配管サポート(Piping support)について、支持間隔の計算例を紹介します。
配管を撓みなく適切に固定するためには、サポートで支持することが不可欠です。
でもどれくらいのサポートを作ればいいのか、意外と適当に施工されることもあります。
手で触って簡単に揺れればサポートで固定という発想でも構いませんが、アタリを付ける意味でも支持間隔を知っておくことは助けになるでしょう。
配管設計的にはハンドブックなどにある表を使う形になるでしょうが、計算例を紹介したいと思います。
深く知りたい人向けですね。
計算モデル
使用する計算モデルは以下の通りです。
- 50A
- SGP
- 内径52.9mm
- 常温
配管をサポートで支持する状況を想定しているので、機械力学の梁の両端支持の等分布荷重の式を使います。
使用する計算式は以下の2つです。
曲げ応力
$$σ=\frac{M}{Z}=\frac{wl^2}{8Z}$$
たわみ
$$δ=\frac{5wl^4}{384EI}$$
この式は天から降ってきたものとして、ここでは取り扱います。
計算上は断面二次モーメントIや断面係数Zの導出がカギとなります。
パラメータ
パラメータを1つずつ整理していきましょう。
縦弾性係数E
常温のSGP配管なので2×1011N/m2(200GPa)を使います。
この数字も天から降ってきた数値です。
温度によって多少振れがありますが、誤差範囲なので計算を簡単にするために丸めています。
重量w
重量wは単位長さ当たりの配管重量です。
50AのSGP配管は内径52.9mm、厚み3.8mmですので、地道に計算しましょう。
まずは断面積の計算をします。
π*(52.9/1000)*(3.8/1000)+π/4*(3.8/1000)2=(631+45)*10-6=677*10-6m2
鉄の比重が7850kg/m3なので、重量wは
677*10-6×7850=5.31kg/m
となります。
断面二次モーメントI
断面二次モーメントは中空円形断面の式を使います。
π/32*{(60.5/1000)4-(52.9/1000)4}=2.73×10-7m4(27.3cm4)
ここで50AのSGP外径は、52.9+3.8*2=60.5という数値を使っています。
計算間違いや単位間違いをしたくないので、m単位で合わせるということを私は好んでいます。
断面係数Z
断面係数Zは、断面二次モーメントIを外半径で割ったものになります。
2.73×10-7/(60.5/2/1000)=9.03×10-6m3(9.03cm3)
曲げ応力σ
曲げ応力σの計算をしましょう。
先にl=1mの時の曲げ応力を最初に計算します。σ0としておきましょう。
l=1なので、曲げ応力σ0は
5.31/8/9.03×10-6×9.8=0.72×106Pa(0.72MPa)
となります。重力加速度9.8m/s2を掛けている点に注意ですね。
一般には曲げ応力が10MPaを越えないように支持間隔を決めます。
lを変化させればいいですが、σ0の計算結果にl2を掛ければいいだけです。
ということで、
0.72×l2 < 10
という計算をすることになります。
l < √(10/0.72) = 3.72m
という計算結果から、曲げ応力の視点からは支持間隔は3.72m以下が要求されます。
たわみδ
たわみも同じように計算しましょう。
l=1としたときのたわみをδ0とすると、
(5*5.31)/(384*2×1011*2.73×10-7)=26.55/20.9664=1.26×10-6m(1.23×10-3mm)
たわみは2~3mmに抑えることが求められます。
2 < 1.23×10-3*l4 < 3
という計算をします。
2/1.23×103 < l4 < 3/1.23×103 → 1.63×103 < l4 < 2.44×103 → 6.35 < l < 7.03
という結果になり、たわみの視点からは支持間隔は6.35m以下が要求される考えましょう。
まとめ
計算結果をまとめましょう。
- 曲げ応力 3.72m以下
- たわみ 6.35m以下
曲げ応力による制約の方が厳しく、50Aの場合3m~4m程度の間隔で支持するという思想になるでしょう。
これと同じ計算をすれば、異なる口径でも求められます。
計算自体は複雑ではありませんが、単位変換などミスが起こりかねませんね。
参考
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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
配管サポートの設計のために、支持間隔の計算例を紹介しました。
機械力学の梁の両端支持・等分布荷重の計算です。
ハンドブックなどを使えばすぐに結果が得られますが、計算式を理解できれば応用が広がると思います。
たまには手を動かして計算したいですね。
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