ガス吸収は化学プラントの運転を左右する重要な要素です。
化学工学でガス吸収という単語を知っても、それがプラントの運転に直結するとは予想しにくいでしょう。
プラントのいたるところで発生するガスがとても危険なものだから、ということが簡単な答えです。
これを少しかみ砕いて解説しましょう。
ガスはプラントのいろいろなところで発生
化学プラントではいろいろな場所でガスが発生します。
典型的なフローを見てみましょう。
これらのユニットが複数配置されているバッチプラントでは、ガスの発生がそれこそプラント全体で発生する可能性があります。
液体を移送したら、移送先で気化したり移送先のタンクに入っているガスが放出されます。
反応をしたらガスが発生する場合があります。化学プラントでガスが発生すると言えば、このイメージです。
蒸留は液体を沸騰させてガスにするという意味で、反応と同じようにガスが出ます。
充填やサンプリングは液体の移送と同じく液体が気化するので、ガスが発生する場所ですね。
これらは化学プラントを動かすうえで、回避することができません。
だからこそ、化学機械には漏れが許されなかったり、できるだけ小さくしようとしたりすることが求められます。
ガスは人に有害
化学プラントで発生するガスは、基本的に人に有害です。
少し吸っただけで人命にかかわるモノから、長時間かけてゆっくり影響するモノまでさまざま。
プロセスや設備をどれだけ作り上げても、完全にガス発生を抑えることはできないので、危険性を理解して作業する必要があります。
取り扱う薬品の危険性もさまざま。
これくらいだったら安全だから何の対策もしなくて良いだろう。
こういう甘えが許される場所は、ほとんどありません。
ガスが発生する可能性がある場合に、人が取れる対策は保護具を付けるということくらいです。
それでも限界はあります。
オペレータなら作業内容を熟知していて、ガスが外部に放出される作業を今から行うために保護具を付けようと準備ができます。
そのプラント以外の人、特に近隣地域の住民は知らされていなければ対策が取れません。
特に一呼吸でも吸うと危ないものは要注意。
人を守るためにも、ガスが大気中に拡散されないように、ガス吸収が大きな役目を果たします。
ガスは環境に有害
化学プラントで発生するガスは環境に有害な場合があります。
植物や海など生活に密接にかかわる部分に影響を与えます。
化学プラントの近くに住んでいる人にとっては、特に重大な問題ですね。
近隣に人が住んでいないから、環境について考えなくていい、というわけではありません。
大型コンビナート地域ではこの辺の感覚が少し鈍い感じがします。
ガスが処分できないとプラントを即停止
化学プラントでガスが発生して、ガス吸収設備などが機能しない場合、プラントは即停止が基本です。
ガス吸収設備が壊れたり、停電などで動かなかったりした場合ですね。
だからこそ、ガス吸収設備は頑丈であることが求められ、非常用発電機など停電の対策も必要です。
もしくは2系列化しておきましょう。
設備が壊れたときには、運転を即停止できるようにインターロックを組んで、再開方法も手順化したり自動化したりしましょう。
人に頼ってしまうと失敗する確率が高く、その失敗の影響が大きいですからね。
ガス吸収設備はこの点で、非常に重要です。
燃やす前に吸収
発生したガスは吸収するのが王道です。
間違っても大気に拡散されて希釈されることを、期待しないようにしましょう。
ガスを拡散させないために、ガスを集めます。ブロアーなどの出番。
集めたガスはいったん水などの液体に吸収させます。
これは、ガスだと体積が多くて処理に困るから、
液体に吸収させて、コンパクトな状態で処理をします。
液体として外部に放出する場合もあれば、燃やしてしまう場合もあります。
発生したガスをそのまま燃やしてしまう場合もありますが、一般には少ないケースだと思います。
燃やすための設備を化学プラントから離した場所に置かないといけないので、コストが掛かります。
参考
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最後に
ガス吸収設備は、化学プラントで非常に大事です。
プラントのあちこちでガスが発生し、人に有害な確率が高いだけでなく、環境にも影響があります。
ガスが発生して大気中に拡散した場合には、プラントを即停止できるような仕組みも大事です。
ガス吸収設備はコスト的にもメリットがあり、プラントに直結させて持っておきましょう。
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