化学プロセスではフィルターをかなり使用します。
異物を取り除き製品品質を保証するため、設備故障を防ぐため。
設備構造としては単純ですが、運転の重要度は高いです。
金額も安い物が多いですが、購入する機械系エンジニアならではの悩みごとをまとめました。
解決方法はほとんどなく、運転側の製造とのコミュニケーションによる妥協が中心になります。
フィルタの統一性がない
フィルタを購入する時、運転する側はこの要求を持ちます。
今使っているフィルタと互換性があること
プラント建設でもない限り、運転中プラントではフィルタは何かしら使われています。
製造プラントではいつフィルタが壊れたり詰まったりしても良いように、予備フィルタを抱えます。
そこに新たなフィルタを設置したり、既存フィルタの更新をしたりしても、中身はそのまま使いたいですよね。
もし今使っているフィルタが使えなくなるなら、予備フィルタも捨てないといけません。
そうしたくないから、製造側から互換性を求められます。
ところが、フィルタメーカーはこの思想を持っていません。
日本で統一的な仕様はあまりなく、新規購入時に互換性を要求しても自社の製品だけをプッシュする営業がとても多いです。(当然採用できません)
カートリッジタイプなら、長さ・材質・濾過精度・端面形状くらいを指定したらかなりの互換性を出せますが、微妙な差があって使えなかったりします。
購入時に仕様書をどれだけ拡充しても、メーカーの見積書にはほとんど情報がなく、細かな打ち合わせを要求されて、時間ロスが多いのがフィルターという機種の宿命です。
この辺の統一化は個人的には強く求めていますが、業界で何とかしようという動きは全くありません。
フィルターの開発が常にされていて、新しい物が世に出ているという好意的な捉え方はできるものの、不満も残ります。
カートリッジタイプだけでなくバッグタイプでもこの問題を抱えます。
ハウジングの統一性がない
フィルターの統一性と同じく、ハウジングの統一性もありません。
自社のフィルターにマッチしたハウジングを作ろうとして、他社のフィルターには合わない(不満が残る)というケースは多々あります。
本数・フィルターサイズ以外にも、ハウジングサイズ・取合寸法・フィルター交換方法・ベントやドレンが設計対象になります。
タンクや熱交換器などの製缶品なら一品設計が可能ですが、ハウジングは融通がほとんど効きません。
その社で一般的なハウジング以外のオプションに耐えれない会社が、とても多いです。
ハウジングが壊れて交換しようとしても、周りの配管も改造しないといけないのは、結構もったいないですが、そうせざるを得ない状態になります。
一応、配管側に余裕を持たせておけば解決できなくはないですが、作業に関わる場所なので配管余裕はあまり取れないことが普通です。
メーカーの統一性がない
フィルタ・ハウジングはメーカーの入れ替わりがとても激しいです。
20年以上ずっと続いている会社の方が珍しいくらい。
そういうフィルターメーカーは、ユーザーの要望に合わせようとせず、自社の仕様にユーザー側を合わせようとします。
プラント設計や保全に左右する要素を、メーカーの都合だけで何の通知もなく一方的に変更されるので、エンジニアとしては採用したくなくなります。
長いこと続いていないフィルターメーカーは、フィルターの開発とハウジング製作会社の確保に追われ、安定して同じ仕様で物を作ることが難しくなります。
この状況が続けば続くほど互換性を確保できなくなり、コストアップの方向になります。
納期がバラバラ
フィルターメーカーの納期はバラバラです。
フィルター・ハウジングの統一性がなく、メーカーもバラバラだから、納期もバラバラになって当然かも知れません。
昔は3カ月くらいで購入できたものが、12カ月という延長するパターンが出ています。
納期の掛かる会社でも標準品なら3カ月で間に合う(ただし互換性はない)という状態で、何を優先し何を捨てるかを選ばないといけなくなります。
簡単な構造だから3カ月で十分対応できるだろう、と甘えずに余裕を持った購入計画を立てましょう。
変化が少ない化学プラントの設備の中で、ある意味最も流動的な設備と言えます。
参考
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最後に
化学プラントで購入するフィルター・ハウジングの悩みを紹介します。
フィルター・ハウジングの統一性がなく、メーカーもバラバラだから、納期もバラバラです。
変化が少ない化学プラントの設備の中で、ある意味最も流動的な設備と言えます。
互換性が大事ですが、かなりの妥協を迫られています。
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