。
一般取扱所と充填
さて、一般取扱所と製造所を分ける上で最もカギとなるのは「充填」だと思います。
これは昔の話ですが、
- 一般取扱所は充填が可能
- 製造所は充填が不可能
という違いがありました。
今では製造所で充填が可能となっている地域も多く、意識することは少なくなったかもしれませんね。
この話を少し掘り下げます。
製造所・取扱所・貯蔵所
工場は一般に、原料が入口で製品が出口という1つの機能と考えることができます。
危険物の製造所等というと、製造所・取扱所・貯蔵所という3つの区分があります。
これは上記の工場・製品・原料と一応の1:1関係を考えることが可能です。
- 貯蔵所で原料タンクで原料を貯めておき
- 製造所である工場で最低限の量を生産活動で使用し
- 取扱所で危険物である製品を充填する
というイメージです。
貯蔵所・製造所・取扱所は危険物の取扱量・性情・環境などが違うために分かれています。
- 貯蔵所では多くの危険物を貯め込むため、火災爆発時に大きな被害が発生し
- 製造所では温度圧力変化が化学反応による物性の変化など、危険性が時々刻々変化し
- 取扱所では大気開放して取り扱ったり、固定設備以外の設備を使って環境が変わり
それぞれ固有の危険性があるために、区分分けしていると考えます。
製造所で充填
ところで、危険物製造所では危険物の充填が可能となっています。
下の図のように、貯蔵所と製造所で完結するという構図。
これだと取扱所は不要となります。
さて、では危険物の充填が製造所でできなかった時はどうしていたでしょうか?
少し考えてみましょう。
製造所では、危険物の原料を使って非危険物の製品を作ることが想定され、危険物の製品や排出は想定していませんでした。
仮に危険物の排出や重点を行う場合は、一般取扱所に送り出すというイメージです。
こんな感じで、危険物については一般取扱所で排出や充填を行うという設計でした。
製造所と一般取扱所は保有空地以上の距離を離さないといけないので、一定量の配管が必要となります。
この無駄はできるだけなくしたいですよね。
とはいえ、製造所で充填というとドラム充填にほぼ限定されると思います。
製造所内にローリー等を入れようと思ったら、可燃物を持ち込むことになりますからね・・・。
ローリーなどに多量の液を充填するときは、貯蔵所から払い出すので貯蔵所→一般取扱所というルートをたどります。
以上をまとめます。
- 一般取扱所では、多量の危険物をローリーに払い出す
- 製造所では、少量の危険物をドラム缶に払い出す
危険物の排出は意外と少ない?
さて、昔の製造プロセスを見ていると、危険物の排出充填は意外と少ないのでは?という可能性を考えます。
単一のプラントで製品が完結する場合は、当然ながら危険物の排出はあるでしょう。
ところが、複数のプラントにまたがって生産する場合、中間体を製造するプラントでは排出する危険物を別の製造所にそのまま送って処理するという例があったように思います。
そうすると、中間体のプラント目線で見ると、外部に排出するのは非危険物だけ。
だからこそ製造所として機能したのかもしれませんね。
この辺は経験したプラント数が多くはないので、勝手な妄想レベルの話です。
参考
関連記事
危険物製造所についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
消防法の危険物一般取扱所を製造所との比較という意味で解説しました。
製造所と位置・構造・設備等は基本的に同じです。
危険物の充填ができるかどうかが違いでしたが、今ではその違いはありません。
製造所では少量の危険物を、一般取扱所では多量の危険物を充填するという使い分けをする感覚でしょう。
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