樹脂配管を排水ラインに設置すると、結構な確率で失敗します。
世間一般に使われる樹脂配管ですが、化学プラントで使うとトラブルになりやすいです。
使いどころをしっかり理解していないといけないので、化学プラントでは使わないと言い切るくらいでちょうど良いかもしれません。
化学プラントに馴染んでいない初心者の方や初めて担当する会社は、ちょっと戸惑う部分でしょう。
排水に油が混じっているから
排水ラインに樹脂配管を使ってはいけない最大の理由は、排水に油が混じっているからです。
化学プラントでは多数の有機溶媒を扱います。
これらの製造施設に対して、水で洗浄したとしてもその中には必ず油が混じります。
典型的な例はシールポット。
水でシールをする構造で、常時水を供給排水する設備です。
そこそこ純粋な水が排出されるだろうと思う人も居るかもしれませんが、実際にはプロセス由来の油で相当汚染されます。
排水中に溶ける有機溶媒の量は非常に少ないので、水に溶けずに有機溶媒のまま排水される可能性もあるでしょう。
樹脂配管は有機溶媒に弱いので、使っていくうちにすぐに変形していきます。
中身は違うのに見た目は排水だから、とP&IDに「排水」と書いてしまいがち。
これが不幸の始まり。
P&IDのすべてのラインに材質指定するわけでなく、メーカーで選定をお任せしていたら樹脂配管が選定されていて、気が付かないうちに配管図が仕上がって、現場施工される。
こういうパターンは起こりえます。
排水に対して世間一般に樹脂配管を使っているがゆえに、それが当たり前だと思う人とそうではない人の差が発生します。
しっかり材質指定をしない側の問題と言えばそれまで。
割れやすいから
樹脂配管は割れやすいです。
これは、化学プラントでは致命的。
漏れた水が地中に流れてしまうと、環境問題となります。
生活排水とはその扱いが大きく違います。
排水と言えども漏れてはいけないので、漏れるリスクがある樹脂配管を使うことはほぼ厳禁ですね。
化学プラントでは一般家庭よりも腐食しやすい環境にあり、日光を浴びる場所は特に使用を避けた方が良いでしょう。
室内でも漏れのリスクが少ない場所に限定しましょう。
漏れやすい
樹脂配管は漏れが起きやすいです。
ある程度漏れても良いという理由で、水などのラインに排水を選びます。
上水や工業用水の方が、腐食性という点では樹脂配管向きですが、漏れると広範囲に影響が出てくるので、やっぱりやめた方が良いでしょう。
樹脂配管を使う理由がとにかく少ないのが、化学プラントでしょう。
溶接がいらないため選ばれがち
樹脂配管を選びたくないユーザーに対して、施工側は樹脂配管を選びたくなります。
現場での溶接がいらないからですね。
排水処理施設などを請け負う会社では、溶接を理由に樹脂配管で選定する場合があります。
イニシャルコストは安くなるので選んでしまうかも知れませんが、後が大変になるでしょう。
漏れのリスクが許容できる場所ならそれでもいいのですが、そんな場所は非常に少ないです。
漏れを放置していたら、社外に気づかれなくても社内から指摘が出てくるので、リスクの少ない場所自体がほぼ存在しないと考える方が良いでしょう。
燃えやすい材質は限定
化学プラントのような危険物製造所では、燃えやすい物を極力置かないことが原則です。
危険物に対して金属配管を使うのも、鉄筋コンクリート製の建物を使うのも、この理由から来ています。
危険物を扱わない純粋な水ラインなら、樹脂配管を使っても良いという意見もありますが、私は否定的です。
周囲で火災があった時に、樹脂配管自体が燃えてしまい燃え広がるからです。
水であれば火を消すことは可能だからOKという意見もありますが、周囲で禁水性物質が巻き散らかっている状態で、水が漏れるとさらに悲惨なことになります。
プラントの特性によって変わる部分がありますが、樹脂配管か金属配管かを悩んで危ない橋を渡ってまで得られるメリットは大きくはないでしょう。
こういうラインを排水に設定しがち
P&IDに排水と書いてしまうけども、実際には油が混じっていそうなラインをピックアップしました。
- 建屋の排水
- シールポット排水
- メカニカルシール排水
- 手洗い場の排水
排水溝はステンレスやコンクリートで作っていても、排水管は樹脂配管とならないように気を付けましょう。
手洗い場の排水程度なら漏れても交換できますが、有機溶媒を含む水が地面に拡散するということ自体が良くありません。
参考
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最後に
樹脂配管を排水ライン向けに使用すると失敗しがちです。
化学プラントの排水中には油が混じっていて、結構簡単に腐食・変形します。
割れやすいし、漏れも起きやすいとなると使用するメリットがあまりありません。
単純な水ラインでも、漏れの影響が大きいので、化学プラントで樹脂配管を使う場所はほぼ無いでしょう。
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